第23話 VS神
「あ?何で私の名前知ってんのよ。名乗っても無いのに」
あ、やっべぇ。今確実にレイラのヘイトがこっちに向いた。
「ねぇ、質問してるんだけど」
その言葉が俺の耳に届くより一瞬速く、レイラが俺の首を掴み、近くの壁に叩き付けた。
「ぐっ」
俺の口から悲鳴が漏れる。
「なっ」
そちらにあまり気を割いていなかったとは言え、何も反応出来ずに欠月を取られた事に驚愕を感じつつ即座に欠月を助けようと行動する葉月だったが、その行動は止められた。他ならぬ欠月自身の言葉によって。
「こっちは大丈夫だ!それよりそこの女とそっちの対処をしてくれ!いいか!何としても生き残っ───」
「他人の心配なんて、貴方にする余裕あるの?」
欠月を掴んでいない方の腕が振りかぶられる。
「っ!
欠月は咄嗟に神聖魔法でデバフをかけつつ、風魔法を起動する。
「へぇ?貴方やっぱり───」
「渦巻く風っ!」
レイラが手を離し、後ろへと下がる。
「テメェ…どういう……」
いや、彼女の立場を考えれば妥当か。
これは咄嗟に彼女の名を呼んだ俺にも落ち度はある。ってかそもそも、バッドエンドの中には彼女が世界を滅ぼすエンドもあったのだ。
認識を改めろ。
目の前の彼女はゲーム「聖なる神と希望の王」に登場するヒロインではなく、世界に存在する「異世界の雷神の娘」にして、この「聖なる神と希望の王」の世界──と主人公──を調査する為に別世界の神々から送られてきたスパイ。
最悪、ここで消される可能性もある。
そうなったら、どうなる?
葉月の妹は助からない。
俺は死ぬ。
俺の仲間である葉月朔夜も殺される。
───ったく、ふざけやがって。
VS神とか、そんな
「天の裁断」
レイラが魔法を放つ。
「っ
欠月の魔法はレイラの魔法の威力を微妙に削ぎ、その魔法を回避可能な攻撃にした。
「っ分かってはいたが、お前、魔法の威力やべーな」
デバフを受けてなお相殺できないとは、恐れ入る。
「貴方───何故その魔法を?」
レイラは大きく目を見開いて、心ここに在らずと言った具合だ。
(───狙い通り)
対して、欠月は内心で笑みを浮かべる。
あくまで考察の域を出ないが、恐らく雷魔法と言うのは
つまり、
「何故貴方が
焦燥、あるいは恐怖の表情を浮かべて、レイラが叫んだ。
(あれぇ?)
しかし、その反応は欠月にとっても予想外であり、内心で疑問符を浮かべる。
(てっきりトールからの新たな刺客とかいい感じで思い込んでくれると思ったんスがね)
宛が外れた。
そんな事を思いつつ、思考を回す。
ゼウス?なにそれそんな要素────あ、いや、あったな。
ってことはあと二つは
いや、それはいい。
もしかして魔法体系って神話由来か?
何その裏設定。
魔法キャラの使う魔法って基本魔法以外同じ属性でも同じ名前の魔法って殆ど無いなと思ってたけど、そう言うこと?
あ、基本魔法ってのは……そうだな、神話派生、もしくは固有派生とでも言おうか。まぁ兎も角、固有派生する前の共通の魔法だ。
大雷とか小雷、散雷とかだ。
いや、ってか待てよ?
もしかして俺、レイラの頭のなかじゃ───
「貴方、ギリシャの刺客っ!?」
で す よ ね 。
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