第31話 質量と手札は多い方が良い。ただしジョーカーにひっくり返される事もある

「ハァァァァ!!!」

葉月が声を轟かせ、一歩前に踏み出した。

しかし

テ」

その短い一言により、弓や魔法杖を持ったアンデッド達が一斉に射撃を開始する。

「っ!小癪な!」

葉月は踏み留まり、魔法や矢を巨大化した大剣で迎え撃つ。

「クカカカ。哀レ。実ニ無力ムリョクナリ」

負烙が嘲りの顔を見せ、更なる追撃を配下に命ずる。

「つっ。成る程確かに手強い……ですが、この程度っ!」

カタカタと骨と骨がぶつかる音を立てながら近寄ってくる剣と盾を持ったアンデッドを横一閃に退ける。

「危ないっ!」

後ろから声がして、真横に殺気を感じる。

「危っ」

体勢を左に反らし、下からの突き上げるような刺突を回避した。

潜伏者シャドウストーカーっ!?」

ステラが驚いたようにその敵対者の名前を叫ぶ。

「チッ!」

即座に片手手首を回転させて海豹で潜伏者シャドウストーカーを狙う。

しかし、弓矢をつがえた弓兵が視界の端を掠めた。

「厄介なっっ」

身体を無理矢理回転させて片手の大剣を振り切った。

幾つかが防ぎきれず自らに施された結界に当たる。

潜伏者シャドウストーカーは……隠れましたか」

(後の弓兵や魔法使いも厄介ですが……)

シャドウストーカーアレが一番良くない。

臨戦状態の葉月でさえ、直近になり声をかけられるまでは気づけなかった。

出来れば彼処で仕留めて起きたかった。

この失点はいただけない。

いや、相手はアレさえ量産出来る可能性がある。それに、最初に叩き潰した者達よりも、新しく出てきたアンデッドの方が格段に力が上がっている。

このままではまずい。

出来るだけ早く大元を潰さ無ければ、状況は直ぐにでも最悪になる。

「不味い……ですね」

ふと、隣から声がした。

「!…えぇ、そうですね…。恐らく、耐久戦時間稼ぎでは持ちそうにない。少し、戦い方を変えましょう……一気に負烙大元を叩きます」

「賛成です。大砲には私がなりましょう。……お恥ずかしながら固定砲台なので……」

「エスコートはお任せを」

作戦は実に単純明快。

突っ込んで潰す。

大元さえ消えれば他のアンデッドは消えるだろうと言う算段だ。

と、言うか、そうでなければ困る。

「───聖なる女神、第三の使徒が汝に告げる」

その詠唱は、作戦の始まりを同時に告げた。

「我、代行者なり」

葉月が体勢を極限まで低くし、そのまま進路上に大剣を投げる。

空いた片手でステラの両足を抱えた。

「フッ」

葉月が身体をバネのようにして一気に加速する。

「我、観察者なり」

(舌噛みそうです……)

「我、執行者なり」

マワシイゼンナルカミ使徒シトメ……何処ドコ世界セカイデモ我等ワレラトハ相容アイイレヌカ」

負烙は不快そうに顔を歪めて、杖で二度床を叩いた。

ガギィン

と言う金属音がなり、葉月の投げた大剣が地面より出現した西洋風の全身鎧を来た騎士に止められる。

「チィッ」

葉月が思わず舌打ちを鳴らすが、この程度は葉月もステラも予想したいた。踏み出される足と紡がれる言葉に迷いは無い。

「此よりわれが下すはの裁定。われが紡ぐは神の言の葉」

聖女の祝詞は止まること無く紡がれる。

「今こそ天秤女神の裁定を───」

盾に刺さった大剣の柄を、葉月が踏み、そして飛翔する。

矢と魔法が矢継ぎ早に放たれた。

「させんっ!!!」

流麗さをかなぐり捨てた実戦剣術がその全てを叩き落とす。

「ナニ!?」

先程よりも遥かに質、量共に上の攻撃を全て落とされた事に負烙は驚愕を浮かべた。

それが、致命的な隙となる。

「ハァッッ!!」

葉月は詠唱が終わりかけのステラを───投げ飛ばした。

「────下すッッッ!!!」

ステラの背後に巨大な天秤が現れ、そして天秤は傾いた。

有罪ギルティ

の奔流がステラの右手拳に渦を巻く。

「フ、フザケッ!!」

その言葉は最後まで紡がれる事は無く───。

「ギャァァァァァァァァァ!!!!」

絶叫が響き渡った。

「救済、執行」

ステラの呟きと共に、負烙は光の粒子となって消えた。





ステラ「テメェの罪は私が決める!歯ァ食いしばれェ!!」

欠月「えぇ?(困惑、ドン引きと共にやっぱ聖女ステラと言えばこれだよなと言う表情)」

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