第104話 災厄の反証
まじで申し訳無かった
(土下座)
「さて、主らはもう行って良いぞ」
街を出てある程度歩いた平原で、黒い龍人は男達にそう言った。
無言で街の方へと帰る虚ろな目をした男達。
それと入れ替わるように、一人の男が歩いてきた。
「随分と久しぶり────否、初めましてだな、挑戦者」
龍人はニヤリと口角を上げる。
「アァ。アンタみたいな素敵な奴とは、出来ればもっと暗くて狭い場所で会いたかったよ」
「ハッハッハッ、そう遠慮するな。我とて、身体が逸って我慢出来んのだ」
黒い龍人の瞳と、抜き身となった男の刀が怪しく光る。
『来るわ』
何処からともなく声がして
ガキィィィンッ!
刀身と龍の爪の様に変化した龍人の手がかち合い、かん高い音が響く。
「
龍人が眼を見開く。
「───チッ、やっぱりこうなるか」
嫌そうな顔をした欠月が、悪態を吐きながら受けた攻撃の威力に身を任せて後退する。
「挑戦者よ、名は?」
「欠月。それと、テメェと
嘆息しながら欠月は自身の意思を告げる。
しかし、当の龍人は全く意に介していないようで、
「そうか、吾はやる気満々だっ!」
満面の笑みでそう言った直後、地面が抉れる。
『前、構えなさい』
【原典】の言葉が脳裏に達するより先に、顎に衝撃が走る。
「カハッ」
欠月の身体が、宙にて弧を描く。
その最中───
「ほれ、避けよ」
──龍人のかかと落としが、欠月の鳩尾へと見事に入った。
「グボッ」
ドゴンッ!
重低音が鳴り響いて、欠月が地面へとめり込んだ。
「ゴホッゴホッ……内臓、逝ったか…?」
『安心しなさい。見た目の割りには軽症よ。吐吐血はさっきのアッパーで口の中でも切れたのだろう。
(問題ない、動ける)
「そっちがその気なら……先ずはぶちのめしてやるよ、クソッタレ!」
啖呵を切ったその直後、欠月は思い切り後方へ転がった。
「避けたな。良いぞ、走り回れよ。そして吾を楽しませろ」
「体力ねぇんだよ!もっと
「悪態とは、随分と余裕があると見える。少し上げるぞ、付いてこれるであろう?」
黒龍の速度と、拳に込められた殺意が上がる。
「気持ち二割増しィ!?」
ふざけた事を言いながら、欠月はすんでのところでそれを避けていた。
『口は災いの元よ。分かったら戦闘に集中しなさい』
【原典】は呆れたようにそう言う。
「バッカお前!ここで口閉じてガチ戦闘してみろ!一気にシリアスになって俺は速攻死ねるぞ!ジャンルをギャグに変えんだよ!」
その言葉に、黒龍がピクリと反応した。
「欠月よ、貴様まさか…真面目にやっていないのか?殺すぞ?」
……
「いやどんだけ特大地雷だよ」
真顔になった黒龍相手に、欠月もまた真顔になる。
一瞬、間が空いた。
次の瞬間、黒龍の殺気が空間を満たす。
「ッ!?」
欠月は幻視した。
自分が細切れになるその様を。
いや、正確には幻視させられた、と言った方が正しいか。
欠月は、黒龍が発した膨大な殺気に、充てられたのだから。
「待てや、黒龍」
その殺気の最中で、欠月は手を上げた。
「なんだ?」
黒龍は意外にも欠月の言い分を聞く気があるらしい。
「今はまだ時期尚早だ。その内テメェの本体がいる穴蔵まで出向いてきちんとぶっ殺してやるから、今は待てや」
「……ほう」
吟味するように、黒龍は目を細めた。
「良かろう。待っているぞ。欠月よ」
黒龍がそう言うと、両者戦闘態勢を解除する。
『良いの?そんな約束して』
絶対面倒だぞ、と言わんばかりの声音で【原典】が言った。
「もしもん時は仲間集めてボコるんだよ」
『うわぁ…引くわぁ』
「うるせぇ…人間の領域にいる奴じゃあ……なぁ、おい」
なにかを察知した欠月は、確認するように黒龍を見た。
「あぁ、どうやら、来ているな。我が半身が」
『げっ』
「ボスラッシュかよ、ついてねぇ」
白い流星が天から地に降って、辺りの大地が吹き飛ばされる。
「ドワァッ」
欠月はそれに巻き込まれるように吹き飛びかけるが、その途中で黒龍が欠月を掴んだ。
「情けないの」
「うるせぇ…こっちはもう疲れてんだよ……たっく、派手な登場なこって……白い方のクソ蜥蜴……こんな時に来んじゃねぇよ……」
土煙が晴れ、白い流星の正体が明らかとなる。
「白龍さんよ」
それは、最悪の
欠「ダンジョンにいろよバカ」
黒「来ちゃった♡」
欠(ババア自重しろ)
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