第29話
色々気になった事、聞いてみるか。
「あーじゃあトルネードの散歩も春川に押し付けてた訳じゃ無いのか?」
「あれ?何で麻衣がトルネードの散歩してること知ってんの?」
あれ?トルネードに会ったこと知らないのか。
「バイトの帰り道で散歩してる春川とトルネードに会ったんだよ」
「麻衣?何で教えてくれなかったん?」
「あ、のね…トルネードのリードから手を離しちゃって田中君にトルネードが突撃しちゃったから…何だか言いにくくて…その前に私がやったこともあるし…」
「その前にやったこと?何かやったのか春川」
そうすると、立花が思い出した様に喋り出した。
「そう!聞いてよコウ!トルネードの散歩はね、麻衣がうちに遊びに来てた時に『お金が無いから新しい本が買えないよ~』って言ってたのをパパが聞いてたみたいでさ。トルネードの散歩をバイトとしてやらない?って麻衣に提案してくれたんだよね」
「あーそれで春川が散歩してたのか」
「麻衣が運動不足ってのもあってさ、丁度良いじゃんってなったの」
確かに、春川体力無さそうだしな。
「あれ?じゃあなんで春川はトルネードの散歩してるか聞いた時に言い淀んだんだ?」
別に頼まれたなら言い淀む必要ないよな。
「そ、それは…」
暗い顔で俯く春川。
なんだ?そんなヤバい理由があんのか。
「あのね、トルネードの散歩は1ヶ月位前から頼んでたんだよね。それでさ、あたしも麻衣とトルネードどうしてるかなーって散歩コースの公園に様子見に行ったわけ」
あんだけ可愛がられてるなら様子位見に行くか。
「そしたら麻衣がさ、ベンチで本読んでんの。しかもトルネードが居ないわけ」
「は?本読んでる間に逃げたのか!?」
「って思うじゃん!だから急いで麻衣の所まで行って『麻衣!トルネード居ないじゃん!』って慌てて話し掛けたの」
「うん、それで?」
「そしたら麻衣が青い顔して『ごめんなさい、ごめんなさい』って言うから本当に逃げたんだと思ったのね」
「そりゃ思うわな」
「そしたら麻衣の弟がトルネード連れてこっちに走ってきてさ、よくよく聞いてみたら弟に500円渡して散歩して貰ってたの」
「は?バイト代はいくらだよ」
「一回2000円だったかな。パパ麻衣に甘いから」
結構もらってんな…金持ちだ。
「んで、流石のあたしも怒ってさ。体育祭でちゃんと運動するように、種目増やしたりしたんだよ。コウとの練習が終わった後、一緒に走ったりしてたしねー麻衣とトルネードも一緒に!」
俺との練習の後も春川と練習してたのか。
頑張るなぁ。
「まぁ結局体育祭は前半でダウンしたから、あたしが代わりに出たんだけどね」
「担任に頼まれたんじゃ無かったのか?」
確か担任に頼まれたから仕方なくとか言ってたような…
「なんか、自分で出ろーって推薦しといて、あたしが代わりに出ます!とかカッコ悪いかなってちょっと思っただけー流石に推薦し過ぎたかなって思ってたし…」
自分でもやり過ぎたと思ってたのか。
春川もあの後怒ってたしな。
「かもな。途中で森中まで立候補してきたしな」
「あれ本当に迷惑だった!森中も全部出るって言うなら良いけど、自分が活躍出来なさそうなやつには立候補しないし」
「確かに走ったりするやつばっかりだったかも?」
「あたしは麻衣を走らせて体力付けさせたかったのに…」
森中…お前はここでも迷惑だと思われてるようだ。
「まあ、大体分かったわ。要は俺の早とちりだったってことか…」
立花が良い奴だとは思ってたからな…
「ううん、そんな事無いよ。実際あたしと麻衣も、そう言う風に見られる様に動いてたしね」
ん?どういうことだ?
「そう言う風に見られるっていじめられてるみたいにって事かよ?」
「そこまでひどく見せてた訳じゃないけど、近寄りがたくはしてたと思う」
仲が良いからじゃれ付いてたって訳じゃないのか?
「何でまたそんな事をしてたんだよ。春川はともかく立花の印象は悪くなんだろ」
わざわざ印象悪くする必要あんのか?
「えーっとね、話すと長いんだけど。コウは時間大丈夫?」
「あぁ、時間なら大丈夫だけど…おい、春川?」
さっきから一言も発しない春川の方を見ると、こいつヨダレ垂らして寝てやがる…マジかよ。
「なんか、立花の苦労が本当に少しだけど、分かった気がするわ…」
「あはは、あたしはもう慣れたかも!麻衣!話してるんだから寝ちゃダメだよ!」
立花の声に春川が少し体を動かす。
「みーちゃん…すき…」
どんな夢見てんだよ…
「はぁ、取り敢えず話の続き聞かせてくれよ」
春川は、放っておこう。
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