第30話 此処から先は通行止めだ!

「逃げましょう。アレは無理です」

青ざめた顔でステラが言った。

しかしまぁ、それが簡単に出来るならそもそも苦労していない。

「全面的に同意します……が、逃げ道がありません。雷鳴も止む気配は無いですし、最低あと数分位は時間を稼がないと……」

唯一の逃げ道と言える後ろで欠月とレイラがドンパチっている以上、逃げ道は無い。

無論、前方のアレラ死の軍勢を一点突破し、上に逃げると言うのは不可能だ。

「彼等に救援を…」

彼女レイラの事は知りませんが、黒の天外アレをおいてまで欠月殿を優先した人ですよ……戦場が混沌とするだけな気が…」

むしろ今より惨事になる可能性がある。何より……

「何より、負烙アレは先程の二人のやり取りを見ています。そして今は明確に知性がある。どちらかと協力して……なんて事になったら最悪ですよ」

そして、協力するならばそれは欠月に対して明確に害意を持ったレイラとだろう。

仮に、レイラと負烙が欠月を殺したとして、その後レイラが負烙を殺せるのかがわからない。

そして何より、自分は欠月を死なせたくない。

「申し訳ありません。私の我が儘に少し、付き合ってもらいます」

直近に表れたアンデッドを大剣で吹き飛ばし、ステラをその場に降ろす。

「貴女は私の命を掛けて守りましょう。ですから、少しの間ここで時間稼ぎに付き合って貰えませんか?」

これは賭けだ。

もし断わられれば、自分一人でここに留まり時間稼ぎをするしか無い。

そうなれば、死はほぼ確実だろう。

何分……いや、何十秒止められるかわかったものではない。

しかし、聖女彼女がいるなら話しは別だ。

先程の魔法……聖域と言ったか……を持続して賭け続けてくれるだけでも、生存率は倍増する。

「…貴女に何の理由があって彼に義理立てするのかは分かりませんが……分かりました。その我が儘、聞きましょう。絶対に生きて帰りますよ。貴女も、私も。そして彼等も」

ステラは葉月の手を取って、自身が現状出来うる限りのバフを掛ける。

「それとついでに、世界の境界ワールド・エンド

それは、世界の最果てを意味する最高峰の結界だ。

最も、数時間単位で時間のかかる詠唱は省略されており、フル詠唱時とは比べ物にならない耐久性ではあるが、それでも個人が張る結界としては最高クラスであることに間違いはない。

「有り難う御座います。───此の世を彷徨う亡霊よ、此処より先に道は無いと知れ!!」

(必ず、ここは守ります。ですから、勝って下さいよ、欠月殿)

葉月はその身体に見合わぬ大剣を、さらに巨大化させ死者達の軍勢を凪払う。

「クカカッ!アラガウカ。ソレモ良カロウ。精々アガケヨ。定命ジョウミョウノ者達!」

死者と生者は交わらぬ。

故に矛は交わった。





負烙VS聖女&侍

ファイッ!


負烙「こんな決死の覚悟してる間罵倒合戦した後一服してる奴らいるってマジ?」

欠月&レイラ「ちょっと何言ってるか分かんない」

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