第98話
「全然違う!みーちゃんは私を何時も庇ってくれて!何時だって優しくて!一人ならもっと楽なのに、足手まといの私を置いて行かないで、いつも!いつも一緒に居てくれた!」
顔を真っ赤に、目に涙を貯めながら声を張り上げる春川。春川の豹変に担任も驚いて口を挟めない。
「それに!みーちゃんは何時だって自分の事より人の事を考えてて、それなのに!自分が苦しい時も全然頼ったりしないのに!今回はみーちゃんが……泣いてたんですよ!助けてって!どれだけ苦しかったのか!どれだけ悲しかったのか!先生はわからないんですか!」
魂の叫びとも取れる言葉が、口から溢れだしてきてるんだろう。喋るのが得意じゃない春川が、これ程まで必死で喋ってるんだ。
立花の方を見ると目からポロポロと涙が零れてる。こんなにも自分の事を思ってくれてると心でわかったんだろう。
「し、しかし!教室で強く当たったり体育祭では競技を、押し付けたりだなぁ…」
体育祭の事をお前が言うのかよ!てめえだってその場に居ただろうが!それなら自分で止めろよ!!
「それは!私がドMだからです!強く当たって欲しいって!私がお願いしたんです!みーちゃんは嫌がってたけど!やってくれないと友達止めるって!そこまで言ってやっとやってくれたんです!!」
おい!何か重要な秘密を勢いに乗ってすげー暴露してんぞ!!大丈夫か!?
「ド、ドMって…お前なぁ…」
担任も流石に困惑してる。そりゃこんな理由だとは思わないわな。
「ま、麻衣…嬉しいけどあんまり大声で秘密言わない方が…」
立花も心配して春川に声をかける。しかし興奮さめやらない様子で
「良いの!だってこんな秘密でみーちゃんの将来を絶対壊したくない!壊すぐらいなら秘密なんて全校生徒の前でだって私は言うよ!だってみーちゃんの方がずっとずーっと大事だから!!」
「はるちゃん…」
二人とも見つめあって感動してるんだろう。立花なんて、多分春川の事を昔の呼び方で呼んじゃってるみたいだしな。
「ん゛ん゛っ!…先生、わかって貰えましたか?これでイジメがあったとは言えませんよね?」
しっかり担任の目を見て話を詰める委員長。担任も八方塞がりだろう。ここは諦めた様だ。
「そうだな…イジメは勘違いだったんだろう…」
はあ…一番説明が難しい問題が解決した。立花と春川は二人で抱き合いながら泣いている。立花は春川の友情が嬉しくて春川の胸に顔を埋めながら頭を撫でられてる。普段とは逆の様相だ。
春川は、普段抱き付いたりしてこない立花が顔を自分の胸に埋めて泣いているのが余程嬉しいのか、先程とは打って変わって鼻の穴をフンスッ!と広げて満足気に頭を撫でてる。ブレねえな。
後は友達料金だけだ。
「それで、最後は…恐喝でしたっけ?先生はどの様に行われたと聞いてるんですか?」
ここも、とりあえず委員長が探りを入れる。もしかしたら友達料金とは別の事で言われてる可能性も…ほぼ無いだろうけど。
「男子生徒から金を巻き上げたと聞いている…そこに居る田中だとも」
またもや当事者が居るから、面倒だと言わんばかりにこちらを見ながら話す担任教師。
「そうですか。じゃあまずは説明ですね…」
担任はどんな説明があるんだ?言い逃れは出来ないぞ?とでも言うような雰囲気でこちらを睨み付けてくる。まあまあ、そう焦るなよ、くそ教師。
「それじゃあ田中君?説明よろしく」
ここの説明は俺がする事になってる。何たって当事者だしな。
「えっとですね、立花にお金を巻き上げられたって話ですけど…」
穴が空く程こちらをじっと見つめるくそ教師。今回の山場は春川のイジメ問題だったと思う。
立花と春川の関係性は高校に入る前から、ああ言う関係性だったみたいだし、目撃してる人も多い。
目撃者で言えば屑とアホ面の方もだが、これは向こうが悪いし謝罪にも来てる。何なら真面目吉田に証言して貰えばって最後の切り札もあった。
イジメ問題はある程度委員長がくそ教師に話してから春川に自分でイジメでは無いと言って貰う予定だった。まあ春川が暴走して、秘密まで暴露したのには焦ったが、結果オーライって感じかな?
それに、くそ教師が言った様に無理矢理連れてこられて無いと言う説明が難しかったかもしれない。でもあの様子だと、そこまで言ってたら同じ様に春川が暴露して終わりだったかな?
そして、今回の俺の問題、友達料金の話だ。これはさっきの二つと違って目撃者が誰も居ない。俺と立花が話してた部屋に誰か隠れて見てたなら別だがそんな変態は…居るとしたら春川位か?
なので誰かに証言して貰うとか、否定して貰う事は出来ないだろう。そうなると…だ、どうやってくそ教師を説得するかって話だが、こいつは、はなから立花を貶めるためにやってるんじゃないか?って皆で考えた。
それなら証拠も何も無いとなると、結局難癖をつけて立花への推薦を取り消しにかかるんじゃないのか?って皆で話し合う中で意見が一致した。
じゃあ友達料金の事はどうするんだ?となった時にタクの一言でこれで良いだろと、あっさり決まった。それは──
「お金なんて渡してませんよ?」
秘技──しらばっくれる!!
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