第38話
放課後――
「はぁ、腹減った…」
「俺も…」
昼飯を食い忘れ二人とも腹ペコだ。
「あんた達が遊んでるからでしょ?」
「そりゃそうだけどさ、委員長。男子高校生が昼飯食い忘れるのは死活問題だぜ」
「王子の家行く前に何か食って行こうぜ!コウ!」
この状態で勉強出来るとは思えん。
「あんた達教えて貰う立場なのに待たせる気なの!?立花さん達を」
「いや、でもさ委員長」
タクが動揺してる。
「タク、諦めよう…コンビニ位は寄っても良いよな?委員長」
それくらいは許してくれ…
「まあ、それくらいなら」
「おーい!コウ達ー行くよー」
一応立花にも確認しとこう。
「立花あのさ、途中でコンビニ寄っても良いか?俺もタクも腹減ってさ」
そう俺が言うと立花がこちらにピースしながら
「コウ達がお腹空いてるって王子に伝えたら何か作ってくれるってさ!王子だけ先に帰ってるから家に着けばそんなに時間かからずに食べれると思うよー良かったねー」
「あぁ、王子は神だったのか!」
タクが感動してる。
「あの顔で料理も出来んのかよ、ハイスペックだな王子」
これで俺もタクも救われた!
「立花ありがとな。助かったわ、本当に」
立花に後光が差して見える。
「王子のご飯美味しいから良かったねぇ中々食べられないよ?」
ニヤリと笑う立花、そんなに自信あるのか。
「よーし出発だあああ!」
ピンポーン
「はーいちょっと待ってね」
王子の家の前まで来た俺達は…いや、俺とタクは王子の家から漂う匂いに空腹が限界に近付いていた。
「くぅぅ~匂いがヤバイ。腹減った」
「俺も…腹減りすぎてくらくらしてきた…」
くらくらするまで腹減らしたのなんていつぶりだ?
ガチャ
「お待たせ。料理をお皿に盛ってたから…待たせちゃってごめんね」
王子がスカイブルーのエプロンを着て出てくる。意外と可愛いの着てるんだな。
「良い匂い!逢坂君突然参加させてもらってごめんね。早川です、よろしく!」
「あぁ早川さん、全然大歓迎だよ。さあ、入って」
「「「お邪魔しまーす」」」
「あーもう暴力的な匂いだ!」
タクは辛抱出来ないようだ。ちょっと震えてる。
「ごめんね、本当に家にあるもので作ったからあんまりかもしれないけど、とりあえず手を洗ってきたら?それから食べようか」
なんか…ママ味を感じるな、王子。
「うっひょー!手を洗ってきます!」
うっひょー!って何だよタク
「王子、変な奴ですまんな。悪い奴じゃないんだ安心してくれ」
一応友達だからな、フォロー入れとこう。
「そんな事をないよ、作った料理を美味しそうって言ってもらって悪い気なんてするわけないだろ?」
人間が出来てるなぁ。
「ありがとう、俺も手を洗ってくるわ」
「それじゃあ──いただきます!」
立花のいただきますを合図に皆食べ始める。
「うめえうめえ!王子すげえな!神じゃん!」
料理が旨すぎてタクの語彙力が死んでる。
「本当に美味しいわね」
委員長も感心してるな。
「ふふーんそうでしょ!王子のお料理美味しいんだから!」
「そうなの!しゅうちゃんの料理美味しいんだよ!」
何故か自慢げな立花と春川。
「しかし旨いな。肉じゃがと味噌汁と白米って言う男子高校生には堪らんチョイスも最高だ!」
彼女がこれ作ってくれたら一瞬で胃袋掴まれてるだろうな。
「あはは、ありがとう皆。本当はコウくんの好きな、から揚げを作りたかったんだけど、揚げ物するには時間がなくてね」
「くそ、王子の男気に惚れそうだ!」
「この料理は惚れてもしょうがないだろ!なあコウ!」
タクも同意見みたいだな。
女子の視線を感じるが無視だ!
多少キモくても本当に旨いからな!
「そろそろ皆お腹は落ち着いた?少ししたら勉強会始めようか」
王子が皆に声をかける。
「そう言えば今日は王子の料理食べに来たんじゃなくて勉強しに来たんだった」
あんなに頼んできたのに忘れてやがったなタクの野郎。
「満足して貰えたみたいで良かったよ。それじゃあ片付けるね」
空になったお皿を片付ける王子。
「あぁ王子手伝うよ」
部屋にも入れてもらって飯まで食わせて貰ったんだから片付け位はなぁ。
「私も手伝います」
委員長も手伝ってくれるらしい。
後の三人は……満足してだらけてる。
まあ洗い場にそんなに人居ても邪魔だけどな。
「さて、片付けも終わったから勉強始めようか」
片付けも終わり、いよいよ本来の目的の勉強が始まった。
王子と立花、委員長が一応教えるの側をやってくれてる。
成績で言えば春川も教えられるんだろうが…人には向き不向きがあるしな。
「そうそう、ここはこうだね」
「あーなるほど、こう考えれば良いのか!」
王子とタクも順調そうだ。
ふと委員長の方を見ると王子の方を熱心に見ている。
ははぁん、委員長も女の子だなぁ。
今日は王子目当てか。
今日はと言うかいつも周りは王子狙いだな…
良いんだ良いんだ!勉強が目的だしな!
「じゃあ今日はこの辺で終わろうか」
王子の声に皆一斉に顔を上げる。
「うぉ~つかれさまぁ!」
「お疲れー」
皆ちゃんと集中して勉強出来たようだ。
「王子マジで教え方も上手いな!もう何でも出来るじゃん王子!」
タクが王子をべた褒めだ。
「嬉しいな、でも何でもは出来ないよ。上手くいかない事も沢山あるしね」
最初は嬉しそうに、最後は少しだけ寂しそうに王子が答える。
そりゃ王子にも色々あるわな。
立花は何も気がついて無さそうだし。
「よーし!帰ろっか!」
当の本人はお気楽だな。
「美咲達、途中まで送ろうか?」
王子は立花達が心配な様だ。
「いやー王子に悪いよ!ご飯まで食べたしね!麻衣と一緒だから大丈夫でしょ」
「うん、しゅうちゃん大丈夫だよ!」
これ、春川は立花と二人っきりになりたいだけだな。何となくわかってきた。
「途中迄なら俺達が一緒だから大丈夫だろ」
お気楽なのはタクもか。飯を食わせて貰ったんだから気を遣えよ馬鹿。
「あー王子も急に一人になったら寂しいだろ?途中まで一緒に行こうぜ」
王子に目で合図する。
俺はわかってるぜ!王子!
「そう?じゃあ途中まで一緒に行こうー王子も」
「そうね、それが良いかも」
立花は納得したみたいだな。
委員長、一緒に居れる時間は長い方が良いもんな…でもすまん!俺は王子の味方なんだ。
今も王子とタクの方をじっと見てる委員長…
くっ!悲しいぜ!
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