第41話 初めての約束
「裂け」
一単語。
詠唱とも思わぬような短い言葉。
しかし、それは世界すら切り裂く刃と化した。
「効かん」
対して欠月(?)は、構うことなく突き進む。
そして、その言葉通り、彼の体躯に異変は起きない。
「お前のそれは、自らを世界と定義した時に
馬鹿か。
そんな空気で欠月は言うが、そんなわけがない。
(ありえん……)
「撃て打て射て」
そのいずれも、世界を激震させる衝撃だ。
しかし、
「芸が無いな。お前」
欠月の中の何者かは、がっかりしたような口調でその激震の嵐の中を突き進む。
「……なんでこんなにつまらねぇ
その言葉は、図星をついていた。
黒葬は、有である限り逃れられぬ「終焉」の理を持つ。
故に、大した苦労をせずとも、あらゆる存在は
しかし今、絶対である筈の終焉に抗っている者がいる。
いや、彼には抗っていると言う意識さえないのかも知れない。
ただそれが彼には
「おい、何か喋れよ。無言の時間が一番きつい」
つまらなさそうに、あるいは気まずそうに欠月(?)が口を開く。
「すまんな。貴様の分析をしていたんだよ、特異点」
黒葬がその言葉を言ったとき、初めて欠月(?)の顔に揺らぎが見えた。
「……ふはっ…ハッハッハッハ!……良いねぇ。前世じゃあ、それを見抜ける奴すらいなかったからなァ。餓えを知ると、美味いもんの本当の価値が解るってもんだ」
突如笑いだしたかと思えば、そんな事を呟く。
「…成る程、当たっていたか」
対して黒葬は、あまり嬉しく無さそうに顔を歪めた。
特異点、それは
「……
深く納得すると同時に、目の前の存在に勝ることは不可能だと悟る。
「アァ、一応聞いとくが、ここで退くか?退くなら追いはしない。こっちにも別の目的があるしな…個人的には、戦いたいが」
「いや……ここは退かせて貰おう……少年……いや、欠月…だったか?いずれまた」
少し残念そうな顔をした
「あぁ…別に
その言葉には子供のような無邪気さと狂気が見え隠れする。
そして、その言葉が終わった直後、死の世界は消え去った。
まるで、そこには何も無かったかのように。
少し離れた所で、葉月達が突如敵のアンデッドが消えた事に対して驚いている。
……訂正しよう。レイラだけは意味ありげに此方を見ていた。
「ふぅ……」
(
先程までは、少し前世に寄った性格になっていたように思う。
その影響か、前世の事を少しだけ思い出していた。
ロクな思い出は無い、クソみてぇた世界だった。
技術は此方とは比べ物にならないくらいに発達していたが、人間が心身共に貧弱過ぎた。
基本的に、彼に向けられる矢印は崇拝か憎悪かの二つだった。理解者はそもそもとして、友となれる者すら現れなかった。
「あら、どうしたの?嬉しそうな顔して?」
レイラがいつの間にか隣に立っている。
「……あぁ?そんな顔してたか?」
自身でも意外そうに自分の顔を触り、欠月はやっと自分の顔が笑みを浮かべていることに気付く。
「あぁ…そうか。まぁ、そうだろうな」
そして、それに納得した。
「ふぅん。……支障がなければ、聞いても良い?笑ってた理由」
「ん?良いが、面白いものじゃねぇよ。…ただ、初めて他人とまた遊ぶ約束したってだけだ」
「へぇ…」
レイラが目を細める。
「まぁ、良かった……?わね」
そうレイラが言うと、葉月が走ってよってきた。
「欠月殿ーー!無事でしたか!良かった!」
そんな事を言いながら欠月の少し手前で足を止める。
「おう、葉月も……何か吹っ切れたみたいだな」
一目でそれを見抜いたことに少し驚きつつ、嬉しそうに頷いた。
「はい!そう見えるなら良かった。…あ、所で、欠月殿に紹介したい人がいるんですが」
そう言うと、葉月は後ろを見た。
その視線を辿り、欠月もそちらを見る。
「初めまして、欠月様。
葉月は目を見開き、レイラは「へぇ」と笑う。
対して欠月は、
「俺に用かい?聖女様」
本名を名乗った事を意外そうにしつつ、女神像ぞんざいに扱ったのがバレたかな?と、内心で冷や汗をかいていた。
次回、「予言の聖女」
やっべ。
40話の最後のセリフ間違えてたっピ。
「飽く」→「餓え」
ちなみに、普段の欠月君は、
今世(
それで、かつて前世の欠月君が持ち合わせてた特異点って言う性質が出てる。
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