第46話

 ボフンッ


「はぁーつっかれたあ!」


 俺は自室のベッドに倒れ込む。

 今日は自分でも考えられない様な事が起こって頭がパンクしそうだ。


「しっかし、ねえ……」


 今日の事を一人考える。

 どうも俺は立花を好きになったみたいだ。

 みたいだ、はおかしいな。

 完全に好きだ。


 自分でも驚くが認めてしまえば元々好意は寄せてたし、そうなっても不思議ではない感じがする。


 でもなぁ俺と立花が?どうにかなるって?……ならねえだろ。

 片やモデルもやってる美人で、頭も良くて性格まで良いんだぞ?


 それに引き換え陰キャで勉強はそこそこ、顔はモブ顔性格はそこまで悪いとは思ってないが別段良くもない。



 あーだめだろ。釣り合い取れてねーよ。

 しかし、気持ちに気が付いてしまったからには無視するのも俺には無理だ。


 じゃあどうするんだよ。告白でもすんのか?100%失敗すんだろ。

 そして友情も終わって立花との関係も終了?

 どうすりゃ良いんだよ。


「コウちゃーん!ご飯出来たわよー」


 母さんの呼ぶ声がする。

 なるほど思春期になると何にもないのにイライラするってのが少し分かった気がする。

 だからと言って母さんに当たるつもりはないが……。


「今行くよー」






「行ってきまーす」


「はい、気を付けてね」


 何時ものように家をでる。

 はあー好きになるってこんなに憂鬱なのか?全国の思春期高校生は、いつもこんな感じで叶わない好きをどうやって受け入れてるんだよ。


 そんな事を考えながら学校へ向かう。

 しかし、立花に学校で会っても平静を保てるか?昨日は時間があったから慣れたが、いきなり会って可愛すぎて固まるとか、キモすぎるだろ。


「………ん?なんだあれ?」


 つい、声が出てしまう位異様な光景だった。

 少し先の登校中の集団に花が咲いてるんだ。

 意味がわからないだろ?俺もだ。


 その集団に近付いて行くと見慣れた姿があった。というか、立花だ。立花の回りに花が咲いてた。


「あのー立花?」


 くるりと振り返り俺を見てニコリと笑う。


「おはよー!コウ!昨日楽しかったねー。色々買ったし楽しみだなぁ海!」


「お、おう、楽しみだな。テストも近いし頑張らんとな、俺は」


 いや、まあそうだよな。実際に花が咲いてる訳じゃ無い。漫画なんかでヒロインの回りがキラキラしてるのと同じって事か?


 しかし、立花と一言会話しただけで朝の憂鬱が嘘のように心が晴れる。

 なるほど、こうやって日々を乗り切るのか。

 好きってすげーな。


「えー!美咲達海行くの?何でうちら誘ってくれないんだよーてか、田中と行くの?楽しいの?」


 立花の取り巻きのAとBが何か言ってる。

 くそ、俺は楽しい自信はある。


「だって優衣達とは他でも遊ぶじゃーん。イツメンだし」


「まあそっかー田中でもたまになら面白いのかなぁ?」


 取り巻き達さぁ、俺に当たり強くない?


「あー!由実!おはよー」


 取り巻き達は言いたい放題言った後に他の女子に挨拶に行ったのかそのまま前へ走っていった。


「コウ、何かごめんね?悪気は多分無いと思うから」


 多分なんかーい。


「別に気にしてないから。でも何で誘わなかったんだよ?」


 別に誘っても良さそうとは俺も思った。


「えーコウは優衣達と海行きたかったの?」


 ちょっと口を膨らませてそう聞いてくる立花


「いやいや、俺は何時ものメンバーのが良かったよ」


 本当は立花が居れば良いんだが…


「ふーん!本当かなぁ優衣おっぱいおっきいしなぁ水着見たかったんでしょー!」


 コラ!通学中におっぱいとか言うなよ!

 童貞だから恥ずかしいだろ!


「ち、ち、ちげーし!立花が居れば俺はそれで良いし!」


 咄嗟に喋ってたハッと思った、俺は何言ってんだよ…


「へ、へー!あたしが居れば?ふーん」


 若干顔を赤らめる立花。ちなみに俺は若干どころか顔は真っ赤です。


「ま、まあ誘わなかったのは王子がねえ……やっぱり格好いいから、どうしてもさ」


「あーなるほど、王子も負担になるだろうしな?」


「そゆことー、王子と一緒に遊ぶと大体皆好きになっちゃうからねぇ。しょうがないとは思うけど!」


 モテるけど女子とは付き合わないだろうし

 そりゃ女子も王子も可哀想だよな。


「噂をすればーってやつ?」


 後ろを振り返りながら立花が話し掛けてくる。


「おはようコウ、美咲。何が噂をしたらなのかな?」


 今日もさわやかな王子が後ろにいた。


「んー王子がモテモテで大変だなーって話!」


「そうなの?でも、僕は好きな人にだけ好かれれば十分かなぁ」


「えー!あたしには好かれなくて良いって事なの!」


「なんでそうなるのさ、美咲の事は大切に思ってるよ?」


「えへへーあたしも王子の事大切な友達だと思ってる!」


「わ、私も!二人の事大切だからね!!」


 うお!何処に居たんだ春川。


 はあ…あんな風に大切に思ってるなんて、さらっと言えたら良いんだがなぁ。

 俺にはハードルが高い。


 俺が黙ってたのが気になったのか立花と王子が話し掛けてくる。


「ん?コウの事もちゃんと大切だって思ってるよ?」


 俺は大切以上に思ってるんだが。


「僕もだよコウ。僕達親友だしね?」


 王子!好き!


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