第21話 神故に
「───っ」
即座に思考が回り出す。
恐らく、彼女達が何の反応も示していない時点で、まだそれ程近くはない。───少なくとも、即死距離ではない筈だ。
ならば対処法はある。
今すぐ転移を使ってダンジョンの外に逃げれば良い。
少し溜めが必要なダンジョン外への転移も、今ならば成功するだろう。
しかし、だ。
これには問題がある。それは黒の天外を放置することになると言うことだ。それをした場合、ある程度で頭打ちになるにしても対処不可能なまでに数が膨れ上がる可能性が大いにある。そして、それを防ぐため、ゲームでは黒の天外はダンジョン内にプレイヤーの存在が無くなると一定期間で消滅する仕様があった。……しかし、しかしだ。この世界では、恐らく彼女達のような現地人もプレイヤー認定されているだろう。そうなると、次入る者の安全が保証出来ない。いや、保証する必要は無いが、自分達のせいで死ぬのは少しばかり気分が悪い。
とまぁ、理由を述べてはみたが、やはり最も大きい理由はレイラとステラだ。
彼女達は俺のパーティーに入っておらず、俺達が転移したとしても着いてこれない。
まぁ、彼女達がそう簡単に
四眷神将の五柱目とか、邪神戦辺りで。
聖女いないと女神が大々的に力を行使出来ないし。
「今──何か…」
ステラが顔を上げて天井を見た。
「どうしたの?」
それにつられて、レイラが上を見た。
「これは───集積した死の概念かしら」
そう言って目を見開くレイラ。
直後、俺の身体が何者かに強く引っ張られた。
「うおっ」
驚き後ろを確認すると、先程までグロッキー状態でダウンしていた葉月がまだ少し悪い顔色で俺とステラを抱えていた。
「へぇ?良く反応するわね。貴女」
葉月の隣に立つレイラが、感心したように言う。
「そちらこそ……仲間を助けようとしないとはどういうつもりですか…」
責めるような口調で言う葉月。
「貴女が近くにいたし、それに、その子なら多少アレの間合いに入っても大丈夫よ」
レイラは目の前の死の概念そのもののような存在を見て、不快そうに顔を歪める。
「……不自然な理…私達を真似たのかしら?けれど、題材を死にしたのは失敗ね。死とは自然の一部。そこにあるだけのものよ」
それは、決して自ら刈り取るモノではない。
故に───
「偽物ごときが私の前に姿を現した事、後悔する暇も与えない」
バチリ
と、雷光が煌めいて。
「天の裁断」
神言は紡がれた。
故に、それは起こりうる。
先に到達したのは光、ついで音と、それに少し遅れて衝撃が。
「──────────」
最後に無言の絶叫を残して、死の化身はあまりにも呆気なく消滅させられた。
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