第35話 速攻殺して次に行く

「往くぞ」

その宣言は、炎の揺らめきの後に聞こえた。

「おや?速くなったかい?」

しかし、そんな葉月の攻撃を、斬将は意図も容易く止めて見せる。

だが、葉月も止めるその程度は予想の範囲内だ。

しかし、レイピアの剣術の基本とは、突きだ。

他にも出来ることはあるが、それが最も脅威。

しかし、

「この距離で突きは出来まい?」

葉月は無表情にそう言う。

勿論、相手の武器はそれだけではない。

先程の蹴りは凄まじい威力だったし、基礎身体能力は相当の物なのだろう。

けれど、身体能力自体は、恐らく自分とそれ程差があるわけではない。

そして、実力もある。無論、相応の経験もあるだろう。

ならば今、魔法剣に対応出来ていない時に殺しきる。

勝機はそれしかない。

(速攻で殺して、メイベルを助ける!!)

「カァッ」

その声は、斬将の口から漏れていた。

「キ、ミィ……!!」

葉月の膝が、彼の鳩尾を的確に捉えたのだ。

無論、無理にガードをこじ開けて打ったものだ、腰は入っていないし威力も足らない。

それ以前、通常のアンデッドであったならば効かないだろう。

しかし、葉月は賭けに勝ったのだ。

あれ程の肉体の性能を、魔力のみで保てるとは考えずらい。ならば、生き死には別として、少なくともその肉体は状態なのではないか、と。

「……シィッ!!」

炎の刀と、斬将のレイピアが再び鍔迫り合いを演じる。

「なるほど、この炎、大分扱いが解ったぞ……!!」

葉月の方が、慣れが早かった。

当然だ。

悠久を生きるだけの死者よりも、今を生き急ぐ生者の方が、適応は早い。

「く、クゥゥゥゥ」

苦しそうな声を漏らしながら、斬将は葉月の目の前で燃えて滅びて行く。

しかし、それすらも恍惚の表情を浮かべるのは、敵ながら天晴れと言う他無い。

「さようなら」

魔法剣 紅蓮。

漏れていた炎が刀身に圧縮され、漆黒の刀が紅に染まる。

「良いですねぇ…やりましょう?お嬢さん」

そんな気になる言葉を残して、斬将変態は消えた。



欠月「正義は勝つ……」

黒龍「あ、変態消えた」

黒服タキシード「俺の配下やられ過ぎ…?」

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