第57話
「お待たせ」
今日は、前回話してた王子の家の近くの夏祭りに来てる。待ち合わせ場所にはタクと委員長が既に待っていた。
「おーう、後は…王子達か、まあ王子が迎えに行ってるから心配ないだろ」
前回の春川の遅刻を踏まえて、王子が立花と春川を迎えに行ってる。幼馴染とは言え大変ですなぁ。
「おーいみんなー」
横断歩道の向こうから王子の声がする。そちらを見ると歪み姿の王子達がこちらに手を振っている。
「お、王子達来たか。しっかしなに着ても似合うなぁあいつらは」
俺とタクとは違い着こなしてる感じが凄い出てる…俺達は着せられてる感満載なのにな?
「おまたせ! 今日は遅れなかったかな? 王子のお陰だけど! 」
いつもの明るい立花だ。海に遊びに行った日の一件でもしかしたら俺の事を怖がってるかも何て思ってたけど、杞憂だったかな?
「おつーコウ、浴衣似合ってるね。筋肉が程よく分かるのが良いよね」
「そうか?まあ似合ってるって言われるなら嬉しいよ。ありがとう」
似合ってるなんて言われると思ってなかったから若干ぶっきらぼうに返信をしてしまった。俺のバカ!
「あれ?田中先輩じゃないですか!?わぁ~
会えると思ってなかったです!」
俺を呼ぶ声がして振り返るとそこには…静原さんだ……まじかよ。
静原さんが家の前に居た一件から、ちょくちょく連絡を取り合ってる。連絡と言っても本当に他愛もない話だけど。
でも確か、静原さんには夏祭りに行くとは言った気がする……本当に偶然か?俺の自意識過剰か?
「あぁ、静原さんこんばんは。静原さんも夏祭りに?」
軽くジャブを入れてみる。
「そうなんですよ!友達に誘われて……あっ!丁度来たみたいです!それじゃ先輩、私は友達の所に行きますね?お互い楽しみましょう!」
そう言いながら友達の方へ歩いていく静原さん……くっー!恥ずかしい!!何が偶然か?だよ!偶然だよバカ!
静原さんの方を見ると確かに友達と待ち合わせをしてたようで、三人程でニコニコしながら話してる。
「なになに?可愛い子だったじゃん?へーあんな子に先輩!なんて呼ばれてるんだぁ~ふーん」
あれ?立花さん何かちょっと怒ってません?
「ほら、前教室の前で待ってた子いただろ?あの子だよ。たまに連絡したりする位で…」
「ふーんへー!連絡したりしてるんだぁあたしには、あんましてくれないのにね?」
だって!好きな人に何て送ったら良いか分かんないんだよ!
「いやそれはだな…」
「べっつにー、良いけど?……王子ー!行こっか」
俺の言い訳も虚しく王子の腕をとって人混みに突入していく立花。
「ふーん!」
春川が俺の顔を見て、鼻で笑ってくる。くそ!こいつどんどん遠慮無くなってくるな!
「まあ、田中君には川島君がいるでしょ?」
そう言いながら俺を追い抜いていく委員長。委員長が言うタクがいるって……ちょっと考えたくないです。
「おし!俺達も行こうぜ」
タクに引っ張られて人混みに突入する。そんな俺達を輝く瞳で見詰める委員長。やっぱりな?
その後はぶらぶらと屋台を皆で楽しく回った。その間立花は、あんまりこっちを見てくれない。はぁ…。
「田中先輩ー!やっと会えました!これ!焼きとうもろこし!とっても美味しかったのでどうぞ!」
ぶらぶらしていたら静原さんにまた会いました。今回は焼きとうもろこしを何本か貰ってタクや他の皆とで美味しく頂いた。
こんな風なら別に気にならなかったのかな?俺が神経質過ぎたのかも知れないけど。
「コウ、こっち来て?」
何だ?立花が屋台の裏?ぽい所に俺を呼ぶ。心なしか元気がない、どうしたんだ?
「コウあのさ……ごめんなさい!」
「ん?何かあったのか?」
立花に謝られる様なことあったかな?
「今日さ、あたし態度悪かったでしょ?」
「態度が悪いってか、目は合わなかったかな?避けられてんのかなとは思ったが」
「なんか、避けてた訳じゃ無いんだけど、コウが後輩ちゃんと楽しそうに話してるの見たらモヤモヤして…自分でも分かんないんだけど…」
「んでごめんなさい?何で急に?そりゃ俺だって立花とは楽しく回りたいけどさ」
「うんとね、王子がさ『本当にこのままで良いの?夏祭りを楽しい思い出にするなら今だよ?』って言ってくれて…あたしが勝手に怒ってさ意味分かんないじゃん?コウからしたら、だからちゃんと謝ろうって…」
王子…お前本当にかっけーわ。
「まあ、あれだ!俺もこの前の海でやらかしただろ?これでお互い様って事でこの後は楽しもうぜ」
そう言うと立花の顔がパッと明るくなり
「うん、うん!楽しも!」
俺の腕を引いて王子達の待つ場所まで引っ張っていく。この笑顔の為なら俺は何だって出来そうだ。
「でも何でだろ?コウの事で怒っちゃったの。別にコウが後輩ちゃんと喋っててもあたしには関係無いのにね?」
も、もしかして、やきもちか!?
「コウとはずーっと仲の良い"友達"なのにね?」
「あぁ…そうだな…」
ずーっと友達だそうです。昇格はないですかね?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます