第62話
スマホを見て王子からもう少しで着くと連絡が入ってた。
「えっと……入り口付近で待ってますっと」
連絡を返して待つ。それにしても人がまだまだやってくるんだな。ぞろぞろと会場に入っていく。さっき解けた緊張がまた…。
「おーい!コウ!!」
俺が緊張を再度感じ始めた頃、タイミングよく立花達が到着した。
「おっす、道混んでなかったか?とりあえず入場だけしよう」
立花や王子、タク達の顔を見たら緊張も和らいできた。呼んどいて良かった。
「会場近くはすっげー混んでたぜ」
まあここから見るだけでも相当数いるしな。
「田中君今日はありがとう。頑張ってね」
「コウ、一応見学の件のお礼も言いたいから一緒に言ってくれる?」
珍しく王子も緊張してるみたい。立花に会長が怖い人とか脅されたか?
「おう、立花の見学の件も今日一緒に聞いてみようぜ」
春川は……いつも通り立花の横にぴったりくっついてる。そんな春川にくっつかれてる立花だか、もじもじしながら聞いてくる。
「ね、ねえコウ、涼様はもう会場入りしてるの?」
「あー居るよ。さっき挨拶したし、会長にも控室まで連れてきて良いって言われたからなー」
「本当に!?え、ヤバッ!」
ギャルが出てます立花さん。
そして皆を引き連れて控室まで向かう。
道中王子と立花が目立ってて人目を引いてたけど、立花は涼さんに会えるからか緊張してわかってないみたいだ。
「ここだな、入って良いか?」
「ちょ!ちょっと待って!ふっー…本当に鎌田涼様って書いてある…本当なんだ…」
「いやいや、ここまで来て嘘はつかねーだろ」
「そ、そうだけどさ!何か本当に夢じゃ無いのかなって!だって!涼様だよ!」
控室の前で立花が緊張して入れないでいる。そのくせ声はでかいのな。
「おい、コウか?あんまりそこで話すな。迷惑だからさっさと入れ」
中から声が聞こえてたのか会長から声がかかる。
「ど、どうしよう…犬飼会長に怒られちゃう……」
若干涙目になりながら立花がこっちを見てくる。
「こんなことで怒られねーよ。会長の言うとおり迷惑になるから入るぞ」
ガチャッ
扉を開けると涼さんが居た、試合前の涼さんだ。いつもの涼さんと違って少しだけピリッとしてる。
立花達を見ると一様に固まってる。あれ?何でこんなにも固まってんだ?
「お疲れ様です会長、涼さん。こいつらが友達の…」
「お、逢坂修二です。今日はありがとうございます」
「えっと、川島卓也です」
「早川彩那です。お招きいただきありがとうございます」
立花を見てるとぼっーっとしてる。大丈夫か?
「おい、立花?大丈夫か?」
「へ?あ、ああ!!たたた立花美咲でしゅ」
立花が緊張のせいで噛んでる…。
「プッ!かわいい!この子達がコウちゃんのお友達?」
綾さんが緊張してる立花を気遣ったのか声を掛けてくれる。
「後は、おい春川?」
「春川麻衣です…」
何時ものように人見知り大爆発だな。
「この五人が友達です!」
「おう、そうか今日は楽しんでくれ。それと…見学するって言ってた子は…」
そう言いながら王子達を見回す会長。なんか皆目をそらしてます。顔がこえーんだな、このじいさん。
「ああ、こっちの逢坂が見学希望です。それと、この立花も一緒に見学したいらしいんですけど良いですよね?」
二人を少し見詰める会長。顔怖いんだからあんまり、見詰めてあげないで。
「おう、二人共大歓迎だ。予定はコウが決めんのか?決まったら連絡しろよ」
「じゃあ決まったら伝えますね。よろしくお願いします!」
ほらな?やっぱりOKだった。二人の顔を見ると、あまりにもあっさり決まったからなのかキョトンとしてる。
「あ、ありがとうございます」
「あたしも、見学させて貰えて嬉しいです!」
「え?その可愛い子が見学に来るの?いつよいつ!」
まったくこの人は試合前なのに。しかも綾さんの前だし…。
「ふーん、確かに若いし可愛いしコウちゃんの友達だからとっても良い子何でしょうね?でもそれがあんたに、なんの関係があんの?」
後ろにゴゴゴゴッ!!っと炎のエフェクトが見えるくらいに不機嫌な綾さんが涼さんを睨みながら声をかける。
「はっ!いやつい…べ、別にコウの友達って言ってたから俺も仲良くしたいなと…」
段々と声が小さくなる涼さん。やっぱり綾さんが日本で一番強いかもしれない。
「ほれバカップル、イチャついてないで鎌田の方は用意しろ」
「会長ひどい!バカなのは涼だけですよ!……まあ頑張ってね涼、あたし会場に行ってるから」
何だかんだ言っても涼さんの事を応援してるから良いよなぁ。ああ言うの憧れる。
「コウ!試合頑張ってね!応援してる…もし勝てたら……」
「なんてな!!」
「うお!何だコウ。急にでっけえ声だして?」
やっべえ、声に出てた…。
「あ、いや何でもないっす俺も立花達をその辺まで送ってきますね。すぐ戻ります」
は、はっずー!王子や立花もキョトンとしてるよ……。
「じゃあ行こうぜ」
「あ、うん。お邪魔しました」
「「「お邪魔しましたー」」」
皆ほとんど置物だったけど良かったのかな?
「どうだった?何か皆緊張してたみたいだけど?」
「ばっっっか!!お前何だよ!めちゃくちゃ緊迫してる雰囲気だったじゃねえか!!俺は一瞬部屋の椅子に鬼が座ってるのかと思ったわ!!」
タクが抗議の声を挙げてる。まったく大袈裟過ぎんだよタクは。
「う、うん。あれはヤバかったね。コウが喋るまで息するの忘れてたもん…」
え?王子もなの?
「流石世界最強!!涼様!格好良すぎ!!あたしも息が出来ない位緊張したけど!」
ええー…みんなそうなの?
「と言うか良くあの雰囲気で喋り始めたわね?田中くん…」
委員長も信じられないものを見るような目でこちらを見てる。そりゃあ何時もに比べたら多少はピリッとしてたけど…言う程だったか?
「えっと…そんなだった?何時も一緒に居るから慣れたのかもな。ははは」
こんな時は秘技!笑ってごまかすだ。
「本当だよ。会長さんに睨まれた時は怒鳴り付けられて殺されるんじゃないかって思っちゃった…」
「いやいや、流石に会長も見学するしないで人は殺さないよ。てか殺す奴が居ないから」
何だよ?うちの会長は顔は怖いけど優しいぞ?
「いや、わかってるんだよ?そんなわけ無いって、でも何て言うか…本能?がこう……ウィンウィンと警報を」
「でもOK貰えたしジムに来るの楽しみにしてるわ。二人で話し合って日にち決めといて」
「うん!涼様居るかなぁ…いやいや!見学させて貰えるだけ!でも、涼様の練習姿…」
「んじゃ俺戻るから、楽しんでくれよな」
皆を会場まで送って控室に戻る…途中後ろから声を掛けられる。
「おーいちょっと待ってー」
振り返るとそこには…
「あーえっーと…?」
このイベントの興行主の高橋さんが居た。
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