第110話

「なんでだよ!?男女の事なら俺やタクなんかより絶対頼りになるのに!俺が何かしたか!?ご、ごめんな?」


 まさか、一番頼りになると思ってた王子がノーコメントなんて、知らない間に王子の地雷を踏んでたのか!?やべー!どうしよう!


「ちょ、落ち着いてコウ。そう言うんじゃなくてさ」


 な、なんだ!?そう言うのじゃ無いって…そもそもお前の相談なんて受けねーよって事ぉ!?


「あのね、僕はさコウの親友だけど美咲の事も親友だと思ってるからさ。安易に口を挟めないと言うかなんと言うか…」


 ……なるほど?王子は立花とも親友だから下手に発言出来ないと。


「っっんだよ!ビビったわ!お前の相談になんて乗らねーよ!って事かと思ったわ」


「違う違う!やっぱり二人共親友だと見えてくる物も有るわけじゃん?相談だってしてくれるし、でも相談された内容的に誰かに話すなんて出来ない訳で…だからノーコメントって事」


「そ、そっか。まあ一先ず良かったわ。しかしなぁ…」


 そう言いつつタクの方を見る。じゃあなんですか?相談出来るのはこいつだけってこと?


「なんだよ、俺じゃ不満だって顔だな」


 じっとタクの顔を見ていたら気が付かれた様だ。でも、相談出来る相手が居るのと居ないのとでは雲泥の差だし、ここは一つタクに─


「だってお前がモテてる所なんて見たことねーから参考にならなそうじゃん」


「はあ!?おめーまじでさぁ」


「はっ!!」


 自分でも驚いた、まさか心の声が出るとは。だってタクって恋愛相談とかすげー向いてなさそうじゃん?


「いや、すまん。本気じゃ…いや本気だけど仕方ないからタクでも良いかなって」


「もう相談なんて乗らねーよ!モテなくてすまんな!」


 くっ!喋れば喋る程ボロが出てしまう!何故なんだ!


「はいはい、二人共落ち着いて。コウもちゃんと謝って。今のは酷いよ?それにコウが言う程タクってモテなくないと思うけどなぁただタイミングが無いだけで」


「そうだろ王子!やっぱり王子は良いこと言うな!」


 王子のタクはモテなくないと言う発言で一気に機嫌が治るタク。確かに面倒見は良いし、顔だって別に悪くない、ちょっとうるさいけど意外と真面目だし……あれ?実は結構モテるのか?


「その、すまん。俺も立花に告白するってことで気が動転してたんだと思う。相談に乗ってくれ」


 ここは素直に謝るのが吉だろう。それに、本気で相談に乗ってくれる相手なんてそんなに居ないしな。


「はぁー…しょうがねぇな。乗ってやるよ!相談!……しかし!もし付き合ったらなんとか女の子紹介して貰えませんか?」


 最初は威勢良く相談に乗ってやるなんて言ってたが後半は自分の欲望駄々漏れで敬語になってるタク。本当に大丈夫か?不安だ。





「という事で、今度立花が泊まりに来る時に告白したいと思ってる」


 わーわーと色々騒いだが、いよいよ本題に入る。


「それで、告白するって時に二人っきりにして欲しいんだよ」


 流石にみんなの前で公開告白はハードルが高い。


「そうか、良いんじゃね?協力はする」


「そうだね、僕もそこは協力出来ると思うよ」


 よし、王子も協力はしてくれるみたいだ。


「ありがとう二人共、しかし当日どうやって二人っきりになるかなんだよな」


「そうだね、早川さんはともかく麻衣がねぇ…あの騒動以来更に美咲にべったりだし」


 そう、推薦取り消しの騒動の後から春川が誰憚ること無く立花にくっついて離れないのだ。


 あの時友情を再確認したのか、仲は更に良好で片時も離れようとしない。それどころか何かの用事で立花に近付く見知らぬ男子が居ると番犬の様に威嚇する始末だ。


「そうだな、あの春川を立花から離すのは…ちょっと無理じゃねぇか?」


 くそぉ!海で渡さないから宣言されたのが本当になってきてる。


「うーん…麻衣も実際はコウの事も認めてると思うんだけどね。じゃないとあの騒動の時にコウを連れてこないと思うし、まず認めてないなら関わらせようとしないと思うよ」


 あの時は確かに強引に連れてこられたからあまり気にしてなかったが、春川なら関わらせないかもな。


「だからさ、麻衣の事は僕に任せてよ。絶対何とかするとは自信を持っては言えないけど僕も全力で頑張ってみる」


 王子は春川の事も心配なんだろう。三人とも幼馴染だもんな。


「頼んだ王子。タクは委員長を頼んだ!よし、後は俺が土壇場で怖じ気づかないってだけだな!」


 まあ、それが一番心配だが。いやいや弱気になるな俺!俺を動かせるのは俺しか居ないんだぞ!


「しっかし、コウがあの立花に告白ねぇ…最初は二人して灰色の青春を送ることになるかもって怯えてたのになぁ」


「そう言えばそんな事あったな。最悪高校では女子からハブられるのも覚悟してたしなタクは」


 あの時はタクが居てくれて良かったって本当に思ったわ。


「二人共美咲の事なんだと思ってたの?そんなに凶悪に見えてたの?」


 王子はある程度解決した後に出会ってたからあのヒリヒリしてた時期には被ってなかったのか。


「そりゃあクラスカーストトップのいじめっ子ギャルじゃね?」


「あはは、そう聞くと凄い人みたいに聞こえるね」


「いやいや王子、コウが言ってることも強ち間違いないじゃなかったぜ?俺達何も知らない男子からしたらそう見えてたんだよ」


 王子は笑ってるけど実際俺が意を決して止めようとするくらいには本当に思ってた。


「そっかぁ…本当の美咲を知ってたら全然イメージ出来ないからなぁ二人も今ならそうじゃない?」


「今となっちゃな!確かにあの性格で気に入らないからハブったりはしなさそう。でも友達に何かされたら容赦なさそうなのはイメージ通りだけど」


 俺も概ねタクの意見通りだな。今思えば本当にいじめっ子ならあんなに女子から支持受けないだろうしな。


 それに友達の為なら何があっても動くだろうし、そんなところも俺は好きだ。


「コウは?どうなん?美咲のイメージ」


「ん?概ねタクと変わらないかな?でもやっぱり好きだからもっと良いところは一杯あると思ってるけど」


 好きゆえにって奴だな。やっぱり好きな人の欠点って好きな時は見えにくいよ。


「ほーん?恋は盲目ってか?言ってくれるねぇ?一人寂しいモテない俺に!」


「良いんじゃない?好きな時位盲目で。僕は色んな事に勢いが大事だって思ってるし」


 王子って冷静に見えて結構熱い奴だし、勢い任せな所もある。やっぱりギャップ萌えか?


「まあ、俺が盲目なのは素直に認めよう。それより当日どうするかだけどさ──」


 その日は夜遅くまで男三人で作戦会議ならぬ馬鹿話が続いた。




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