第78話 厄ネタ

かつて、とある世界があった。

その世界は、初めて出来た世界だった。

故に、世界システムそのものが決定的問題を抱えていた。

世界基盤イデア

もしくは、基盤型世界。

旧世界その世界を指す言葉だ。

端的に、その世界は全ての情報の処理や演算、諸々を含めた世界の全てを、唯一ただひとつつの存在、つまり、世界基盤イデアへと丸投げした。

唯一ただひとつつの存在に丸投げし故の、世界イデア自体の劣化。

やがて、世界イデアは世界に牙を向く。

そうして初めて、超越者世界の創世者はその異常に気が付いた。

そして、己の従者を真似、その世界にあるモノを仕込んだ。

十六人の権能者第一種特異点

理を越えし者。

極一点においてのみ、理を越え、おのが意を優先させることの出来る者達。

世界の終始を記録する世界基盤イデアを越えるための唯一ゆいつの手段。

そして、世界イデア権能者との戦いが幕を開け─────……



結果、世界イデアは負けた。

おそらく、当事者彼らにとっての地獄は、ここからだ。

世界基盤イデアが敗北をした結果既存の情報は全てが消失。

それは、彼ら権能者でさえも例外には当てはまらず、等しく消えた。

筈だった。

彼ら権能者は、十六の権能全てを一人の権能者に、消えていった。

そして、その権能者は、全ての情報が消え、再構成された世界で生き続けた。

その魂全てが権能に置き換えられた影響か、その記憶を失う事はなく、転生を繰り返し、やがて七十億年が経った頃、世界イデアは再び彼の敵となった。

その代の権能者と共に、かつて仲間から託された世界を守るため、彼は戦った。

そして、勝つ、勝つ、勝つ。

やがて数えきれぬ程の世界イデアを殺し、それ以上の数、権能者仲間を見捨てた。

彼が世界に牙を向く世界を殺す機構システムと成り果てた時、超越者が世界から興味を失った。

崩壊は一瞬だった。

あれ程繰り返した世界が、これ程簡単に消えるとは。

当然の帰結である。

超越者は興味を失い、無限の資源リソースは断たれた。

ならば、どうして世界ひとつをやり直す事が出来ようか。

その世界崩壊の際でその機構システムが何を思ったかは分からない。

憤怒か、憎悪か、或いは安堵か。

─────けれど、嗚呼けれど、彼が何を思ったにせよ、何の感慨も感じなかったにせよ、結末は変わらず、過去仲間呪縛祝福が、彼を死なせてはくれなかった。

幾度に渡る世界イデアとの戦いを経て、その十六の権能は、彼の躯と完全に融合していた。

更に、彼自身の魂の位階も、上がっていた。

結果として、彼は世界が崩壊した後も存在し続けた。

そして、長い長い「有限の泡」での旅の末、彼は新たな世界へと辿り着く。

種子型世界ユグドラシル

最新の世界にして、無限に近い、けれど限り無く有限の可能性が広がる世界へと降り立ったのだ。


◆◆◆


「って言うのが私の知ってる「旧き者」についての情報よ」

レイラは一通りを語り終え、因みに、貴方はどう思うの?と聞いてきた。

「まぁ、その旧き者とやらで間違い無いだろうな」

説明テキストパイセンも言ってるし。

こうなってくると、旧き者の異物、と言うのは、旧き者が持ち込んだ物、と言う意味か?

いや、そうなると叢雲は、世界ではない空間不安定な空間をその実体を保ったまま別の世界に辿り着くまでの時間持ちこたえる程の耐久力を持っていることになるが、それは無いだろう。

有限の泡と呼ばれる世界を包む不安定な空間は、その外にある無限世界に有限世界が取り込まれないようにある防護膜のようなモノだ。

その中に五体満足で存在し続ける為には、少なくとも世界一つ分の自己画一性存在証明力が必要だ。

故に、叢雲は旧世界で作られ、此方に持ち込まれた訳では無く、此方に着いた旧き者とやらが此方で作った物。

それが叢雲、なのだろう。

この世界とは異なる者に作られた「異」物。

そうなると

「なぁ、一つ聞きたいんだが、その旧き者とやらは、世界を思うように移動出来るのか?」

出来ないのであれば、この世界にまだ留まっている事になる。死んでるかも知れんが。

まぁ、俺の予想があっていれば、恐らく移動出来ないが。

「無理ね」

いわゆる、インフレってあるだろ?

最初にいたキャラが後々出てくる概念に付いていけず、置いてかれるアレだ。

世界を司る者イデアを殺す程の強者である旧き者の弱点、それは、最も始めに創られた世界出身故に、「他に世界がある」と言う前提すら存在しない為、世界移動を可能としてない点だ。

「なら」

「えぇ」

「「恐らく、まだ旧き者はこの世界にいる」」

降って湧いた厄ネタは、味方か、はたまた敵対者傍観者か。

どちらにせよ、

「まぁた、考えることが増えた……」

欠月はそう言って頭を抱えた。









有限の泡

外界無限世界から有限世界を護るための「泡」のようなもの。

存在出来る最小単位が「世界」を想定し創られている為、世界未満の存在規模スケール存在ものは存在出来ない。


有限世界

言葉通り、有限の世界。

その形態に捕らわれず、いつかは終わる世界。

具体例は種子型世界や基盤型世界。



Q 最小単位「世界」って何?


A それ一つで完結しているモノ。

個人、村、或いは国、或いは星、或いは宇宙。

それ一つで完全に完結していて、他者と関わる必要の無い集団個人

観測者によって世界の定義は異なる。


Q この世界の北欧神話とかの終末エンディングってどういう扱い?


A 彼らの神話は彼らが種子型世界に存在していた時までの事です。

他の神話にも共通して言える事ですが、殆どの神々は物理法則やその他超常存在神々の存在を否定する法則が世界に形成される前に世界の外に逃げました。だから、マジで滅んだ奴らもいますが、殆どの神は外に逃げてギリシャよろしく小規模基盤型世界を作り、まだ神を法則として利用しているこの世界みたいな世界を見つけてはちょっかいを出しています。

つまり神話の最後は誰かが勝手に補完した訳です。





因みに、旧き者の居場所は明言されてはいませんが、作中には出てます。

有りますね、一つだけ明らかにおかしい所。

例えばそう、それは終焉の外理が展開した世界のような、理を剥ぎ取る場所。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る