第44話

「みんなすまんな遅れて!お詫びに飲み物買ってきたから飲んでくれ!」


 そう良いながら自分が一番に飲むのはどうなんだ?タク。


「それで、俺とタクが付き合ってると思ったってどう言う事だよ委員長」


 ブフォーー!


「きったねえ!何してんだよタク」


 タクが飲んでた飲み物を噴き出しやがった。


「げほげほっ…お、お前いきなりなんて事言ってんだよ!」


「いや!これは委員長が言ってたことで俺は聞き返しただけだ」


「タイミングを考えろよタイミングを!」


「おう、すまんすまん」


 委員長の方を見るとこちらを爛々とした目で見ている。


「そう!そう言う所よ!二人だけの世界をいきなり作り初めて、誰も入れない様な息の合った所!これはもう……相当深い関係じゃないとおかしいでしょう!」


「なんでそうなんだよ、普通に喋ってるだけだろ」


 理解が出来ん。


「だって!田中君ってあんまり友達居ないのに!川島君だけには沢山喋るじゃない!川島君も川島君で田中君に邪険にされてもずっと話し掛けてるし!この頃タクなんて呼び初めるから!!捗って捗って!!」


 だめだ、こいつ腐ってやがる!!


「ふぅ、ごめんなさいちょっと興奮し過ぎたみたい。でもね、この頃一緒に勉強して二人がただの友達なのは、流石に分かったから私の勘違いだったって事よ」


「ま、まあ分かったなら良いが」


 タクも若干怯えながら返事をしてる。


「でも!!!別に私の中でも妄想するだけなら自由よね!!この頃は逢坂君も入ってきて三角関係が進んじゃって!!あぁ!どうしよう!止まらないわ!!」


 タクと王子にアイコンタクトをする。

 こいつに王子の秘密は絶対言わないでおこう。ろくなことにならんだろ。


「でね!田中君が素っ気ない態度を取るから川島君か逢坂君の方に行っちゃって!そこで気が付くの!『俺にはタクが……!』みたいな!キャー!!」


 ふと、王子の方を見ると微妙な顔をしてる。

 まあそうか、気持ちよくは無いよなぁ。


「王子、大丈夫か?あれなら止めさせるけど」


「ありがとうコウ、別にそんなに気にしてないよ。早川さんみたいに面と向かって話される事が無いからびっくりしただけで、ああいう話は結構昔から聞いてたしね」


 そうか、王子ならそんな事を言われる事も経験済みか。良いのやら悪いのやら…。


「みんなーごめーん!遅れたー!」


 そんな話をしてると立花の声が聞こえて来た。どうも春川は引っ張られながらこちらに走ってきてる。大体分かるが多分春川のせいだろう遅刻は。


「ごめーん!麻衣が中々起きなくて!急いで準備させたんだけど!」


「ご、ごめんなさい…」


 ほらな、大体わかってきたわ。

 立花も大変だなぁ。

 ふと立花を見ると、あれ?



 心臓がドキリと跳ねる──



 立花ってこんなに可愛かったか?

 私服を見るのは初めてだが、あれ?立花とどうやって話してたっけ。


「おーす!コウ!ごめんね遅れて!王子達も!後でなんか奢るからさあ!」


「あはは、別に美咲が悪い訳じゃないだろ?みんなも気にしてないよ。ねえ?」


「そーだな!てか、俺も遅れてきたし!」


「私はどちらでも構わないわ」


「あ、あぁ……」


 立花を直視出来ない……なんだ?俺はどうしちまったんだ。


「ねーコウ?やっぱ怒ってる?」


 立花が下から覗いてくる。


「うおっと!」


 思わず反射的に避けてしまった。

 くそ!なんだよ!どうなってんだ。


「なんだよーそんな避けなくても良いじゃんかー!ほら!麻衣も謝ってよ!コウが怒っちゃったじゃんか!」


「ごめんなさい田中くん…」


「いや、別に怒ってないから。ちょっとびっくりした…だけなんだ本当に」


「そう?なら良かった!じゃあ買い出し行こっか!」


 安心した様に笑う立花。

 立花を再度見る。やっぱり何時もより何倍も可愛い気がする。


「まずは水着からっしょ!男達は適当に選んできてーあたし達の水着は当日のお楽しみ!ってことで!」


「そうだね、楽しみは後に取っておこうかな。二人共、選びに行こうか水着」


「おーう!まあ男の水着何て何でも良いだろ!」


「あはは、じゃあ僕が選んであげるよ」


「おー!そうしてもらうか!王子のセンスに任せるぜ!」


 合流してから立花をチラチラ見てしまう。

 目が離せないと言うか何と言うか。


「コウ?行かないの?」


 王子の声で我に返る。


「あ、あぁすまん。今行く」


 そして俺達は水着を選んでもらった。

 やっぱり王子はセンスが良いんだろうな。

 俺が選ばなそうな柄を選んでた。

 あの、ドラゴンと虎が描いてある奴、格好いいと思ったんだがなぁ。

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