第55話 試験
「いやそれ、絶対あの若君の仕業でしょ」
昨夜の温泉の事をレイラに話すと何で気づかないんだ、と言うような目線を向けてくる。
「あぁん?だって、流石に男湯に堂々と入る女とか、予想つかねぇって」
「…まぁ、それもそうね」
やっぱり北欧でもアンベリーバボーか。
いや、江戸時代もといエロ時代ならあったかもしれんが。
「ふぅん。それで、いつまでアンタ寝転がってるのよ。さっさと着替えなさい」
レイラが欠月を遠慮なく蹴った。
「ってぇ!」
欠月が脇腹を押さえながら立ち上がる。
「別に良いだろ…。まだ時間あるし……」
昨夜若様とやらから言い渡された時間まで、多少空きがある。欠月基準的にはまだだらけていても大丈夫な時間だ。
「……無いわよ。後一時間位で約束の時間でしょう」
呆れと侮蔑の入り交じった表情で欠月を見下す。
「はいはい、着替えますよっと」
欠月はそそくさと着替えなどが用意されている部屋のすみまで行き、着替えを手に取った。
「じゃ、私ステラ達と朝風呂入ってくるから、貴方は戻るまでに着替え時なさい」
「へいへい」
そう空返事をして、レイラが出ていったのを確認した欠月は、
「ったく、アイツは俺の姉か何か?」
そう毒づいた。
◆◆◆
「朝風呂なげーよ」
先に約束の部屋に行き、若様、その他護衛の侍とともに待っていてクソ気まずい思いをした欠月がレイラ達が入室するなり文句を言う。
「すみません…温泉が思ったより気持ち良くて」
申し訳無さそうにステラが謝罪する。
「申し訳無い……久しぶりの故郷の風呂だったもので、つい長湯してしまった」
葉月が頭を下げた。
風呂に入った後だからだろうか、謝罪する二人の姿は妙に色っぽい。
「はぁ、そんくらいでケチケチすんじゃないわよ。まだ遅れた訳でも無いのに。女の支度も待てない男はモテないわよ」
レイラの言葉通り、別に彼女らが特段遅れた訳ではなく、むしろ欠月達が早すぎたのだ。
「も、モテるつもり無いし、別に良いんだよ。ってか、人集まったんだしさっさと話始めようぜぇ?若様よォ?」
目線をレイラから外しつつ、若へと話を振る。
「えぇ、分かりました。これから私達が貴方に課す試験、その内容を説明しましょう」
そう、神妙な顔をして、説明を始めた。
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