第62話 二度目の観測
「ムッ」
とある蕎麦屋で、ぶっかけ蕎麦を食べていた男の手が止まる。
石像のように固まった男は、一息に蕎麦を食べ尽くした。
そして、
「大将、会計」
そう言って、会計を済ませ外へと出た。
(今の気配は、やはりアイツと同じか)
「
まぁ、しかし隠神を連れて来ると、不足の事態に対応出来る人員がいなくなる。
生産職で、戦闘力では自分に三歩は劣るとは言え、紛れもなく彼も戦力の一人だ。
しかし、
「全く、
お陰で、自分は
「
『まぁまぁ、私達は貴方がいてくれて助かりましたよ、朧さん』
彼の耳元で、そんな電子音声がした。
「はぁ…ありがと。ソレンさん。……でも、マジでさぁ……国連から言えないの?そう言う事」
『あはは……。出来たら私達も困らないんですけどね……彼等を……貴方も含めて、今の人類では拘束不可能ですよ…』
彼の故郷はそれなりに発展しており、2022年の人類が抱えている問題の大半を解決してはいるが、それでも彼等一人一人の個人が持つ武力を上回れていない。
「まぁ、そうか」
彼の故郷はあらゆるの供給の七割を隠神ただ一人に頼っているし、核を含めたあらゆる武力は彼等の武力でその全てが型落ちとなった。
そんな彼等を拘束出来よう筈もない。
「とは言え、この世界に俺とか、明らかな采配ミスだぞ。北欧神話ベースの世界からも干渉受けてんだろ?他世界とかこの世界の神とか特異点とか権能者との交渉視野に入れたら間違いなくアイツ自身が行くべき案件だったろ。俺は単純な武力担当だってのに、参るな、全く」
そう言いながら、男は港町の外を目指す。
『そうですね…。観測が安定しているのでこういうサポートも出来ていますが、何が原因でいつ不安定になるか分かりません。最低限、あのお方らにも規則を作るべきなのですが……』
それが出来る存在がいないのだ。仕方ないだろう。
今はこんな事を言っている彼も、普段は好き勝手やる側の人間だ。
そんな話をしていると、扉が開いたような音が男の耳元で聞こえた。
『そう言うなって。瀬良がゴーサイン出したならそうヤバくはならんよ』
楽観したその声の主に、男は内心で顔をしかめた。
「そうは言ってもな隠神、あのボスそんな考えてた感じじゃ無かったぞ」
『第零種クラスは俺らも始めてだ。…と言うか、瀬良以外にいたんだな、第零種って。まぁ、そんな初見の相手に適当な指示は出さねぇって』
「楽観が過ぎる。あのボスと同じだぞ」
『だからお前送ったんだろ。万一戦闘になったとして、お前なら最悪殺せる』
「……戦闘になら無いのが最善、じゃ無かったか。方針」
『そらな。けど、今回は相手が相手だ。最悪を想定して行動してるんだよ。多分』
「……なんで自分が行かないんだよ、あの女マジで次会ったら纏めて有休申請する」
『あぁ、うん。それはそうだわな。俺もそろそろ休み欲しいわ』
「お前休んだら人類終わるんだわ」
そんなジョークで気を紛らわしつつ、その存在が観測された場所へと向かう。
(いったい、何が出るかねェ)
出来れば、友好的であって欲しいものだが。
◆◆◆
「それで、いったい何で呼び出されたのよ、私達」
レイラが道場までの道中、欠月に聞いた。
「あぁ、俺と葉月の爺さんが試合するから、多分その見届け人的な、審判的なアレだな」
その言葉に朔夜は多いに驚いたような顔をした。
「ちょっと待って下さい!死合!?なぜ!?」
「試合ね試合。試す方。漢字違わない大丈夫?」
「あ、あぁ、試合ですか……いや何故?」
「まぁ、大事な孫娘の命預ける訳だから、特段おかしな事でもねぇだろ」
そっちの方が俺も楽しいし。
「はぁ、いや、欠月殿がそれで良いのなら良いんですが」
少し歩き、道場の扉の前。
ピクリ、と言う擬音がつきそうな様子で、葉月がその動きを止めた。
「欠月殿、気を付けて下さいね」
そう言いながら、引き戸を手を掛ける。
「どうやら、お祖父様はかなり本気かようです」
その言葉は緊張を帯びていて、欠月が身を引き締めるには十分なものだった。
俺ガイル2期いっき見してた。
国民の休日って最高だな。
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