第75話 究道道中

剣を振る。

スルリ、と。

いや、違う。

錯覚だ。流された。

(効率的に)

そう彼は言った。

『ただ、いきなりやり方を変えるのは難しい』

それは、柔軟体操の最中、彼から言われた言葉だ。

を見つけるんだ』

今の方法スタイルを捨てずに、非効率的な部分を改善する。

徐々に、徐々に。

そもそも、彼女にとって彼の方法が最適かは分からない。

故に、今ある技術と彼が教える事の出来る効率的汎用剣術、その二つでの妥協点最適解を。

『いつか、お前がお前の為の剣術最適解を見つけるまでの妥協繋ぎ……結局は教育側が出来るのはその程度だ。……ただ、まぁ。無駄になることは無い』

再三言うが、技には技となるだけの理由がある。

何を目的にしたどんな技なのか。

それらを、より伝えやすくするための剣術効率化

『要は、数学の公式と同じ……って言ってわかる?』

葉月にそれは分からなかったが、何を言っていたかはわかった。

その意味を理解することで、より対処は容易になり、技には磨きがかかる。

だが、それも問題があった。

(ここーーっ)

彼女の剣は、確かに以前と比べて磨きがかかっている。

しかし、

ヌルリ、

と。

今度は重心をズラされた。

(っ)

「タイアリ」

そう言って杖を朔夜の首に当てる。

「もう一本お願いします!」

「いいよ」

呆れつつもそう言って、何度目かも分からぬ再生を始めた。


◆◆◆


いや~つくづく外れ値バケモンだな、葉月朔夜。

食らいつく朔夜を見ながらそう思う。

ちなみに、今俺がまともに朔夜の相手を出来ているのはステータスを変えたからだ。

普段は魔力全振り固定でほぼ使う事のないステータス再編機能だが、初めて役にたった。

まぁそれでも、身体能力自体は朔夜と比べるとすげぇ低いので、かなりの部分を技術で補っている。

あ、最初の話に戻るな。

葉月がバケモンと言う話。

そもそも彼女はただの剣術から魔法剣を編み出した異才だ。それがまぁ弱いわけがない。

というか、ちょっと異常なのだ。

だって、剣と言う領域から全く別の魔法と言う領域の業を習得したんだぜ?

普通におかしい。

まぁ確かに、アニメやゲーム、漫画だとインフレの結果、概念レベルまで業が昇華し、魔法と言える結果を出す事はある。

だが、そういうのとは全くの別物。

剣の修練をしていたら、魔法が使えるようになった。

基本科目の勉強してたらワールドクラスのシュートを打てるようになった、みたいなちぐはぐさ。

だからこそ、異才。

天でも鬼でも秀でもなく、異。

よく、天才の事を「頭おかしい」とドン引き称賛するが、本来それは彼女のような者に贈られるべき賛辞だ。

だって、頭おかしいもの。

魔法の教養の無い者が、剣振ってたら魔法習得して更に何か新しい業を産み出した。

うん、控えめに言っても意味分からない。

だが、だからこそ、剣の武器たる目的を最高効率で果たすと言う意味での王道たる天才やつの剣は、きっと彼女には合わない。

もっと、彼女の才に合った彼女の剣を。

もし、ここに在ったのが俺でなく前世やつなら、きっと片手間もかけずに解決していたであろう。

だがまぁ、無い物ねだりをしてもしょうがない。

作るのだ。

彼女の剣を。

と、その時。

確固たる論理の剣閃が、彼の頬を撫でた。

「─────っ」

初めて。

初めてだ。

初めて、この試合で彼女の剣が彼に触れた。

しかも、今のは俺の剣筋理論でも彼女元来の剣筋理論でもない、新たな理論

(まさか───!!)

作ったのか。

自分で、この短時間で。

嘘だろう?

いくら最高の教本を前にしていたとしても、早すぎる。

(いや)

そうか。

根本的な思い違いだ。

そもそも俺が彼女の為に作る必要など、彼女相手に介護プレイする必要など無かった。

見せてやれば、彼女は自然と上がってくる。

(あぁ、そうだ。もっと、もっと上がってこい)

その剣は、きっと神に届くから。




葉月朔夜

三部作想定で作られていた時の二作目の中ボス。

それも度々主人公の前に立ちはだかるタイプ。

行動方針は「妹を助ける」で一作目の朔夜と変わっていない。



あ、二作目とかについてちょっと解説

開発段階では三部作で作られる想定だった。

一作目 大陸 邪神と聖神

二作目 東の国 太陽神と月神

三作目 作中には登場してない場所 龍と人

ってな感じだった。

でも、倒産しかけて二、三作目の要素を無理矢理一作目にぶちこんだのが、前世さんのプレイした「聖なる神と希望の王」。

なのでまぁ、二、三作目の主人公は消されてるし、シナリオも大分変わってる。

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