第56話

「ごめんねコウ…僕がトイレに行ってる間に…皆を待ってから行けば良かった」


 申し訳なさそうに謝る王子。


「違うの、あたしが一人で大丈夫だから行ってきてって言ったから…」


「まーまー御二人さん!結局はコウが撃退して無事だったんだろ? それなら取り敢えずは良いんじゃねーの? 」


「そうね、私達が買ってきた焼きそばも冷めてしまうわ。食べましょうよ」


 タクと委員長が空気を察してフォローしてくれる。


「いや、俺も何か熱くなりすぎたわ、すまんな皆驚かせて」


「本当だぜお前!飲み物よこせ!焼きそば食うぞー!」


 その後は何とか空気も元に戻り皆でワイワイ焼きそばを食べた。やっぱり微妙な味だったけどな。



 飯も食い終わって荷物番は俺と立花が見ていることになった。



「コウ…さっきはありがとね、正直ちょっと怖くてさ、おっきな声あげちゃって、コウが来てくれて凄い安心した」


「そっか、俺は女友達なんて出来たこと無かったから、テンパって力の加減とか色々分かんなかったわ…ごめんな」


 いきなり間に入ってきてあんな顔して…怖いよなあー失敗した。


「いや、コウが怖かった訳じゃないよ!男に腕掴まれた時に中学の時の事思い出しちゃって、でも!コウが何かあったら守ってくれるって言ってくれてたし…本当に飛んできて守ってくれて…嬉しかったよ?」


 そうか、俺は怖がられて無かったのか、良かった。


「当たり前だろ?俺達友達何だから何時でも頼れよ」


「そっか…友達…だもんね?でも!友達にもお礼はしないとなぁ、何かして欲しいことある?コウ」



「うーんして欲しいことなぁ…」


 そりゃあ色々あるがここで言うべきでは無いのは俺でもわかる。男子高校生の欲望なめんなよ。


 そんな事を考えてると立花が隣に寄ってきて耳元で囁く。


「あのね…何でも良いよ?」


 バッ!と立花の方を見ると顔が真っ赤だ。えぇ…良いんですか!?


「うっそー!何でもはダメでーす!」


「いや、だ、ダメなのは知ってたし!てかそんな事頼まないし!」


 あわあわと慌ててしまう自分がなんとも…からかわれてるなぁ。


「そーだ!今度から揚げ作ってあげるよ!それがお礼って事でどう?」


「から揚げかぁ立花のから揚げ食べてみたいしお願いしようかな?」


 お礼に立花の手作りから揚げ、最高です。


「わかった!じゃあ何時にする?」


「俺は何時でも良いけど、何処で受け取れば良いんだ?立花に家までから揚げだけの為に来てもらうのも申し訳無い」


 この暑い中でから揚げ持ってこさせるなんていくらお礼でもなぁ。


「へ?うちに来れば良いじゃん?てか、あたしはそのつもりだったんだけど…?」


 な、なんですと!?うちって立花の家って事か!?ま、まだ早くないか?


「め、迷惑じゃ無いか?」


「んー?別に迷惑じゃ無いと思うけど…王子とかも良く遊びに来るし、ママも弟と妹もいるから、逆にコウに迷惑掛かるかも?」


「俺は全然迷惑じゃないぞ!何なら毎日通いたい位だ!」


「あはは!毎日はうちが迷惑でーす」


 まあ、王子も良く遊びに来てるって言うし大丈夫だよな?お、お土産とかいるんかな…。


「おーい、そろそろ交代しよーぜ! 」


「もう結局時間経ってたんだ!コウと一緒だと時間過ぎるの速すぎ!よーし遊ぶぞー! コウ早く行こう!」


「おう!じゃあタク、荷物頼むな」


「任せとけー荷物番の王に俺はなる!」





「ふぅー遊んだ遊んだ!こんなに遊んだの超久しぶり!楽しかったー」


 立花は大満足の様で今もニヤニヤしながら話してる。


「そうだね、僕も久しぶりにしっかり遊んだ気がするよ」


「俺はいつもと変わらずだな!兄弟で結局来るしな海も」


 それにしては一番テンション高かった気がするんだか?タクよ。


「あらあら、疲れたのかしら?寝ちゃってるわ」


 春川は委員長の肩にコトリと頭を預けて寝ている。炎天下の中で1日動いたのは春川には少々きつかったのか。もう少し運動した方がいいなあいつは。


「俺は…」


 俺は反省だな。立花が絡むとあんなに自制が効かないとは思わなかった。これでも自分ではアンガーマネージメントは、しっかり出来てると思ってたしな。


 それが、立花の腕を掴まれいる所を見ただけで感情が止まらなくなってしまった。はぁこんなことしてちゃ、プロ格闘家なんて夢のまた夢じゃないのか?


「俺はなんだよ?コウ」


 いかん、考え込んでしまった。タクの言葉ではっと意識が思考から戻る。


「俺は…俺も楽しかったよ」


 こんなところで俺の反省なんて聞いても何にも面白くないだろうし、盛り下がるしな。


「そーかそーか、それは良かった」


 タクは俺が考えてた事がわかるのか、ジト目でこっちを見てくる。だってわかるだろ?タク。


「さて!次は皆でどこ行く?お祭りとか良いよねー!」


 立花はもう次の予定を決めようとしてる。元気なことで。


「僕の家の近くで確かお祭り合ったからそことか良いんじゃない?」


 皆で帰り道にワイワイ盛り上がる。


 今日は色々あったが、これぞ青春だな!!






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