第27話 生える生首

「───ふぅ」

辺り一帯が吹き飛ばされ、元の廊下の様相は既に成していない。

そんな中で、人外の美は一息つく。

「まぁ、ちょっと休んでから行きましょうか」

メイベル達の方向を見て、そんな事を言った。

「……」

欠月がいた場所を見て、何かを憂うような表情を浮かべる。

「ギリシャ……いったい、何故?」

恐らく、その疑問はしばらく解決しないだろう。

それを問うべき者はたった今灰塵となった。

「…いいえ、どちらにせよ、私のやることは変わらない」

一時の休息を終え、この世界に来た目的を思い出して、メイベル達を救出し、あの冒涜的な者を滅殺する為に歩を進める。

その時だった。

ズボッ

足下からそんな音がした。

「え?」

足を、何かに掴まれた。

一時いっとき、彼女の身体は硬直した。

そして、その一瞬が致命的に良くなかった。

「キャぁッ」

可愛らしい悲鳴を上げながら、彼女は地の底へと引き込まれた。


◆◆◆


数秒経って、男はしゃがみながら人の悪そうな笑みを浮かべる。

「へぇ~いレイラチャンへぇ~い」

そんな事を言いながら、身体が地面にぶっ刺さり、頭のみ地上に顔を見せているレイラの頬をペチペチと叩く。

「……ギリシャの使徒、貴方、何処に隠れていたのよっ…」

悔しそうに顔を歪めて、欠月を睨むレイラ。

「ち、ちゅ、う!地中ですがァ!?何かァ!?君のお陰で死にかけちゃったよォ???」

ハイテンション……と言うか、何処かおかしなテンションで煽る煽る。

「あ、て言うか、俺、ギリシャの使徒とやらじゃねぇよ?」

急に真顔に戻り、真面目な雰囲気を出す欠月。

「はぁ?じゃア貴方何なのよ?」

「え?俺ェ?あぁ…言葉にすると…あれだな……あ、いやまてその前に」

「何よ」

「これ以上俺に敵対するな」

「嫌」

清々しいまでの即答に、少し傷ついたような顔の欠月。

「いいか、少なくとも俺はお前の敵じゃ無い。それは今お前が死んで無い事自体証拠になるだろう。後、三秒ってとこか?それまでにイエスの返事が無い場合…悪いが殺すしかない」

欠月の真の狙いはこれだ。灼火の神鎚を使った後の少しの時間、彼女のあらゆる耐性や能力は極度に低下する。その状態でなければ、恐らく彼女は交渉に応じてくれないだろう。

「3」

カウントダウンをする。

「2」

未だレイラは押し黙ったままだ。

「い──」

「分かったわよ。受け入れるわ。さっきの」

むすっとした表情で、了承の言葉を口にした。

『「北欧のいかずち」レイラが貴方のパーティーに仮加入しました』

おっ!

通知来たコレ。

何か俺のゲーム画面更新されたのか?

ま、便利だし何でもいいや。

「よし!じゃあ俺が何者かって話だが…」

「ちょっと待ちなさいよ」

「んァ?」

「何で……何の警戒も無く私の言葉を信じられるのよ」

レイラは心底分からないと言った表情だった。

「え?お前を信頼してるからだよ」

「ハァ?」

更に分からない……いや、疑惑と警戒の色が強くなる。

「はい、この話おしまい。それじゃあ俺が何者かって話だが…転生者って奴だな」

「……話は終わって……まぁ、いいけど…それより、転生者……それ、意味分かってるの?」

まだ色濃く残っている疑惑と警戒も相まってか、レイラの表情は更に険しいものとなった。

「いや、意味も何も、そのまんまだ。で、俺は前世でお前の名前を知ったってワケ」

「……お話にならないわね」

「アァ?」

「いい?まず、転生ってのはそんな簡単なことじゃ無いのよ。それに、この世界に私の名を記す物なんてありはしないしね」

……アァン?何言ってんだこいつ。

なんでこの世界に限定してる?まるでそれが当然だと言わんばかりに……。

もしかして、レイラの中での転生の概念が、同一世界内での転生のみで、異世界転生の概念がそもそも無いのか?

「いや、俺同一世界内転生じゃ無くて異世界転生組だけど」

「アホ抜かさないで」

「まじまじ。証拠見せようか?」

「……そこまで言うなら、その妄言、良いわ信じて上げる」

おうこれ絶対信じてねぇな。

まぁいっか。正直そこんとこくっそどうでもいいし。

信じてようが信じてまいが、敵対されなくなっただけマシだ。

「んじゃあアイツら助けに行きますかね」

「……分かったから、いい加減ここから出しなさいよ」

「あ、ごめん忘れてた」




捕捉、正確には、灼火の神鎚と雷神を同時に使用すると魔力回路的なのがショートみたいな感じになってしばらく全体的に弱体化する。

ちなみに欠月は地中って言うある意味の別マップって言うゲーム的な判定で回避した。

灼火の神鎚&雷神はゲーム上のダメージ的には大体のボスワンパンできる火力。HPストップある奴は流石に無理だけど理論上ゲーム最高火力です。

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