第58話

 その後は立花とも普通に屋台を回り皆で楽しんだ。


「ちょっと食べ物買いすぎたから、あそこのベンチで一回食べない?」


 皆あれが食べたいこれが食べたいと、好き勝手に買ったから結構な量になってしまった。王子の提案に皆頷きベンチで一休みする事に。


「あたしのりんご飴どこー」


「私はたこ焼きが食べたいのよ」


「俺の焼き鳥!!」


 もうわちゃわちゃで収集がつかん。


「取り敢えず一旦待てお前ら、まず立花からな、順番に配るから言っていけ」


 王子は何が嬉しいのかニコニコしてるし、大体こういう時は王子が仕切るんだけどな?


「あーたしはりんご飴!いちご飴も合ったよね」


「ほれ、じゃあ次委員長な」


「私はたこ焼きだけで良いわ。ありがとう田中君」


 うんうん、お礼を言えて偉いな委員長!どうせなら、皆を纏めてくれると嬉しかったけど!


「よし!俺だな!俺は…」


「次春川な」


「なぁぁんでだよ!順番的に俺だろ!?」


「男はちょっと待て、どーせ量が多いんだから」


「はぁ…わかりました」


 肩を落として退くタクを委員長がキラリと見ている。これは何か妄想してます。怖い。


「んで春川はどーするよ?」


「ごめんね、川島くん。私はみーちゃんと一緒のりんご飴下さい」


 もうこいつ俺達の中でみーちゃんを隠す気ないな?


「ほれ、じゃあタクどれにすんだ?」


 漫画みたいにヨダレを滴しながら待ってたタクた声をかける。そこまでか?


「や、焼き鳥だろ!あとフランクフルト!それと…」


 やっぱりな?多いじゃねーか!


「これで良いか?王子、俺達も食おうぜ」


「うん、ありがとうコウ」


 王子と二人で座りながら食べる。


「そう言えば王子何でさっき纏めなかったんだ?いつもの王子なら真っ先にやるだろ?」


 王子はそれでもニコニコしながら


「いや、本当に嬉しくてさ、皆でお祭りに来て何にも気を遣わなくても、コウがやってくれるって思うとね?甘えちゃったのかな」


 何だよこいつ、かわいいじゃねーか!


「おうおう!王子にならいつでも甘えてもらって構わんね!後、立花との事ありがとな」


 王子が間に入ってくれなかったらあのまま微妙な雰囲気のままだったと思うと…。


「全然、僕もあのままじゃ楽しくないしね?」


 そんな話をしていると…


「せんぱーい!」


 向こうの方から静原さんが走ってくる。


「先輩!また会いましたね!」


 また会いましたねって、めっちゃ走ってきてましたけど。


「そうだね、静原さん達は楽しんでる?」


 そう聞くと少し困り顔で


「実は友達とはぐれちゃって…少しここで待ってても良いですか?」


「あーそうなんだ、別に良いよな?王子…」


 あれ?王子が居ない。知らない間にどっかに行ったみたいだ。


「それじゃあ失礼して!」


 すげーぴったりくっつくじゃん!童貞舐めんなよ。距離を開けようと少し離れるとまた寄ってくる。何ですかこれー!


「先輩、なに食べてるんですか?美味しそうですね?」


「ああ、さっきそこの屋台で買ったたこ焼きだけど…食べるなら新しいのが…」


「新しいのなんて勿体無いですよ!そ、その先輩が食べてるので…」


 そして口を開けて待ってる静原さん。え?これってあーんってやつ?俺がやんの?

 そこで、横から手が伸びてくる。新しいたこ焼きを静原さんの口に突っ込む。


 そこには立花が居た。何だか満足気な表情で立っている。


「……あの、私は先輩が食べたのが」


「コウ!あたしのりんご飴食べたいよね?ほら!あーん」


「え?でもそれ立花のたべか…」


「食べたいよね!あーーーん!」


「はい、あーん」


 りんご飴は少し甘酸っぱかった。俺に、りんご飴を食べさせて満足したかと思ったら立花もぴったり横に座ってくる。何だかこの状況、


「先輩…えっとこちらの方は?」


「あぁ、こっちは同じクラスの立花で、立花こっちは前話した静原さんだ」


「どうも!あたしの大事なコウがお世話になってます!」


「……よろしくお願いします。立花先輩」


 俺って立花の大事な存在なんだ。嬉しい。


「先輩、私ちょっと疲れちゃいました…」


 そう言いながら俺に寄りかかってくる静原さん。やめて!童貞のHPはゼロよ!


「あ!コウ、あたしも疲れたなー!」


 なんか、立花まで俺に体を押し付けてくる。あの…二人共お、お胸が…。


 向こうではタクが血涙を流しながら


「なんであいつだけえええ!!」


 って叫んでるけど、俺はどうしたら良いのかわからん、マジで。


「さくちゃーん!」


 どうやら静原さんの友達が着いたみたいだ。助かった。


「……チッ」


 あれ?今舌打ちしませんでした?


「先輩、友達が来たみたいなので失礼します。立花先輩も、次は……」


 次は、の後は立花の耳元で言ってたから良く聞こえなかったけど多分次は一緒に遊びましょうとかだろ!きっと!


「あ、あの立花さん?そろそろ離れても良いんじゃないですか?」


 顔を赤くして立花に声をかける。だって色々限界なんだもん!


「ん?別に良いじゃん?……あれー?コウもしかして興奮してるー?」


 こいつ、わかってて言ってるな?


「あぁめっちゃ興奮してる。そろそろ手が出そうだ」


「ば、ばっか!もう!変態!」


 バッと飛び退いて春川達の方へ向かう立花。何とか助かった…。





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