第72話
「てか、案内の途中だったけど王子は良かったん?決めちゃって」
体験とは言え、何だかちょっと強引だったかな?
「ん?まぁ元々入るつもりだったし、鎌田さんの言葉を聞いて入ってみたいって思ったんだ」
「そっかぁそれなら良いけどよ。お?熊さんがサンドバッグ使ってる」
バッコンバッコンと凄い音をさせながらサンドバッグを打ってたのは、皆が通称熊さんって呼んでる熊野さんだ。
身長もでかくて熊みたいな見た目だから安易に熊さんなんだけど、顔はとっても優しくて俺にも凄く優しい、うちのジムじゃ珍しくプロじゃないのにトレーニングに耐え抜いた屈強な戦士だ。
「くまさーん!」
「お?コウくん、お疲れ様。今日は…お友達を連れてきたのかな?」
「そうそう!こっちが逢坂でこっちが立花です!逢坂はうちに入るから、これからも顔合わせると思うけどよろしくね!」
基本的にジムでは敬語だけど、熊さんには砕けた感じで話してしまう。何だろう?父性が強いからか?
「へー!コウくんの友達かぁ。よろしくね。僕は
「逢坂修司です。お世話になります」
「立花美咲でーす!熊野さんおっきーですね!凄い!強そう!」
「あはは、立花さんありがとう。このジムじゃあ下から数えた方が早いと思うけど身体だけは一番大きいからなぁ」
ポリポリと頭を掻きながら苦笑いを浮かべる熊さん。
「いやー熊さん強いでしょ!てか、誰もウェイト合わないからあんまりスパーしないだけで、まず馬力が違うからなぁ」
「そんな事は無いと思うけど、確かに力だけならある程度強いかもね?」
こんな謙遜してるけどジム内の腕相撲ランキングでは、あまりに強すぎて殿堂入りしてる。強すぎるからランキング一位の人しか挑めないレジェンド的扱いだ。
「じゃあ熊さん俺二人の案内するからー頑張ってねー」
「コウくんもお疲れ様。二人共楽しんでね」
「はい!熊野さんも頑張ってー!」
「これからよろしくお願いします。良ければ僕も熊さんって呼んでも良いですか?」
おぉ、王子スマイル!眩しいぜ!
「こちらこそよろしくね。名前は好きに呼んでもらって構わないから」
ニコニコ笑う熊さん。熊さんは本当に良い人だなぁ。
「え!じゃあ、あたしも熊さんって呼ぶー!」
「あはは、元気な友達だねぇ」
「んであっちがリングだろー今は誰も居ないけどミット打ちしたり色々やるところ」
「ふんふん!」
「んであっちがさっき王子が行ってた事務所でー、あっちがシャワールーム、んであっちにトレーニングの器具が色々あって…こんな感じかな?」
「凄いシンプルだね、綺麗に完結してる」
「会長の思った通りに置いたらこうなったんだってさー、たまに器具とかいろんなセールス来るけど大体追い返してるし、もうあんまり物が増える事は無さそうかな?」
「うん、シンプル。良いね余計なものはいらないって事だし、頑張れそうな気がする。コウも一緒だしね?」
「おう!任せとけ!キツくなったら更に負荷かけてやるからな!王子!」
「そこは助けてよ?」
王子が困り顔してる。人間限界だって思った所からちょっとだけ頑張れるんだぜ!そうやって限界を進めていくんだしな!
「大丈夫!ケガはしない様に加減はするし」
「そ、そっか…ケガしなきゃいい…のか?」
「そうそう、良いんだよ。まあトレーニング中は何にも考えられないから安心して良いぞ!特に最初は」
「あ、安心出来ないよ…」
そんな会話をしてると、立花がニコニコしながらこっちを見てる。
「どうしたの?美咲」
「王子も男友達が出来て良かったなぁって!こんなに早く仲良くなるとは思ってなかったしね?最初は凄い警戒してたのにね?」
「え?王子警戒してたの?」
何の警戒だ?俺はそんなに怪しい行動は…してる…
「うーん、だってね?いきなり美咲に友達が出来たって聞いて、しかも男だよ?色々疑うのも当然じゃない?」
「まー立花を知ってりゃそうかもな。心配だったってわけか。でも初対面で俺なら大丈夫的な事言ってなかったか?」
「そりゃあ貴方を警戒してますよ!って見せるよりこいつすぐ信用してチョロいなって思わせた方が相手の尻尾を掴みやすいしね」
「おーこわっ!そんな事は考えてたのかよ」
「そうだよー!王子最初の方は絶対二人っきりにならないように!って言ってたしねー 今思えば、コウと二人っきりになったって……プププ!」
そうですね、へたれです。
「それより案内終わったならあんまり喋って無いで帰った方が良いのかな?」
「あー別に良いんじゃない?今日そんなに多くないし、人」
学生なんてほとんど居ないから夏休みなんて関係ない人ばっかりだし、平日は人そこまで多くないんだよなぁ。
「そうなの?じゃあもう少し見学しても良いかな?」
「おう、なんならちょっとトレーニングやる?会長に聞いてこようか」
友達と一緒にトレーニング……青春じゃん!
「えっと…大丈夫かな?何にも準備してないけど」
「大丈夫、大丈夫!軽い柔軟と軽い動くだけだから!聞いてくるわー!」
「あ?軽くだぞ?おめーケガさせたら大変だから…まあ柔軟から始めとけ。少ししたら俺が見に行くから、コウ、軽くだぞ?軽く」
「わーかってますよ!いきなりそんな激しくする訳ないでしょ!行ってきまーす!」
「あいつテンション上がってやり過ぎるだろ絶対…出来るだけ急いで見に行くか」
「先に柔軟だけならオッケーだってさ!」
「そっか、柔軟とかならそんなに疲れないしコウ、教えてくれる?」
「おう!まっかせとけ!!」
「ほらな…何で柔軟でこうなるんだよ」
「エット…加減ハシタンデスケド…」
そこには息も絶え絶えな王子だった物が転がってる。可笑しいな?本当にかるーくやったんだけど…。
「コッ…はぁ…コウ…か、軽く、はぁ…はぁ…なん…はぁ…だよね……」
「えっと…ソウデス」
「どーせお前、テンション上がってやり過ぎたんだろ早めに来といて良かったわ」
「おーい、王子大丈夫かー」
立花が指でツンツン王子をつついている。その度にビクンビクン動く王子。そ、そんなにキツかった…かな?一応セーブはしたんだけど…。
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