第45話
三人でワイワイ水着を選んでたら大分気持ちが落ち着いた。
さっきのは何だったんだ?
「さて、じゃあそろそろ美咲達の所に戻ろうか」
ある程度時間を潰して戻るのは流石に王子だな。女子が水着を選び終わる位で合流するんだろう。時間的には丁度良いんじゃないか?
「おーい!こっちこっち!」
立花がまた手をブンブン振ってる。
……………あれ?やっぱり可愛い。
これは私服効果か?
「お待たせ、待った?」
「いいえ、私達も今買い終わった所よ」
王子と委員長がそんな会話をしてる横でまた俺は立花から目が離せなくなっていた。
「なーによコウ!あっ!水着がどんなのか気になるんでしょ!教えなーい!海までのお楽しみだからね!」
無邪気に笑う立花。
表情は何時もの立花だよな?
「コウ?どうしたの?朝から何か変だよ?」
立花がいきなり可愛くなったからだとは流石に言えない。
「いや、すまん。なんかぼーっとしてたみたいだ。もう大丈夫」
こんなことでみんなに迷惑は掛けられない。
「まじで!?熱中症とかじゃないの!?」
そう言いながら立花がデコに手を当ててくる。
「ちょっと熱いかも!休めるところあるかな!?あたし達が待たせ過ぎたせい?ほら!顔も赤くなってる!!」
体が熱くなるのが分かる。
「いや、あの」
言葉が出ない。
「美咲、僕がコウの事見てるから先に行ってて良いよ」
さっと俺と立花の間に入ってくる王子。
「え?でも、あたし達のせいじゃん?あたしが面倒みるよー」
あの、立花さん。貴方のお陰で顔が熱くなってます。
「大丈夫だから、先に行ってて?ね?わかった?コウも大丈夫でしょ?」
「あぁ王子、頼むわ」
子供に諭す様に立花に話し掛ける王子。
とりあえず王子が割って入ってくれたから大分収まった?かな。
「うーん、何かあったらすぐ連絡してよ!絶対だからね!すぐ駆けつけるから!」
「うん、じゃあ先に面白そうな物探してきといてよ」
「わかった!じゃあ先に行ってるよ。コウも無理しないでね?」
「ありがとう立花」
立花達の背中を見ながら王子が
「コウ、あそこのベンチで少し休もうか。僕もちょっと疲れちゃったよ」
王子の気遣いがありがたい。
「ありがとう王子、助かったわ」
「ん?何の事かな?僕はただ親友の看病をしてるだけだよ?」
ニコリと笑いながらこちらを向く王子。
今はそれがありがたい。
しばらく時間が経ち──
「もう大丈夫そう?」
「おう、もう大丈夫だ。行こうぜ!」
「そっか、じゃあ皆と合流しよう」
結局王子はなにも聞かずにただ横で喋ってただけだった。
これがモテる男のやり方かぁ。
ただ今は俺も混乱してるからその気遣いに感謝しかない。
「あ!こっちこっち!」
立花が俺と王子を見つけたのか大声で呼んでいる。
「どう?コウ大丈夫?」
「あぁ、大丈夫。心配掛けたな、みんな」
ふぅー何とか落ち着いた。
立花を前にしても挙動不審になったりはしてないと思う。
「コウが具合悪くなるなんて珍しいな!昨日楽しみで眠れなかったのかよ!」
タクが茶化してくる。
「んー何でだろうな?ちゃんとぐっすり寝たんだけどな」
タクにはとぼけたが理由は、まあ俺の問題だ。
「私はあんまり眠れなかったよ…」
「そのせいで遅刻したんじゃーん!まったく!」
春川は楽しみで眠れなかったのか?
立花、いつもご苦労様です。
「あ!そうだ!海でさ、皆で花火しよって話になったんだけど、二人はどう思う?」
「花火?僕は良いと思うけどやっても良いのかな?そこだけ確認しないとね?」
「俺も良いと思うぞ。青春っぽいしな」
俺達の賛同が得られたからか、少し不安げな顔から花が咲いたような笑顔に変わる。
「だよねだよね!王子とコウなら分かると思ったんだよ!」
「はは、良かったな立花。っと、次はなに買いに行くんだ?」
うん、普通に振る舞えてる………はず。
「えっとねー」
それから、皆で色々見て回り結構な量の買い物をした。中にはこんなもんいるのか?って物まであったが、大体立花が『これはいるから!』の一声で購入していった。
時刻は夕方──
「うーん!みんなお疲れ!色々買ったなー今日は!」
「そうね、でも立花さん?あれは完全にプライベート用の買い物じゃ無いの?」
立花と委員長が話してるが止まらないで先に進んで欲しい。
立花が多分プライベートで買った服なんかは俺が持たされてる。
「えー!夏に着るから大丈夫でしょ!」
「まあ…そうね。私も少し買ったし」
ちゃっかり委員長も春川も買ってたしな。
俺とタクが持ってるけど…。
「よし、今日はこの辺で解散しようか。美咲達は迎えが来るんだって?」
迎え?まあこの荷物を持って帰るのは流石にきついよなぁ。
「そうだね、パパが迎えに着てくれるってさーだから麻衣と委員長は一緒に送っていくよー」
あぁ、お父さんか、娘を持つと大変だな、父親は。
「そっか、じゃあ美咲パパによろしく、こっちは三人で帰るよ。それじゃあまた学校で」
「そうだな、じゃあなー!」
王子とタクが三人に挨拶してる。
俺は…
ふと、立花を見ると夕日に照らされた髪の隙間から光が漏れだして立花を照らしている。
───あぁ、だめだ……
この日俺は君に──立花美咲に
恋をした。
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