第二章 迷宮と死神

第8話 伝説の再演

さて、深淵の門を見つけたは良いがどう深海まで行くのか?話しは簡単。

モセる。モーセする。

つまり、海を割る。

さぁ、伝説の再演リメイクといこうか!

俺はショップより購入した、レベル限界突破アイテム、「聖なる女神像」を手元に出す。

さて、何故俺が限界突破用のアイテムなんぞを出したのか。

それは、海を割るために必要なのが、大量の「聖なる力」だからだ。

ちなみに、正規の手段では、邪神を封印、殺害した後、聖なる神より、「偉大なる聖なる神の像」がもらえるのだが、それをこの場所に不法投棄する事により海が割れてこのエンドコンテンツが解放される。

そして、この「偉大なる聖なる神の像」の説明テキストには、「聖なる女神像」百体分の「聖なる力」がある。そう書かれている。

「欠月殿……?何をしているので??」

次々と海へ聖なる女神像を不法投棄する、いろんな意味で冒涜的な行いをし出す俺に困惑する葉月。

「みての通り不法投棄だけど」

「不法投棄…ですか?」

葉月の顔が更なる困惑に彩られる。

「そう、百体投げるの」

「なる…ほど?」

葉月は特に聖なる神信者って訳でもないから大丈夫だろ。ここにいたのが仮に雷神の娘、聖女とかだったら神への冒涜で処されたかもだが。

(いや、雷神の娘はやらないか)

あいつ、泳げんし。

仮にこんな小舟の上で雷魔法を使ったらこの小舟なんて簡単に吹き飛ぶし、それが分からないほどアイツは馬鹿ではない。

「これで五十体目っと」

半分。何も変化は表れない。

さぁて、この調子でどんどん入れてこー!

…………

………

……

そんなわけで、九十九体入れた訳だが。

「これ、最後の一体だけど、入れる?」

後ろで俺を眺めていた葉月に聖なる女神像を手渡した。

「…えっと、何処に投げれば?」

それなりに興味はあったのか、首をかしげてそんなことを聞いてくる。

「あの門の周りに着地する感じで」

「わかりっ…ましたっ!」

そう言うと同時に聖なる女神像を深淵の門に向かって投擲した。

「?何も起こりませ────」

変化は、劇的だった。

最初に現れたのは、巨大な光の柱だ。

それが天へと伸び、雲を吹き飛ばし、そして、それが逆再生されるかのように、巨大な聖なる力が落ちてくる。

雲を吹き飛ばしたのを真似るかの如く、深淵の門の周囲の海を吹き飛ばし、海をその状態で固定した。

「実際見ると…すげぇな」

ゲーム内で見たことのある欠月ですら、少し笑みを浮かべて感嘆の声を漏らした。

「なっなっなっなっ……」

葉月は呆けた表情でずっと「なっ」と言っている。

「さて、イベントムービーも終わったし、入るか、深淵の門に。おい、呆けてんなよ、葉月」

情緒のクソもねぇとばかりに欠月がせかす。

「え、え。分かりました…」

そう言いながら欠月を抱えて飛び降りる。

そして、深淵の門まで歩いていく。

「しかし、先ほども思いましたが」

「実際に目の前にすると、クソデケェだろ?」

「はい…」

(さて、行きますかね)

世界最高難易度ダンジョン、深淵の門の攻略に。

「さぁて、行くぞ?覚悟は良いか?」

「はい。元より、死しても妹を救うつもりですので」

「へっ、安心しな今回は死なせねぇよ。欠月さんの安心安全な攻略チャートエスコートがあるからな」

「そうですか、心強い」

「じゃ、行くか」

「はい」


『最高難易度ダンジョン「深淵の門」に入場しますか?』


YES

NO←


(YESだ)


『警告 このダンジョンの適正レベルを遥かに下回っています。それでも入場しますか?』


(YES。愚問だな)


『確認しました。それでは、良い冒険を』


次の瞬間、二人の体は、この世界から消えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る