第78話

「それでねぇ、美咲は小さい時からパパ、パパってすんごいべったりでさぁ」


 先程の鬱憤?を晴らす様に娘の自慢が止まらないお義父さん。顔はデレデレだ。


「もう!パパ!小さい頃の話は恥ずかしいからやめてよ!」


 対して立花はプリプリと、怒ってはいるようだが本気じゃないのか顔は穏やかだ。


「いやぁ小さい頃から本当に可愛いかったよぉ!美咲は!…そうそう!小さい頃に魔法少女?のアニメがあってさ、その時自分で考えた呪文?みたいなの唱えてたんだよぉ!可愛かったなぁ」


 ん?あれあれぇ~?立花さん?終焉フィーニス混沌ケイオスをもしかして、笑えないのでは?


「ちょ!パパ!その話はやめて!」


 立花が焦った顔でお義父さんを止める。しかぁし!もう遅い!


「えー!どんな呪文なんですかぁ!?僕も知りたいなぁ~!!」


 立花の制止の声をかき消す様に大きな声でお義父さんに話しかける。


「おお!コウくんも気になるかい!実はその時にパパにだけは呪文を教えてあげるね!って魔法のカードをもらったんだよねぇ!今でも財布にしまってあるよ!」


 な、な、な!なんですとお!魔法のカードに呪文を書いたぁ!こりゃあ香ばしい匂いがする!


「コウ、待って。まじで謝るから」


 迫真の表情で説得に掛かる立花。いやいや…


「なんだよ?別に恥ずかしくないだろ?誰にでも過去に掘り返されたく無い事の一つや二つはあるよなぁ~?」


 それを掘り返したのはだぁ~れだったかなぁ?


「お待たせコウくん!これだよ!」


 お義父さんからカードを受け取る。立花の顔は悔しそうだか、ここは止められない、いや!止まらない!!


 カードを見ると、ふむふむ、裏に六芒星が書いてあるタイプね。わかるわかる。六芒星かっけーよな。


 そして呪文とやらが、書いてある面を見ると



 すたーじゅえるをあつめて、パパのねがいごとをかなえます。まほうのじゅもんは


【みーちゃんだいすき】です。

 このじゅもんをとなえると、みーちゃんがなんでもします。おてつだいもするし、きらいなものもたべます。


 だいすきなパパへ、みーちゃんより



 ──あれ?俺の思ってたのと違うけど?俺はてっきり、魔を滅せよ!とか光あれ!とか、下手したらケルト文字か!?とかそんなのが書いてあると思ってたんですが?


「ん?どうしたんだい?コウくん」


 俺が唖然とカードを見詰めていたからか、お義父さんが声をかけてくれた。


「い、いや思ってたよりも可愛らしいなぁと驚いてました」


 動揺を隠せないまま、返事をする。まさかもっと中二病っぽいと思ってましたなんて言えないし。


「そうだよねえ!今はさあ!大人っぽくなって、下の子達の面倒も見てくれるし、学校の成績も優秀だし、親としては言うことなしなんだけどねぇ。やっぱり小さい頃のみーちゃんも可愛かったなぁって思うんだよぉー!」


 デレデレのニヤニヤが止まらないお義父さん。確かに立花の小さい頃って可愛らしいんだろうな。下の二人も、天使だしな?


「もー!パパ!止めてよ!」


「あははは!ごめんごめん。小さい頃の話はこのくらいにしようかな?」


「そう…ですね。そろそろ帰ろうかな」


「え?もう帰るのかい?まだ良いんじゃない?」


 お義父さんは語り足りないのか、イケオジの面影無くしょんぼりしている。まあ、もう少し位なら…


「はいはい、コウくんも困ってるでしょ?ごめんなさいね、この人子供達の事になるとずーっと喋っちゃって。せっかく遊びに来てくれたのに」


「いえ、小さい頃の立花…じゃあれか、美咲さんの話を聞けて楽しかったです」


「そうかいそうかい!じゃあまた遊びに来てくれてるかい?まだまだ格闘技の事も喋りたいしなぁ」


「もう!コウはあたしの友達なの!次はあたしの部屋で喋るからね!」


「そんなぁパパも美咲の部屋に一緒に居ても良い?」


「だめ!大体パパほとんど仕事でこの時間居ないでしょ」


 そりゃ社長らしいしな?中々この時間に家で暇してることなんて無いだろう。そ、それにしても次は立花の部屋なの?え?いきなり?


「じゃあ、あたしコウをその辺まで見送ってくるからーコウいこー」


「あの、お邪魔しました!出来れば、またお話させてください!」


 さっきまで暗かったお義父さんの顔がパッと明るくなって


「本当に!?じゃあまた近いうちに遊びに来てね!」


「ごめんね、コウくん気を遣わせちゃって。うちならいつでも遊びに来てくれて良いからね?今度はおばさんともお話しましょうね?」


「はい!ぜひ!そらとうみも、また遊ぼうな!」


「え!?こうにいちゃんかえっちゃうの?おうちにいっしょにくらすんでしょ!?」


 うみがいきなり同居を宣言してますけど、いつの間にそんな話に頭の中でなってたんだよ。


「にいちゃんもお家に帰らないと、いけないんだよー。また来るからなぁ」


「なんでぇ!かえっちゃいやああああ!」


 さっきまで大人しくしてたのは、俺がずっと居ると思ってたからなのか、帰ると分かるとわんわん泣き始めた。


 それにつられて、そらも何故か泣き始める。トルネードは双子が泣いたことに興奮してぐるぐる回ってる。カオス…いやケイオスだ。


「コウくん、気にしないで帰っちゃって大丈夫だから。ほらー二人共、お兄ちゃんにバイバイは?」


 流石お義母さん、双子がギャン泣きでも慌てること無くあやしてる。お義父さんは、おろおろしてます。流石お義父さん。


「じゃあお邪魔しました!二人共また遊びに来るからなー」


「い゛ぃぃぃや゛ぁぁぁた゛ああああああ!!」


「う゛わ゛あああああああんかめんらいだーがぁぁぁぁぁ」


 明らかそらは、違う理由で泣いてるみたいだ。名残惜しいが帰ろう。

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