第10話 攻略にでます、探さないで下さい。
欠月達のダンジョン入場から体感二時間程が経過し、元より戦闘慣れしている葉月は勿論だが、此の世界に来て初めてする血生臭い戦闘に欠月も慣れ始めていた。
「欠月殿!バフを!」
「おう!」
葉月の振るう漆黒の刀身が目の前にいた盾持ち鬼人を易々と切り裂き、ついでとばかりに
これ、俺の
もう五層になるが、先程からモンスターは葉月のステータスの暴力に儚く散っている。
魔法剣を使わずこの強さ……ゲーム時代は一々効果リセットされまくるからほぼ無能に近い三十分のがタイムロスって感じだったが、現実化して常時ステ3倍になったらそれはそれで強すぎる。
だってあるべきデメリットがハワイ旅行してんだもん。
これは……あるかもな、物理型朔夜。
って言うか、片手に大剣、片手に直剣ってのが、俺の
いやでも、あれが両方魔法剣とかになってみろ。きっとクソカッケェぞ。
うーん悩む。
でも、元来の『葉月』の強さを生かしたいってのもあるが、新規のビルドを開拓したいってのも多いにある。
悩ましいぃぃぃ。
「欠月殿!そちらに一匹!」
そんな俺の贅沢な悩みに水を差したのは他でもない葉月本人だった。
あぁ、そうだな。どんなビルド組むにせよ、本人の許可は必須だ。忘れてた。
っと、小鬼忍者が高速で向かってきてるなぁ。
「
バァァァン
うるせぇ。
だが、その魔法は無事忍者を焼き払った。
いやー、流石雷魔法。最低威力の魔法でも火力高けぇなおい。
ちなみに、消費魔力は2000程。最低っつてもそれなりの量持ってかれる。
「流石ですね」
そう言いながら殲滅の終わった葉月が涼しい顔で近寄って来た。
やだこの子、返り血すらついてないよ。
現代(?)の戦闘機とはまさに彼女の事だろう。だって、アメコミ映画の赤い鉄人とか蜘蛛人間がしてそうな軌道を馬鹿みたいな高速でやってたし。
多分、『瞬発』と『筋力』は人権ステータスだ。
いや、リアル異世界だから生存権か!アッハッハッハ。
笑えねぇ。ガチ笑えねぇ。
あんな高速軌道で詰めてくるとか、バグってるだろオイ。
俺の認識出来る遠距離から魔法パスパス打っても敵幹部の近距離系の上澄みなら簡単にはよけて速攻決められるって!
いまから近距離職に浮気することも可能っちゃ可能だが、でもなぁ、そうなると、圧倒的低ステータスがクソ程ネックになってくる。
魔法職もステータスが低いのには変わりないが、それでもいくらかましなのだ。
何故って?
高威力の魔法で速攻仕留めれば行けるから。
けども、さっきの超高速軌道で詰められるのは聞いてないっす。想定外だなぁ。何か対策考えんと、ガチでただの固定砲台(劣化)にしかならん。
「葉月、ちょっと聞きたいんだけどさ」
本職の人に聞くか。
「何でしょう?」
「さっきの雷魔法、お前から見てどう?」
「それは、相対した場合、と言うことですか?」
「うん。その解釈でいいよ」
「そうですね…威力、速度共に申し分なく、三十メートル以上離れていて遮蔽物の無い場所ならば接近は困難でしょうね」
無理とは言わないのか。バケモンだな。
い、いやでも!(弱)どうにかしたら何とかなるさ!きっと(希望的観測)!!
「そうか。分かった。進もう」
「はい。進みましょう」
◆◆◆
さて、八層まで来た。
それなりに順調に進んでいる。
が…一つ気になる事が。
「なぁ、何でお前魔法剣使わないの?」
「……はい?」
食ってた肉を落とし、口をあんぐりと開けて呆ける葉月。
そういや、俺の口から魔法剣って単語が出るの、初めてか。
「な、何故貴方がそれを…?」
かなり動揺している様子だ。
うーん。どうしたものか。
「…ほら前に俺には俺のツテがあるって言ったろ?この世界の強者の情報なら三割くらいは網羅してる自信がある」
「そ、そういうものですか…」
お、これは行けそう。
「で、話戻すが、何であれ使わないの?」
「……あれは、確かに強力ではあります。しかし、あれは……邪法。武を志す者にとって、アレは逃げなのです」
……。
成る程。主人公が会ったときに既に誰とは言わないが、ジャンクフード好きなオルタの某カリバー並みにバカスカ打ってたのは、恐らく極まった環境でもうそんな事気にしてる場合じゃねぇ!ってなったからか?多分そうだな。
だが、このままだとそれなりに高い魔力ステータスをゴミ箱にボッシュートすることになる。
どうにかして説得を……違うか。
彼女が、彼女自身が、妹の為に心を殺し、彼の剣を抜く決意をするのは、良い。それは美しいからだ。
それども、俺に説得されてってのは何か違う。
(まぁ、ほっといてもいつかは使うでしょ)
一先ずそう結論付けて、今日は寝ることにする。ノンストップで来たから、いい加減眠い。
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