第114話

「なーんか今日はすっごい楽しいなぁ!何時も楽しいけど今日は特別!」


 コンビニへの道中、大きめのコートを来て前を歩く立花。その声は顔を見なくても分かるぐらい明るい。


「パリピダンスしたからじゃないか?あれは中々良いものだった」


 予想以上に盛り上がったパリピパーティー。黒歴史ミラーボールも役に立ったしな!


「そうかも!みんな最初はあんまり動かなかったけどさ!最後の方は踊り狂ってたもんね!んふふ!今思い出しても川島の最初の『今夜は寝かさないぜ!』は、笑う」


「絶対古いタイプの奴だよな。俺も面白かった」


「そうそう!あたし噴いちゃったもん!なんかさ、良いよねこう言うの。あたしも青春してたと思ってたんだけど、実はまだまだやってないこと沢山あるんだって思ったよ」


 コンビニが見えたからか、そう言いながら小走りで先に進む立花。それを追って俺も小走りで追いかける。


「とうちゃーく!」


 大晦日だし、うちの近くは住宅街だからかお客さんも居ない。店員さんがレジに立って仕事してる位だ。大晦日までご苦労様です。


「んでー、ジャスミンティーだっけ?コウは何にする?あたしはー…ルイボスティー!」


 何だルイボスティーって?そんなオシャレ飲み物があるんか?


「お、俺はザバス!」


 男は黙ってザバスだよな。


「コウっぽいねぇやっぱり筋肉大事なんだ?」


「んー体は大事だけど筋肉は…立花が好きみたいだから…」


 いっつも筋肉好きって言ってるし、それなら維持くらいはしたい。


「え?あ、ありがとう?…んふふ何だろ変だね」


「変じゃねーよ。立花の為だし、ありがとうであってる」


 そう言うと立花は下を向いて耳を赤くする。


「は、早く買って帰ろう!」


 焦ってるのか照れてるのか、手と足を一緒に動かしながら歩いてる。


「ほら、こっちのカゴに入れてこうぜ」


「う、うん…王子達は何が良いかな?」


 カゴを持って立花の横に付く。近くで見た立花はまだ少し顔が赤くて上目遣いでこちらを見詰めてきている。


「何でも良いだろ?適当に買っていこうぜ」


 あんな顔ずりぃよ。そりゃ好きになるだろ。しかし、俺も照れがあって返事の返しがぶっきらぼうになってしまった。反省反省。


「うん、そだね」


 二人で店内をうろうろしながら買っていくものを選ぶ。さっきのやり取りで空気が微妙におかしいが、嫌な空気じゃない…と思う。


「会計が──」


 買い物も終わり会計を済ませて店を出る。


「ありがとうございましたー」


 外はコンビニの中とは違い、グッと寒い。寒暖差で余計にそう感じる。


「おー寒っ!」


「寒すぎ!」


 二人とも同じ事を思ってたらしくタイミング良く言葉が被る。


「寒すぎだよねーあたしは寒いの苦手だなぁ」


 手に息を吹き掛けながらスリスリして寒さを紛らわしてる立花、鼻もちょっと赤い。


「俺も寒いのはあんまりだな、トレーニングでも入念に体温めなきゃだし」


「へーやっぱそう言うのあるんだぁあたしはやっぱ夏!海とかさお祭りとか!」


「海もお祭りも今年行ったしな」


 今年行った海やら祭りやらを思い出して嬉しそうに話す立花はこちらを見ながら笑ってる。


「そーだね!来年は受験もあるし、難しいかなぁ?皆で行きたいけど…」


 確かに今年は皆受験生だ。推薦組が多いとは言っても受験勉強は避けられない。でも─


「行こうぜ、数日位なら予定合わせられるだろ、なんとか日程合わせてさ受験生だって高校生には代わりないんだし最後の高校生活が受験勉強だけってのもな?」


 俺だって勉強しないで大学に受かるとは思ってないし、しっかりやらなきゃとは思ってる。でもさ、三年しかない高校生活で最後の一年間勉強漬けってのもな?


 勿論王子達の予定もあるから無理はさせられないけど、一日や二日ならなんとかなるだろ。立花とも沢山思い出を作りたい。


 でも、その為には──


「立花、そこの公園で少し話さないか?」


 自宅とコンビニの中間地点にある公園に差し掛かろうとした時立花に声をかける。ここからは俺の心を。


「ん?良いよー」


 立花は素直に公園に向かっていく。その後を追って俺も公園へ。ここは良く小さい頃タクや他の友達と遊んだ公園だ。


 当時はでっかい公園だと思ってたんだが、高校生になって改めて見渡すとこんなに小さかったかな?って感想が出てくる。


 小さい頃は毎日が冒険で公園の端の木や植え込みがある場所を皆で秘密基地だって言って色々持ち寄ったなぁ。今思えば外から丸見えで秘密でもなんでもなかったんだか。


「おー!ブランコ発見!久し振りに座ろ!」


 あのブランコも小さい頃乗ってたなぁと思いながら俺も隣のブランコに座る。しかし小さい!


「あはは!コウはみ出してるじゃん!」


「だな、小さい頃は全然思わなかったけど今座るとちっせーわ」


 小さいブランコに乗って膝の上に荷物を乗せる。隣では少しブランコを揺らしながら楽しそうな立花。ふぅ…よし。


「ここさ、小さい頃良く遊んでたんだよ。タクとか他の友達とかと」


「へーまあコウの家から近いしね?」


 子供の頃って近くに公園が有るだけでマウント取れたよな。


「そう、んで俺ってタク曰く昔からちょっと変わってたらしくてさ」


「ふーん?ちょっと?」


 立花さんそこはスルーしてもらって…。


「そう、ちょっと!こだわりが強くてその時タクの一言でなんつーか…いじめ?当時は絶対いじめだって思ってたけど、今考えると微妙かな?が、あったわけよ。これは多分話したよな」


「そだね、いじめられてたってのは聞いた」


「そのいじめは後で解決したんだけどその時会長や涼さんに出会って考え方とか、んー…なんつーの?俺を形作ったみたいな?」


 随時あやふやになったけど、その時に俺の今の考えが作られたって伝えたかったんだ。


「うん、なんとなくだけどわかるよ」


 真剣に俺の目を見ながら話を聞いてくれる立花。そんな立花に俺の想いを伝えたい。


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