第38話 理を解く
「ふん。どうした?随分と奥手だな」
黒葬が嘲笑気味に欠月を煽る。
「うっせー。テメェに合わせてやってんの」
そう言いながら黒葬の手から出た黒い霧状の何かを雷魔法で牽制する。
バチン!と、雷魔法が当たるが……
(とんでもねぇな。ありゃ)
雷が徐々に霧状に霧散する。
それは、ボス部屋の扉が崩れ去った様子に酷似していた。
(終焉……詰まるところ、「死」か)
恐らく、それが最も分かりやすい表現だろう。
(生物だけじゃなく、単純に
少なくとも、終わりのあるモノでの攻撃は、先程の雷のように無力化される…。
(最強の攻撃は最強の防御……なる程、言えて妙だな)
いや、それには収まらないかも知れない。
何故なら奴は魔法である先程の雷を防御するでも相殺するでも無く、殺したのだ。
ヤツが殺すことが出来ないものなど、それこそこの世に存在し無い
攻撃等には収まらない、最早概念、そして理の領域にある。
(外理……その意味、ようやく本当に理解し始めた)
そして理解し始めると同時に黒葬を倒す糸口にも気付く。
(理……前提であり理不尽……ようはギミックボスの要領だ……まぁただ、相手の理に解りやすい欠陥は無い……つまり、
ただ、それには一つ問題がある。
(俺、仮想外理とやらで何出来るかわかんねぇんだよなぁ)
いや、分かると言えば分かる。
間違いなくゲーム仕様にする能力だろう。
だが、それ以上が分からない。
根本的に、どんな原理で動いているのか、どんな能力が組み込まれているのか、そして、それの使い方とか。
(あーいや、待てよ?)
冷静になって考えてみると……金ぶちこんだら魔力とか武器を作れたり転移出来る能力、と言えなくもない…つまり、金を代価にして色々する能力だろうか?
それはちょっと違う気がする……。
ログボとかで聖石貰えるから金入れなくても時間さえ掛ければ全然出来る……。
「動きに精細さが欠けているぞ?」
考え事しすぎたな。
「さーせんね。アンタの攻撃見てたら眠くなったんですよ」
眠くなった、とまではいかないが、黒葬の攻撃速度が遅いのは事実だ。
それこそ、先程の
「そうか、もう少し速くしよう」
黒い霧が纏まった。
「形態変化出来るのそれっ?」
多少の驚愕を浮かべながら鞭のようになったそれを大袈裟に回避する。
「どうした?随分逃げ腰だな」
「余裕ぶっこいて事故るのは馬鹿のやることだよ。俺はやんねぇ」
「ほう、では次の連撃はどうだ?」
「予告ホームランじゃねぇんだよ、馬鹿かよお前────」
わざわざ次の一手を明かすなど、馬鹿だと表面上嘲笑した彼だが、次の瞬間言葉を失う。
それは、黒葬が嘘を吐いたからではない。
むしろ、そうであったなら彼は簡単に対処していただろう。
では、なぜ彼が言葉を失ったのか?
それは、連撃が彼の予想の斜め上をいったからだ。
「うっそー?それ何本もだせるの~?」
黒い鞭のようなものが、百二百と欠月の視界を埋め尽くす。
「当然」
まだあの黒い鞭の性能は分からないが、恐らく黒い霧を濃縮していると言う点を鑑みれば触れたところを即分解とかだろう。
(あぁこれは……)
俺の想定が間違ってた。
こいつ、ギミックボスとかじゃねぇ……。
クソボスだッッッッッ!!!
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