新章開幕 第50話 聖女が視た夢

「よぉ。どうした?辛気臭い顔して」

欠月が刀を抱いて震えている少女の隣に立ち、侮るように、あるいは嘲るように、そして少し呆れたような笑みを浮かべる。

「貴方は……やっと目が覚めたんですか……。どうしたって……全部、貴方のせいですよ。本当なら、私一人の命で、どうにかなったのに」

何処か幼さを残す少女は、悲しみに湿った声で、あるいは絶望したような声音で目の前の八つ首の神を見た。

「……なぁ、一つアドバイスしておくぜ?」

「何ですか、今更。もうどうにもなりませんよ」

曇った灰色の瞳でなんの面白味もない現実を淡々と受け入れるような、そんな少女に己の過去を重ねたのか、欠月は一つ助言をする。いや、助言なんて大層なモノではない。もしかしたらそれは、余計な悩みの種となるかもいれない荒療治だ。

「この世界の主役は知らねぇが、お前が言った運命とやらにを放り投げるなよ」

アドバイスなんて上等なモノじゃないな。そう内心で思う。

(ダメで元々。俺は言いたいことを言っただけだしな)

そんな事を思いつつ、欠月は目の前の敵へと視線を移す。

「あれが」

ふと、そんな言葉が出た。

ゲームでは、その片鱗すら見えなかった存在。

邪神の眷属ではなく、各地に点在する所謂、土着神。

いや、そんな事はどうでも良いか。

重要なのは、あれが俺にとって未知であること。

「お前は…」

「俺」の物語の登場人物にあり得るか?

「精々、楽しませてくれよ?」

その為に、ここまで準備したんだ。

「さぁ────反撃の時間だ」

は、その手に持つ刀を構えて───


◆◆◆


「貴方、は──」

夢を視た。

その夢は、今までの夢とは、何かが違った。

邪神の復活、人の世の滅びを示すモノでは無く、あれは、神に抗う、人の姿。

それは、希望。

今まで視てきたどうしようもない絶望ではなく、自らに希望を持たせるような夢だった。

もし、これが未来視の夢ではなく、本当にただの夢であったなら、この世界の運命は趣味が悪いと言わざる終えない。

「欠、月……」

それは、神に、己に、世界に抗う少年の名。

「いつか、貴方と私の運命が交わった時……その時は───……」

……───貴方は、私を救ってくれますか?


それは、幼き日の聖女が視た、儚い夢。




はい、初夢()です。

これがやりたいが為に急いでましたw

蕎麦うめぇ。

新年明けましておめでとうございます。

本年度も変わらず、拙作をよろしくお願いします。

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