第12話 泣きっ面にスタン

うおっ。気持ちわるっ。

あの、なんと言うか、歯とか内臓が少し浮き上がる感じと言うか、そう、ジェットコースターとか、船の…名前なんて言ったか…あのグワングワンする振り子運動のアトラクション……バイ……バイ……そう!バイキングだ!あれの浮遊感に似てる。

あんま転移は多用したくないな。

てか、扉デカっ。

20メートル位はあるか?

ゲーム中も思ったが、無駄にデカイな。

まぁ、んな事はどうでも良い。

本来ならこの扉の模様から謎解きしてから剣を掲げながら呪文を唱えないといけないのだが、今回は面倒な謎解き丸々パス出来る。ので、後は俺の精神の方が問題だ。

そう、例の不治の病の再発的な意味で。

「……何をしているのですか?」

先程宝箱から拾った異神の剣を扉の前で掲げて、息を吸う。悪いな葉月、今対応出来るほど、これからの醜態を思うと俺には精神的余裕はない。

「……一柱は今別たれた。

眷属たる五色ごしきの龍は深く囚われ、御身もまたとこの底。

二界の行方は我が身も共に。

故に開け試しの門。

今一度世界をあるべき姿へと戻すため、我は向かわん、彼の深淵へ」

あー長っ。よく噛まずに言えたな、俺。

えらい、えらいよ!俺!よくこんな恥ずかしい文書をそれっぽい雰囲気を出しながら噛まずに言えた!しかも暗記で!

と、下らない自画自賛自己防衛をしていると、

ガタンッ

と、大きな音がして、門が開く。

「?????」

なお、葉月は困惑の極みである。

「よしっ!開いたな。行くぞ葉月」

「…えっ?あっはい。待ってください」

暫く呆けていた葉月だったが、直ぐに小走りで欠月のところまで行き、絶句した。

「あれと、今から闘うのですか?」

「そうだな」

先程の扉には及ばずとも、十メートルはあるであろう黒い肌の巨躯の鬼。

オーガロードと呼ばれる種のモンスターだ。

「お、特殊個体か、ラッキー」

「なっ特殊個体ですか!?」

ダンジョンにて、極小確率で生まれる強化個体の一種だ。

尤も、このダンジョンではそれなりの確率でスポーンするし、欠月は忘れているが、初見はすべてのボスが特殊個体になるという仕様が、このダンジョンのみある。

「まぁ、やることは変わらないし、そんな気負う必要もないよ」

「?私は何も伝えられてませんよ?」

「つまり、俺一人でかたがつくってことよ」

そう言いながら玉座に鎮座ましましているオーガロードに向けて欠月はとある魔法を放った。

「散雷」

幾つか別れた雷の一つが当たり、オーガロードの体全体に雷のエフェクトが出る。

そう、麻痺である。

「よし、あと宜しく」

そう言って葉月に雷足を付与した。

「え?はい」

多少困惑しながらも、オーガロードへと疾駆し、軽軽とその首を刈った。

まず、一周目、である。

欠月はそそくさと玉座の後ろから宝箱を回収し、扉の前まで戻る。

剣をかざして扉を閉め、数秒と経たない内に剣をかざして扉を開ける。

散雷。

首スパ。

宝箱回収。

再び扉の前に閉めてから開ける。

散雷。

首ス(略

さて、周回中俺は散雷打ってるだけで暇だし、せっかくだからこのチート臭い散雷とか言う魔法について解説しよう。

この魔法は雷魔法の中でも数少ないデバフだ。

そして、ほぼ確定スタンとか言うぶっ壊れ性能である。

まぁ、しかし確定スタンは強すぎる。

なので、ゲーム開始一週間でパッチが入った。

レベル差1につき2%スタン確率が落ちるのだ。

ちなみに、30%以下にはならない。

まぁつまり、ポケ〇ンでもしこの技があったら対戦はクソゲー待ったなしになる。

で、だ。

肝心の俺と十層ボスのレベル差であるが、現状八程だ。スタン確率84%。

原神イン〇クトで言う凍結パ並みに敵からしたらクソゲーである。

まぁ、そんな感じで取り敢えず五十周した。

扉の前には宝箱が山ほど積んである。

覚醒の宝珠のドロップ率は2.23%程。

運が良ければ一つは来る。

そんな感じで、宝箱の開封を始める。

「さぁ、おいで覚醒の宝珠ちゃん!」

……………………

………………

……

やっぱ確率ってクソだわ。

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