第40話
「行ってきまーす」
「はい、行ってらっしゃい」
何時ものように家を出る。
あれからも何度か俺の家や王子の家で勉強会をして、期末への不安はかなり解消された。
そして、この頃あった変化と言えば一年の静原さんがちょくちょく俺を遠目から見ている時があるって事だ。
最初は勘違いかな?とも思ったがどうも監視されてる気がする。やっぱり王子の事が気になるのかな?
まあ、あんまり俺は気にしないが王子も罪な男だぜ。あんな美人な子に好かれるなんて。
でも静原さん、王子は…
「おーいコウ!今度の休みさー皆で海行く時の買い物いかない!?色々買ってさ!海で遊ぼうよ!!」
この遊ぶことしか考えてない小学生みたいなギャルが多分好きなんだ。
「あ、あぁ良いなそれ、タクにも声掛けとくわ」
海へはタクや委員長も行くことになった。まあ!期末お疲れって事で勉強会メンバーで行く感じだな。
「そんじゃあよろしくね!たっのしみー!」
「おはよう田中君、私も行くからね!」
春川とも大分打ち解けられたと思う。
他のメンバーが居る時はまだ若干大人しいけど。
「コウ、おはよう。美咲から買い物の件聞いた?」
朝から眩し笑顔の王子だ。
王子もかなり仲良くなったと思う。
この前はタクと三人で飯も食いに行ったしな。
「おはよう王子、さっき聞いたわタクには伝えとくって一応言っといた。しかし立花張り切ってたな」
「あはは、美咲達も大人数での海ってあんま経験ないからかもね?人付き合い狭かったから今まで」
そっか、そうかもな。仲は良いけど海にまで行くっていう友達は少なかったのかも。
「それじゃあ先に行くね。タクには伝えといてー」
颯爽と去っていく王子。
しばらく歩いてると聞きなれた声が聞こえてくる。
「おーい!コウ!ぐっもーにん!」
「なんだタク?ご機嫌だな?ちょっと気持ち悪い」
ぐっもーにん!って…
「おいおい!ひどいじゃねーか!親友に対して!そこはぐっもーにん!で返せよ!」
「親友でも、ぐっもーにん!は嫌だろ。何でそんなにご機嫌なんだよ」
タクは少し自慢気に
「いやいや!期末に不安が無いってだけで気持ちも軽いだろ!」
そう言うことか。
「それは俺もそれは感じてる」
「だっろー!心も軽いってもんだぜ!」
そうだ、伝えとくか。
「タク、今度の休みに夏休みの買い出し行くけど予定空いてるか?」
タクは更に嬉しそうに
「買い出しか!良いな!予定何てあっても空けるに決まってんだろ!」
「お、おう、じゃあ参加って事で立花達に伝えとくわ」
タクのテンションの高さに若干引きながら学校へ向かう。
「おっす立花、買い出しの件タクは大丈夫だってさ」
「コウ、さっきぶりーそれじゃあ全員で行けるね。楽しみー!」
立花は今日もニコニコだ。
この頃は表情も笑ってる事が多いから、クラスの男子もかなり立花への畏怖が薄れてきてると思う。
森中だけは未だに敵視してるみたいだが。
あいつも思い込みが激しいんだろう。
俺も人の事は言えないが。
「そっか、楽しみだな。大人数で買い物なんてしたこと無いからなぁ」
ふと、本当の事を言うと
「…コウ!これからいっぱい皆と遊べるからね!」
立花は若干へらへらしながら言ってくる。
こいつ…
「お前…」
「はーい、席に着けー」
くそ、担任が来てしまった。
立花の席から離れて自分の席に向かう。
チラッっと立花を見るとニマニマしてる。
あいつ絶対ドSだろ。春川と相性が良いわけだ。案外春川がドMなのも立花から来てるんじゃないか?
そんな事を考えながら授業を受けていく。
昼休み────
今日も王子は俺達の教室に来ている。
「ねえコウ?聞いてる?僕の話」
「ん?ああすまん、ぼーっとしてたわ。それでなんだって?」
王子の話を聞き逃したみたいだ。
と言うのも、今日も静原さんが遠くからこちらを見てるのが気になったんだ。
王子目当てとは言え健気だねぇ。
「やっぱり聞いてなかった!あのね、コウのジムを見学してみたいなーって話」
「あーうちのジムかぁ…」
王子の言葉に少し考え込む俺。
王子が不安そうにこちらを見てくる。
「だ、だめかな?やっぱり素人が簡単に見学出来たりしないの?」
「あぁ、違う違う。うちのジムはさ、プロの人とか居るからエクササイズとか体を絞るためだったら、他のジムを紹介してもらおうか?って思ったんだよ」
うちのジムは涼さんを初めプロ格闘家やプロになろうと頑張ってる練習生が多いから本格的に格闘技をやろうと思ってないと大分きついと思う。
「結構厳しいって有名だもんなコウの所のジム。俺も一回見に行って無理だって思ったわ」
そう、タクも一度だけ見学に来たが少し練習風景を見て『俺には無理だ!』って清々しく帰っていった。
タクの場合はモテたいがために格闘技を初めたかったみたいだから、あの練習量は無理かもな。
「そっか…でも、やる気さえあればちゃんと教えてくれるんだよね?」
お?乗り気か王子。
「そうだな。間違いなく強くはなれると思うぞ。練習に耐えられれば」
この練習に耐えるのがきつい。特に最初はキツすぎて吐くしな!
俺はいじめの事もあったし、小学生だったこともあって、かなり手加減されてたと思う。
今ではボロボロになるまでしごかれてるけど…
「うん、うん!一度見学に行っても良いかな?その、ジムの方が良ければ…」
「おし!わかった。話は通しとくわ。日付決まったら教えるなー」
王子にやる気があるなら俺もやぶさかではない!
「うん!よろしくねコウ」
王子の目が輝いてる、練習でその目が暗くならない事を祈りたい。
会長達には手加減してくれるように言っとこう。
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