第108話
「とうちゃーく!」
「おう、ポケットに鍵入ってるから取ってくれ」
荷物は持たずに双子ちゃんと手を繋いでた立花に玄関を空けて貰うためにポケットに入ってる家の鍵を取って貰う。
「どっちに入ってる?」
そう聞きながら近寄ってくる立花。
「あーどっちだっけか…」
小銭とか色々突っ込んだからどっちに家の鍵入れたんだったか曖昧だ。
「うーんどっちだろ?」
そう言いながら両手で俺のコートのポケットを探る立花。探ってるうちにどんどん身体が密着してきて…。
「あ、あの…立花さん?」
「どれだー?これかな?あれ?小銭だ、じゃあこっちかな?」
密着してもぞもぞされてるが、俺の両手は荷物で塞がってるからされるがままです。
「んー?これだ!あったよー開けるね」
一人で密着されてドキドキしてると
「まったく美咲はああ言う所無防備なんだよねぇ。それだけコウに心を許してるんだろうけどさ」
後ろから王子が少し呆れながらも声をかけてくる。そう!ドキッとする事をさらりとやられてこっちの心臓はもたないよ!
「ほらコウ、固まってないで中入ってよ。荷物が邪魔で僕も入れないからさ」
いかんいかん、突然の事でフリーズしてしまっていた。
「すまんすまん今入る」
ちなみに立花は玄関を空けた瞬間家に突入していった双子ちゃんを追い掛けて行った。家からは「手洗いとうがいしなさーい!」って声が聞こえてくる。
それぞれ冷蔵庫に入れる物は入れて、常温で保存できるものはまとめておく。パーティーまでは、しばらく日数あるしな。
「ふー…お疲れーまだ買い出しだけなのに一仕事終えたって感じ」
立花も帰り道は双子ちゃんに振り回されてたから疲れたんだろう。俺もどさりとソファーに腰掛けて一休み。双子ちゃんは早速買ってきたいちごを食べている。
「おいしー!」
「そらくんもおいしいとおもう!」
「そだねー二人共コウにーちゃんにありがとうは?」
「「ありがとー!」」
「どういたしまして」
うんうん、やっぱり笑顔が一番だ。
「コウー今日使う歯ブラシってある?」
「ん?あー確かにあった気が…」
そう、今日は王子が泊まっていく。後でタクも来る予定で二人共家に泊まっていく。結構王子の家に泊まったりしてるから、新鮮味はそんなに無いけど。
「いいなー王子お泊まり…」
「いいなー!うみちゃんもおとまりかいしたいなぁ」
「そらくんもぉー!」
姉弟三人揃って羨ましがってる。いや、俺は泊まって貰っても良いんですけどね?双子ちゃん達はまだ小さいし、立花はいくら王子が居ると言ってもねぇ。
年越しパリピパーティーでも泊まるけど、その時は委員長も春川もいるし、男三人の中にってのもね。
「まあまあ、その代わり今日遊ぼうね?」
王子は双子ちゃん達に目線を合わせて諭してる。先生を目指してるだけあって子供との接し方が上手い。
「ほんと?しゅうちゃんなにしてあそぶの?」
「なにするのー!」
双子ちゃんは王子に任せとこう。俺は…。
「立花も女の子だし、ちょっとは気を付けようぜ?男しか居ない所に泊まりたいとか」
信頼してくれてるのは嬉しいけど俺は立花が心配です。
「えーなんでよ!コウ達でしょ?他の男が居るなら絶対泊まんないし!」
「そ、そうか。それを聞いて安心した」
何言ってんだ?みたいな顔で言われました。しかし、あまりにも無防備な事が多い気がしてるんだよなぁ。
「あー!なんか疑ってない?言っとくけどあたし男子だと王子以外と買い物に行ったことすらないよ?」
「そうなん?まあ、俺も女子と買い物に行ったことは…立花達としか無いけど」
立花は絶対的にモテる、それは間違いない。俺が女子と買い物に行ったこと無いのは行けなかっただけで、立花は行かなかったって事だ。
「だってさー…他の奴らって変に優しかったり上から目線だったりさ?あたしが可愛いのはわかるけど目がいやらしいしぃー」
「成る程…勉強になります」
おい!世の中のモテない男子諸君!変な優しさや上から目線はダメらしいぞ!後目線は全てバレてると思え!
え!!!じゃあ俺が海でずっと立花見てたのもバレてんの!?
「んふふ、だからコウ達なら信頼してるのもあるけど……ね?一緒にいたいじゃん」
「お、お、お、俺も一緒に──」
「おねーちゃーん!こんどしゅうちゃんがおとまりにくるってー!」
「ほんとー?良かったねうみ」
何だよお、お、おって…オットセイかよ。ダメだダメだ!気持ちを強く持て俺!
「よし!うみ!そら!遊ぶぞ!!」
「「やったーー!!」」
その後無茶苦茶遊んだ。
「今日はありがとねコウ、王子。はい、二人共ありがとうは?」
「「ありがとう!」」
「よーし、じゃあ帰るねーママも迎えに来てるし」
立花と手を繋ぎながら帰るのを見送るはずの俺と王子。しかし…
「あのー?」
ガッチリ俺と王子と手を繋いだまま離さない双子ちゃん。
「はーい二人共お手て離してー」
「なんで?こうにーちゃんもしゅうちゃんもいっしょにおうちにすむんでしょ?」
さも当然の様に俺達の同居が決まった。そう言えば前回遊びに行った時にもこんなことが…
「違うよーはい、お手て離してーママが待ってるからねー」
そうして強引に離される手と手、引き裂かれる二人。
「なんでぇぇぇぇ!!いぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁ!!」
大絶叫である。ちなみに今叫んでるのはうみでそらは俺と手を繋いだままポカンとこちらを見てる可愛い奴め。
「はいはーい行くよーごめんねうるさくして」
しかし、こんなことは慣れてるのか、さっとうみを抱っこすると流れる様に帰っていった。
「小さい姉弟って大変なんだな俺も兄弟欲しかったなぁ」
「そうだねー僕は兄さんが居たからなぁ、でも弟か妹が居ても楽しいだろうね」
「俺は一人っ子だしお兄さんも羨ましいぜ。よし、タクが来るまでダラダラすんべ」
嵐のように去っていった双子ちゃんを少し名残惜しみながら家に戻る。
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