第39話

「それじゃあまた明日ねー麻衣行くよー」


「うん!みーさきちゃん!」


 もう、ほぼみーちゃんじゃねえか、春川。


「私はこっちだから、逢坂くんご飯美味しかったわ、ありがとう。また明日学校で」


 委員長もさっさと帰っていった。


「コウくん、気を使わせたみたいでごめんね。ありがとう」


 うんうん!わかってるぞ王子!


「気にするなよ王子!俺は王子の味方だからな!飯旨かったよ。じゃあまた明日な」



 タクは不思議そうに俺達の会話を聞いてる。


「……?まあ、なんだ飯サンキューな、王子!何だかわからんが、俺も味方だぞ!」


 こいつは…まあ事情を何にも知らないからな

 仕方ないか。


「うん、ありがとう二人とも。本当に男友達が出来て僕は嬉しいよ」


「そんだけ格好良かったら近寄りがたいかもしんねーな!俺達には関係ないけど!男の友情だぜ!」


「おう!タク良いこと言うな!男の友情だぜ!王子!」


「そうだね!それじゃあ僕も二人の事コウとタクって呼んでも良いかい?」


 二人で顔を見合わせる俺達。


「そんなの当たり前だろ!俺達は今日硬い友情で結ばれたんだからな!」


「そっか、コウ!タク!これからも宜しくね!」


「あぁ!王子!よろしくな!」


 こんな男だけで馬鹿やるのも青春だな!


「じゃあなー王子ー!」


「二人ともまた明日ー!」


 ニコニコで手を振ってる王子、そんなに嬉しかったのか?

 同性の友人があまり居ないのかもな。

 格好良すぎるのも考えものだ。


「で、気をつかわせたって何だよコウ」


 まあ、気になるだろうな。


「あーあれだ俺の推測だと、王子は立花の事好きなんじゃねーのかなって」


 タクは首を傾げながら


「そうかぁ?俺には手のかかる妹を世話する兄貴って感じしかしなかったけどなぁ」


 はぁ、タク…


「まあ、お前にはわかんないよな、すまんすまん」


「あ゛?そこはかとなく馬鹿にされてる気がするんだが?」


 何を言ってんだ!


「そんなわけないだろ?いくらタクが男女の仲に疎くても馬鹿になんてするわけないだろ?どれだけ鈍感でもよ!」


「コウお前絶対馬鹿にしてるだろ!うぜー!」


「落ち着けって。そんな感じで出来れば王子を応援してやりたいなぁと思って言った訳だ」


 タクが若干不満そうな顔をしながら


「お前が始めたんだろ、まあ良いや、言いたい事は分かった。それなら俺も応援してやりてーな!元々ロイヤルペアって言われる程近くに居て仲良いんだろうからなぁ。気持ちが変わることもあるかぁ」


「友達や兄弟みたいに思ってたのにある日突然!みたいな、漫画にありそうな展開かもな!」


 段々タクもわかってきたみたいだな!


「てか、王子なんて漫画の登場人物みたいな顔してるしな!立花だって黙ってればモデルやる位の美人だし!」


「実際美男美女だし、王子は性格も良いんだからまさに少女マンガの登場人物かもな」


 そんな話をしながらタクと帰る。


「おし!じゃあまた明日な」


「おーうお疲れ」



 一人になって少し考える。

 王子が良い人間なのは、間違い無いだろう。

 出会ってまだ日は浅いが少なくとも、性格が終わってるってことは無い。


 立花は、あいつも良い奴だな。

 春川の事で誤解されやすかっただろうが、友達として、ここ一ヶ月程一緒に過ごしてみて十分わかった。


 立花と最初に話した時に『絶対田中があたしの事好きになんじゃん』って言われて、なんねーよ!って返したが、このままいったら好きになってたかもしれん。


 それくらい素の立花は魅力的だったと思う。

 王子にも立花にも幸せになって欲しいからな

 あの二人なら上手くやるだろう。



「ただいまー」


 家に着いた。

 玄関を見ると父さんの靴がある。

 あれ?父さんがもう帰ってるのか、珍しく早いな。


「父さん帰ってるの?今日早いね帰ってくるの」


「おーコウ、お帰り。たまには父さんだって早く帰ってくるさ。そう言えばこの間女の子が家に来たんだって?何やら凄く可愛い子だったらしいじゃないか!」


 父さんは息子の青春に興味津々のようだ。


「母さんから聞いたの?確かに来たけど父さんの思ってる様な事はないよ。残念ながら」


 期待を裏切ってすまんな父さん。

 ちょっと残念そうに父さんは


「いやいや、何を残念がるんだ。父さんはコウが女の子の友達を連れてきた事が嬉しいんだ。父さんは高校生の頃女の子の友達なんて居なかったからなぁ」


 まさか、陰キャは血筋だったのか!

 ここにもジャ○プ要素が、実は父さんは死神なのか!?


「そうなんだ。彼女じゃないかって母さんにも聞かれたからそうかと思ったよ」


 そう言うと父さんは少し目を反らす。

 パッと母さんの方を見ると母さんも目を反らしてた。

 くそ、二人で楽しんでやがったな!


「そ、そんな事より!母さんは高校生の時からクラスで一番の美人だったからなぁ!」


 父さんがあからさまに話題を変えてきた。

 …しょうがない乗ってやるか。


「へー、確かに母さん美人だしね。…でも父さんは高校時代女の子の友達いなかったんでしょ?どうやって母さんと付き合ったの?」


「そりゃあ!父さんが母さんを好きになって、好きになって貰えるように努力したんだよ!」


 そりゃそうだろ。

 俺はその努力が知りたいんだか…


「お父さん、嘘はダメですよ?告白したのもプロポーズしたのも私からでしょ?」


 母さんは顔は笑いながら目は笑ってなかった。


「あはは、そ、そうだね。父さんは全然自分に自信が無かったから母さんが自分の事を好きになってくれるわけ無いと思ってたんだ」


 こんなことを言う父さんに母さんは


「うふふ、お父さんはね、皆がやりたがらない様なことも嫌な顔しないでやってくれてたし、とっても男らしい所もあったのよ!私が男の人に絡まれてた時何てお父さんケンカのひとつもしたこと無いのに相手と私の間に飛び出して…」


「か、母さん恥ずかしいからその辺で…」


「「…………」」


 見つめ合う二人


 息子はどういう反応をしたら良いんだよ。


「おっほん!」


 ここで咳払いをひとつ。


「あ、あらあら!ご飯の用意の続きしないと!」


 慌てて母さんが台所に引っ込む。

 両親の仲が良いの嬉しいが息子の前ではやめてくれよ。


「まあなんだ、コウを好きになってくれる人も必ずいるぞ!わっはっは!」


 笑いながら台所に消えていく父さん。

 ……なんかムカつくな父さんだって陰キャだったんだろ?


 部屋に戻ろう。

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