第36話
コンコン
「はーい」
母さんかな?
「勉強頑張ってる?」
「頑張ってまーす!」
立花が元気良く答える。
「お茶とケーキ持ってきたからちょっと休憩したら?」
「ありがとう母さん」
母さんからお茶とケーキを受けとる。
「お気を遣わせて、すいませんお母さん」
「コウのお母さんありがとうございます!」
「あ、ありがとうございます」
三者三様のお礼だな。
「いーえ、それじゃあ頑張ってね」
バタンッ
「コウのお母さん優しいねー綺麗だし!」
「ありがとう嬉しいわ」
母さんを褒められるのは本当に嬉しい。
「へー珍しいね、僕達の年だと親を褒められたら大体照れて否定する人が多いのにね」
王子が不思議そうに問いかけてくる。
「そう…かもな?俺は普通に感謝してるから素直に嬉しいが」
少し恥ずかしいのはわかるが、いつでも俺の味方で居てくれる両親には感謝が大きいからなぁ。
「素直でよろしい!ケーキ食べて良い?」
俺の事よりケーキが大事みたいだな立花。
「そうだな食べようぜ」
「いただきまーす!」
「いただきます」
立花達も食べ始めた。
「そう言えば王子、教えるの上手いな。立花も上手かったけど」
そう、王子の教え方が鬼上手かったのだ。
正直学校で先生に教えて貰うより分かりやすかった。
「本当?嬉しいな。一応将来は教師目指してるから」
ほー王子が先生か、教え方めちゃくちゃ上手いし合ってるかもな。
だが、生徒からビビる程モテるだろうな…
「昔から王子は、先生になりたかったんだもんねー」
「そうだね、中学生の頃からなりたかったからね」
中学生からの夢なのか。
「確かに今日教えて貰って、教えるのが上手い人ってこういう人の事言うんだなって思った位だしな」
そう言うと立花が
「えー!コウあたしは?ちゃんと教えたでしょ!」
と若干不満そうに言ってくる。
「立花も上手かったよ勿論。頭の良い奴は教え方も上手いって思ったしな。ただ王子が学校の教師より上手いと思った位凄かっただけ」
「そうだね、美咲も十分教えるの上手だと思うよ僕は」
王子がフォローしてくれる。
「そうでしょ!イエーイ!王子に言われると嬉しい!」
「みーちゃんも先生って言えば先生になりたいんだよね」
春川がふと言葉を漏らす。
「そうだね。先生って言えば先生かな?」
何だ?政治家か!?
「へー何なの?」
「んーとね、獣医…かな」
なるほど、立花動物好きだしな。
「あー分かる気がするわ。トルネードの事めちゃくちゃ可愛がってるだろ?触った時の毛並みが相当大事にされてるなって思った記憶がある」
「えへへ、ありがと。トルネード拾った時にさ、近くの動物病院に連れて行った時のね、その時すっごい優しい女の先生が担当で、何度も行ってるうちにあたしもこんな仕事に就きたい!って思ったんだぁ」
トルネードがきっかけか。
良い夢持ってんなぁ。
「そんなコウくんは将来の夢は?」
王子がそんな事を聞いてくる。
「あー立花にはジムに行ってるって言ったよな?」
「言ってたねー」
「そこでさ、お世話になってる会長にプロになって勝ちを贈りたいってのが夢…かな?」
「コウプロになんの!?」
立花が凄い食い付いてくる。
「いやいや、夢だよ夢。そうなったら良いなぁって事!努力はするけど」
「みんな…素敵な夢があるんだね」
春川が少し寂しそうに呟く。
「麻衣もあんじゃん!作家になりたいんでしょ?」
ほー春川文学少女っぽいもんな。
「うん、でも皆みたいに人には恥ずかしくて言えないよぉ」
「なんでだよ?作家なんて立派な夢だろ?胸を張れ、堂々と言えるだろ?」
王子と立花を見ると微妙な顔をしてる。
胸を張れはセクハラだったか?
「そ、そうかな!?私も皆みたいに堂々と言っても良いのかな!?」
……?なんだ?話が微妙に噛み合って無いような。
「麻衣……僕達以外には、言わない方が良いかもね。素敵な夢だとは僕も思うよ?」
王子が言葉を濁す。
「でも田中君が言ってくれたんだから!私…」
「SM作家になりたいって堂々と親にも言う!」
あーそう言う事ね……
その後何とか三人で春川を説得して四人の秘密の共有って事で話が付いた。
一度火の付いたオタクを説得するのは大変だ。
「それじゃあ今日はこの辺で終わろうか」
王子が皆に声をかける。
「そーだねーあ゛ぁぁぁ!疲れたー」
おっさんみたいな声を出す立花。
「こら、美咲。女の子だろ?そんな声出すんじゃないよ?」
王子は立花を怒れる数少ない人物なのかもな。
春川は立花がやることなら何でも良さそうだし。
「だって疲れたんだもーん。さー帰ろ帰ろ!」
立花はあんまり聞いてないみたいだか。
「今日はありがとな、三人とも。下まで送るよ」
「うん、お疲れ様田中くん」
こう見ると普通の女子高生なんだよなぁ春川。
「母さんー立花達帰るってさー」
一応母さんにも声をかける。
「ちょっと待ってねー!」
何だろう?何かあったかな?
少しして母さんが玄関までやってくる。
「ごめんね待たせちゃって」
手には何やら紙を持ってる。
「から揚げのレシピ知りたいって言ってたのはどっちかな?」
あぁ!忘れてたわ。
「はい!あたしです!」
立花が元気よく手を上げる。
「えーっと立花さんだったかしら?どうぞ、簡単だけどレシピ書いたからお家で作ってみてね」
レシピを手渡された立花は嬉しそうに
「ありがとうございます!帰ったら弟と妹に作って上げます!」
へー弟と妹いるのか立花。
「頑張ってね!それじゃ引き留めてごめんなさいね。いつでも家に来てもらって良いからね?」
「はい!また来ます!」
「僕もお邪魔させていただきます」
「わ、私も…」
挨拶も早々に外に出る。
「やったぁー!弟達喜ぶだろうなぁ。コウありがとね!」
「いんや、俺は母さんに伝えただけだから」
レシピ書いたのも母さんだしな。
「勉強会、明日はどうする?」
王子が明日の予定を聞いてくる。
「俺は教えて貰う立場だからいつでもやりたいけど?」
立花達がどうかだな。
「あたしは全然良いよー麻衣も大丈夫でしょ?」
春川は立花が来るならそりゃ来るだろ。
「うん!私も大丈夫!」
だろうな。
「じゃあ明日もって事で。僕は二人を送っていくよ」
王子が二人を送ってくらしい。
「じゃあ頼むわ王子、三人とも気をつけてなー」
「バイバーイまた明日ねー!」
立花はいっつも子供みたいに手をぶんぶん振るなぁ。
「じゃあコウくん、これからも宜しくね?」
小首を傾げながらウインクする奴なんて初めて見たぜ……悔しいかな様になってる。
「そ、それじゃあまた明日ね、田中君」
「おう!また明日なー」
こうして、俺の第一回青春勉強会は幕を閉じた。
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