第77話 空の器
「ねぇ、聞きたいことがあるんだけど」
昼食の後、片付けをして晦日への検診を終え、貸された客室で
「?何」
紙を隠しながら後ろを向く。
あまり心当たりはない。
「あの剣何?」
「えっと、あの剣ってのは叢雲の事か?」
「そうよ。何あれ神器?」
神器?
えーと、
空刀 叢雲
葉月朔夜の専用武器。
魔力保持量と魔力維持力が高く、葉月朔夜の使うスキル魔法剣との相性が良い(装備中スキル継続時間アップ)。
また、固有スキル『月纒』使用時には月の魔力が刀身を満たし、一時的に本来の能力を発揮する。
旧き者の異物。
失敗作にして放棄された剣。
完成された大器であり、
書き方的に、
叢雲って聞くと、天叢雲剣が出てくるが、説明的にはおそらく別物。今のところは、だが。
「天」叢雲。詰まるところの「天」が無いってことだ。
この「天」が何を指すのか。
神だったとすればレイラが怪訝そうにしているのにも得心がいく。
そして、神器、つまり、神の器。
神の無い器。
「あぁ、なんだ。吸い込まれでもしたか?」
「……一瞬ね」
神器とは、つまり神の
そう言う意味では、レイラの体と同じである。
一瞬引っ張られた、と言うのはつまり、器としての性能は、叢雲が上なのだ。
レイラが意識していなければ吸われる、とは、その証左に他ならない。
「俺も知らん」
ゲームだと、
紙ゲーとは言われているが、東の国や葉月関連は輪を掛けてペラペラだ。
その癖重要そうな要素はあるのだから始末に終えない。
「胡散臭」
そんな侮蔑の目を向けるなよ。
「マジで知らねぇんだって。俺が知ってるのはあの刀が葉月と相性が良い事とあの刀の在処だけ。
レイラは、少し考える様子を見せて、
「旧き者」
そう短く答える。
「なんだそりゃ?」
「情報はタダじゃやれないわねぇ?」
非常に愉しそうに笑うレイラ。
「何が望みだ?」
「そうね、情報よ。貴方が異世界人だったと仮定して、その異世界で、貴方はどうやって私を知ったの?」
おっと?思ったよりキラーパス来た?
「何で急にそんな事気になってんのか知らねぇが、ゲームだよ。ゲームで知った。物語と言っても良いかもな」
「なるほど。……つまり、この世界はゲームって訳ね」
察し良すぎだろこいつ。
もう怖いんだけど。
「……
いや、確かに自重とかゲーム機能とか知識とか誤魔化しとかせずに来たけど……まぁ気づくか。
「それで、俺は教えた。次は俺からの質問だ。旧き者って何だ?」
「なるほど。……つまり、この世界はゲームって訳ね」
の「……」には、ゲーム?何言ってんだこいつ?仮にゲームだとして、どんな、何のゲーム?こいつのいた異世界がいわゆる「現代」のような科学や工業技術が発展した世界なら、北欧神話を元にしたゲーム?
いや、私は北欧の
……だとしたら、この世界そのもの?
色々と合点はいくわ。
みたいな思考が繰り広げられてた。
そもそも欠月君が隠す気無いし、バレるならバレるで別にいいやってスタンスだから、いつバレてもおかしく無いんですがね。
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