第54話 混浴?いえ男湯です。えぇ?あぁダメですお客様っ!そんな事っ!
「いやぁ、っぱ日本と言えば温泉でしょ」
日本と言うか、日本モチーフの国、だが、そんな事はどうでも良い。
「あぁ~ーー…。体温まるーー」
そんな事を言いながら顎スレスレまで体を湯に浸ける。
「露天風呂とか最高かよぉ~」
ぼーっと上を見ながら欠月が言うと、
「そう。是非我が国の文化を堪能して」
いつの間にか同じ湯に入っていた影が声をかけてきた。
「……あぁー悪い、混浴だったか。確認してなかったわ」
気が付かなかったとは言え、彼女がいるのに遠慮せずに今の台詞を吐いていたと思うと恥ずかしさが込み上げてくる。
「全然。男湯だし」
……こいつはナニを言っているんだ??
男湯?男湯って言ったよな?
「いや何でお前そんな平然とした顔してんのよ」
「東には、真っ裸の付き合い、と言う言葉がある」
微妙に変えてるところが小賢しい。
じゃなくて!
え?何?どういう神経してんのこいつ。
「異国の人間だぞ。いきなりお前らの文化押し付けられても困る」
取り敢えず出てけよ。男湯だぞ、男湯。
「…貴方から異国感ないから良いかなって」
ちゃう!確かに厳密には精神はジャパニーズだけど!だからって男女一緒に風呂入るぶっ壊れ倫理観の時代に生きた人間じゃないの!
「良かねぇよ。……はぁ。もういいや」
アレだ、徹頭徹尾自分基準で生きてるから何言われても平然としてるタイプだ。人工じゃなくて天然物のKYってやつ。まぁ、そう言うタイプは自分が一番だと思ってるタイプもいるが、影はそう言うタイプじゃないだろう。
「ねぇ……私、忍者なの。意味、解る?」
「ん?あぁ、アレだよな。乱破とか素破ってやつ」
「詳しいね」
「昔、めちゃくちゃ昔に調べた事があってな。
……まぁ、期待外れだったが」
「そう。ドンマイ……いや、そう言う事じゃなくて」
「じゃあ、どういう事だよ」
「私、くノ一だよ?色仕掛けとか、考えない?普通」
一瞬、何を言ってるのか解らなかったが。
「……あぁー。そう言う事。無理だろ、その体じゃ」
「……心外。これでも百戦錬磨」
「いい?色仕掛けってもっとボンキュッボンな女がやるもんよ?お前みたいな
あの日和見な公式がみすみす純潔厨を敵に回すような設定作るはずがない。
「じゃあ……私じゃ、発情しない」
「発情って……しねぇよ」
「ふーん。じゃあ、葉月とかわ?」
「ブフッ。何言ってんのお前?するわけねぇだろ。してたら大問題だろ」
「え?……もしかして不能」
「じゃねぇよ!!……ただ、今は性欲が無いってだけだ。……体も温まったし、そろそろ出るわ」
そう言いながら頭の上に乗せていたタオルで股間を隠しながら脱衣所へと歩いていった。
「うーん。不思議」
今まであまり出会った事の無いタイプの人種だ、と影は思い、次の瞬間には影の姿は無かった。
◆◆◆
「それで、彼の人柄はどうだった?」
若、と呼ばれた男が目の前で膝を着く影に問いかけた。
「ん~と、変な人?でも、悪い人では無い……と思う」
「……そうか」
(影に変人扱いされるとは……どんな変態なんだ)
若様の警戒心アップ!
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