第28話 聖女と侍
「厄介ですねぇ、あの骸骨」
銀髪に
あまり戦闘に関わることの無い自分でも分かる程の殺気。
拳を交えずとも、アレが警戒すべき
「つかぬことをお聞きしますが、戦闘はどれ程?」
東洋の服を着こなし、明らかに背丈に合わぬ大剣と、業物であろう刀を携えた黒目黒髪の美しい女性が尋ねて来る。
「普段は回りの者が行ってくれているので、あまり経験はありません……」
「そうですか……では、私が前衛として戦いましょう。説明するまでもないと思いますが、私はこの大剣と刀と蛇腹剣を使った中近距離戦闘が得意です。最も、蛇腹剣はあまり使いなれていませんが…」
「私は……支援系の魔法……いえ」
このような状況になってまで、自らの身分を隠しだてするのはいかがなものか。
それに、それは自ら命を掛けようとしている目の前の彼女に対してあまりにも失礼だ。
「神聖魔法を主体に支援系の魔法を修めています」
「貴女は…!」
驚いた顔で少女が一瞬此方を見るが、それも一瞬。戦場に立つ者の顔となり、目の前の敵を見た。その表情は此方からは伺えない。
「そうですか…支援、お願いしますッ!」
「はいっ」
昇華を目の前の彼女と自分自身に発動し、彼女に
「─────ッッ!」
カタカタと不快な音を立てて命の輝きを受けた死神が絶叫する。
「ハァッ!」
死神が隙をさらしたその一瞬、葉月は駆け抜け、目にも止まらぬ速さで死神に迫った。
(近付ける!!)
メイベルもといステラにより付与された聖域により、接近と同時に死亡、等と言う間抜けな結末にならなかったことに心の片隅で安堵する。
「フッ」
ここ最近で最も振りなれた大剣を一閃、死神の身体はなんの抵抗もなくそれを受け入れた───
(いや違う!)
すり抜けた。
葉月が呆けたその時間、死神は鎌を振り上げる。
「─────」
ケタケタと嘲笑するように、死神は鎌を降ろした。
バキィン
聖域にヒビが入り、死神の鎌は弾かれた。
「っ!」
葉月は蛇腹剣を腰から抜くと同時に後退の動作を開始し、振り上げると共に大きく後ろへと跳躍した。
致死の毒を持つ蛇腹剣は、骸骨の身体にヌルリと入り、しかし何の痕跡も残せぬまま通り過ぎた。
「成る程……」
葉月の少し後ろにいるステラがポツリと言葉を洩らした。
「少し良くない…ですね…」
葉月もその言葉の真意に頷きながら、目の前の存在を見る。
ダメージの痕跡は見られない。
根本的に効いていないのだ。
戦況はかなり悪い。
攻撃手段は殆ど無く、あちらの攻撃は恐らく即死。
(欠月殿…早く…)
手遅れに、なる前に。
嫌な予感が葉月の脳裏を掠めて、
けれど雷鳴は鳴り止まない。
9話の初登場以来やっと容姿の説明が入ったステラさん……
黒の天外「
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