第19話 沙汰を待つ者。紡ぐ者。傍観的デウスエクスマキナ。

「さぁて!海にくり出しますよぉ!」

メイベルがそう海へ向けて叫ぶ。

「そう…ねっ」

スルーズは先刻購入した武器達を先程購入した小船に積む。

「うおっ…と。メイベル、早く乗って。沈むわ」

少し焦ったようにメイベルを急かす。

「あ、はいはい。わかりました」

少し急ぎつつ、メイベルは武器達を挟んでスルーズの反対側に座る。

「天気ヨシ!武器ヨシ!弁当ヨシ!出発です!」

メイベルが元気良く号令をした。


◆◆◆


「凄く……大きいです」

メイベルが巨大な門の前に立ち感嘆の言葉をこぼした。

「えぇ、かなり立派で精巧な作りね……観光名所にでもなるんじゃ無いかしら」

スルーズが場違いな感想を漏らし、辺りを見渡す。

謎の神の力により、海水には明らかに不自然な力場が発生しており、それが門を囲むように海水を塞き止めている。

そして、何より不気味なのは、巨大な門の回りに力の抜けた神像が大量に転がっていることだ。

「……まるで、神話の墓場ね」

ふと、そんな感想が出てきた。

「はい……いったい誰がこんな事を……いえ、それ以前に、これ程の神像を何処から……」

メイベルが把握している限り、大量に神像が消えるような事は起こっていない。

だとすれば、この事象を起こした犯人は自力で天変地異を起こす程の神の力を所持する事になる。

「……ねぇ、メイベル」

「えぇ、私も、おそらく同じような事を言おうと思っていました」

これを起こした犯人は────

「「例の二人組、怪しくない(ですか)?」」

少なくとも、少女達は自身を除き、「神の力」を行使できる存在を邪神と聖神以外で知らない。

となれば、神器を売る程持っている可能性のある例の二人組の怪しさがさらに増すと言うものだ。

そして、状況証拠的に、その二人組はこの門の先にいるだろう。

「メイベル、私は行くけど、貴女は?」

「勿論、行きますよ」

「そ。じゃあ、行きますか」

メイベルとスルーズは、二人同時に門を潜る。

瞬間、少女達の身体は異界へと移される。

少女達は知らない。

その先に待つ彼との会合を。

そして、狂ってしまった世界の行方を。

最早、世界は沙汰を待つのみだ。


◆◆◆


────……運命は、うねりと化して世界を飲むだろう。

しかし、彼は赦さない。

自らの世界人生の主役を、運命舞台装置に明け渡すことを。

そしてそれは、彼だけではない。

仮想の黒は混沌として、世界はそれに抗うだろう。

運命よ、出来るものならば彼を傀儡としてみせるがいい。

「まぁ、無理だろうけどね!」

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