第109話
「おっじゃましまーーす!」
「おうおう、あがれあがれ」
しばらくしてうるさい奴…じゃなかったタクが来た。
「おすー!王子」
「おすー」
リビングのソファーにダラッと座りながらタクへ挨拶する。こんな姿ここでしか拝めなさそう。王子ファンの皆様すみません!!
「んで、買い出しどうだった?」
「どうって、別に普通じゃないか?あー立花の姉弟の双子ちゃんが来たから一緒に行った位か?変わった事なんて」
「そうだね?タクは会ったこと無いかも知れないけど僕は小さい頃から会ってるから別に違和感無いし」
そうそうハプニングなんて起きねぇよ。
「へー立花の姉弟か、俺もちょっと見たかったかも、うちも兄弟多いから結構子供と遊ぶこと多いしな」
「確かにタクの家行ったら兄弟多かったもんな。この頃は行ってねーけど小学校の時は四人位居たよな下に兄弟」
「おう、あれからまた二人産まれてっから七人兄弟だぜ!テレビの取材も来るんじゃねーかって近所でも評判だからな」
タクの家は大家族でタクが一番上だ。家に帰ったら下の子の面倒とかも見てるらしい。
「兄弟多いってのは聞いてたけど、そんなに居たんだ?僕も今度遊びに行こうかな?」
王子もここまで兄弟が多いと興味が湧いたようでタクの家に遊びに行きたいらしい。
「あー…うちかぁ…多分王子が家に来たら大変な事になりそう…」
「え?なんで?僕別に変なことしないけど?」
王子はちょっと心外だって顔で否定してるけども、タクは微妙な顔のままだ。
「いやいや、そんな心配はしてねーよ。ただよぉ…大家族ってのは…」
「だ、大家族ってのは?」
ゴクリと喉をならす王子。王子、悪いけど大した理由じゃねーぞ絶対。
「うるせーんだよ!」
「え?うるさいの?」
ほらな?
「そう!特にうちの女連中はミーハーだから王子が来たらキャーキャー言って絶っっっ対うるせーぞ」
「そ、そうなの?でも僕はある程度は慣れてるよ?」
「王子よー…学校で見かけるクラスメイトと兄の友人として遊びに来る人だと、接し方が違うんだよ!もう、もみくちゃにされんぞ絶対」
タクの家は何時も賑やかだしワンチャン本当にもみくちゃにされるか?
「そ、そうなんだ…じゃあ遠慮しとこうかな…」
諦めたのかしょんぼりと肩を落とす王子。
「まあなんだ、俺はまじで何時でも来てもらって構わんぞ。でも、一応覚悟はしとけよ?」
友達の家に遊びに行くのに覚悟が必要って何だよと思います。
「まあ王子はその内遊びに行けよ。何事も経験だろ?それより、お前達に相談がある」
「そうだね、タクの家には覚悟が出来てから行くよ。んで、相談?」
「おう、なんだ?相談なんて珍しいな」
俺達は親友だ。少なくとも俺はそう思ってる。ならば分からないことは相談するべきだよな。
「あのな…王子は気が付いてたと思うんだが…俺、立花が好きなんだ」
二人を真剣に見詰めながら俺の気持ちを吐露する。王子は表情変わらず、タクはポカンとしてる。そうだよな、いきなりだったからタクも驚くよな。
「タクにはバレてなかったみたいだか、結構前から好きだったんだ。それで、告白しようと思ってる」
別に隠してた訳じゃないんだが、なんだか申し訳無くなるな。
「すまんなタク、親友なのに黙って─」
「やっとかよ。てかバレてないと思ってたのかよお前。ずっと前からバレバレだわ」
……えっ?何だって?
「は、はあ?いやいやそんな事は無いだろ?気が付いてたのは王子位で…」
そう言いながら王子の方を向くと、目を反らされる。あれ?マジ?
「てか、バレてない前提で動いてたのかよ。俺はもうバレてるから、ある程度はっちゃけてるのかと思ってたわ」
「え?ちょ、どう言う…えっ?待って」
そんなに分かりやすかったの?すげー隠してたつもりだったんだけど?
「考えろよコウ、海で立花が絡まれてバチギレしてたけど、友達が絡まれた程度であそこまでキレねーよ」
「いや、あれは…ほら俺が友情に厚い男だって感じで…」
「別に今さら隠さなくても良いだろ?俺が確信したのは海の時だな。王子はもっと前に気が付いてたみたいだけど」
体が震えてくる。え?今までの行動好きゆえにって全部思われてたって事?実際そうだけど!そうだけど違うじゃん!
「そうだね、僕は夏休み前の買い出しの時だと思ってるけど?それまでは好意は有っただろうけど自覚してないのかブレーキかけてるのか、そこまで表に出してなかったんじゃないかな?」
すげー!王子すげー!全部ドンピシャです。え?メンタリスト?
「あの…その通りです」
「やっぱりかぁ、まあ僕も人の機微には敏い方だと自負してますから」
「まあ、コウが抜けてんのは昔からだから良いとして、そんでどうすんの?」
そうだった、あまりの衝撃で本題を忘れてた。
「そ、そうだった。それで…今度告白しようと思うんだが…」
二人を見ると王子は普通だけどタクがこちらを睨んでる。
「えっと?タクはなんで睨んでるんだよ」
「はあ!?そりゃあよお!お前も遂に彼女が出来るのかと思うと嬉しいが腸が煮えくり返る程の嫉妬を憶えるんだよぉ!!」
「すげー素直だねタク」
王子が呆れたようにツッコミを入れる。しかしなぁ…
「いや、でもさ?告白してもOKかどうかは分かんないんだから、まだ早いだろ嫉妬は」
そもそも俺を立花がそう言う対象に見てない可能性だってあるだろ?俺の勘違いってのもあるし。考えれば考える程不安が募ってく。
「はあ?いやいや、大丈夫だろ。どう見たって──でもそうか、失敗のパターンも無くはないのか?おし!コウ!告白失敗したら慰めてやるからバーンと砕けてこい!」
何だこいつ急に元気になりやがった。ムカついてきたんだが?
「なあ王子、王子はどう思う?俺の告白は成功すると思うか?」
薄情な親友は無視して、頼りになる親友に相談しよう。
「んー…僕はその事に関してはノーコメントかなぁ」
えぇ!?なんで!?
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