第7話

「それじゃあ自己紹介といこう。

 俺は田中浩一、趣味は筋トレ。好きな食べ物はから揚げ、嫌いな事は不公平な事だ」


 まず友達なら相手の情報を握らないとな。

 ただ相手の情報だけ聞くなんて俺にはできない。

 きっちり自己紹介をする。


「えぇ~、なんか気まず」


 何言ってんだこの女。

 俺達はもう友達だろうに。

 気まずさからは最も縁遠いだろ。


「さあ立花さんも自己紹介してよ」


「自己紹介って…まあ良いや田中の事気にしても意味ないっぽいし」


 この女口悪いな。


「知ってると思うけど立花美咲。趣味は散歩

 好きな食べ物はーなんだろ、お寿司かな。

 嫌いな事は努力しない事」


 うーん案外普通だな。

 もっと嫌いなのはお前だー!とか言われるかと思った。


「へー立花さんって散歩が趣味なんだ意外」


 ニヤニヤしながら話し掛ける立花。


「田中さ、もうあたし達友達なんでしょ?

 立花って呼び捨てで良いよ。敬語も変でしょタメなのに」


「それもそっかじゃあ普通に話すわ」


「うんうんそっちのが全然良いよ。あたしは趣味って言っても犬の散歩だけどね。毎日行くから趣味みたいになっちゃった」


「立花が散歩に連れていってるんだ。意外かも」


「なんでだよ。うちの子拾った時に

 パパとママに毎日散歩はあたしが行くって約束で飼っても良いって事になったからね~」


「へー今でも守ってんだ。偉いね。」


「別に偉くなんか無いよ。当たり前の事じゃん。犬だって1日1回位は外に出たいでしょ。人間みたいに好きな時に外に出れるわけじゃないし」


 あれ?なんだ言ってることが至極真っ当だ。

 いじめっ子の発言には思えん…


「てか田中はさ、筋トレが趣味なん?結構

 筋肉ある?着痩せするタイプ?」


 筋肉にぐいぐい来るな立花。


「一応ある程度はあると思うけど。これでも

 少し格闘技齧ってるし」


「えっ!?田中格闘技やってんの?何やってんの?」


「総合格闘技だね。ちょこちょこお世話になってるジムで練習させて貰ってる。」


「へー田中見た目によらず意外な特技あんじゃん。そう言うのあたし良いと思うよ」


 ニコリと笑う立花に少しドキドキしたのは

 黙っておこう、すごく癪だ。


「まあジムでも後から入った人にスパーで負け越してたりするから全然ジムの中じゃ弱いけどね」


「そりゃそうでしょ。あたし達まだ高校生だしこれからぶち抜いてやれば良いじゃん」


 天に拳を振り上げてそんな事を言う立花は

 外から入る光によって某拳王に見えた。

 ちょっとかっこいいな。


「そうだな、これから練習してぶち抜いてやるよ。」


 そう言いながら笑い合う俺達。

 あれ?青春してね?


「あっ田中悪いけど私帰るね。トルネードの散歩に行かなきゃ。また明日ねー」


 嵐のように教室から出ていった立花。

 俺は一言呟いた。


「犬の名前トルネードって…」










 立花ってセンスあるな。

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