第34話

「はぁー終わった終わった」


 今日の授業が終わった。

 この後は立花達と勉強会だな。


「おつーコウ、何かね麻衣がちょっと遅れるんだってさー」


「そっか、どうするよ?時間遅らせるか?」


 俺は遅らせても全然良いが。


「時間勿体ないし先に始めててって麻衣は言ってた。麻衣の事は王子が一緒に来るから心配いらないってさ」


 気配りも出来るイケメンだな。


「そっか、じゃあ俺は帰って待ってるわ」


「おっけー!あたしも一回家寄ってすぐ行くね」


 カバンを持って教室から出ようとした立花が、振り返って笑いながら


「そーだ!えっちなやつとかあるなら隠しとけよーコウ!」


「ね、ねー……よ!」


「あはは!それなら大丈夫だね!また後でー!」


 まったく…何処に隠そうか…


「立花、すげえ明るくなったな。コウが色々やった甲斐があったんじゃないか?」


 タクが話し掛けてくる。


「そうだな、これから良い方向に向かえば俺は満足だ」


 立花にとっても春川にとっても。


「んじゃ俺はバイトあるから帰るわ、勉強会頑張ってなー」


「おう、補習は免れるようにするわ」


 ヒラヒラと手を振りながら教室を出ていくタク。

 あいつにもいつか話せれば良いけど…






「ただいま母さん。連絡した通り友達来るから」


「はい、お帰りコウちゃん。勉強頑張ってね」


「そうだ、今日来る一人が母さんのから揚げのレシピ知りたいって言ってたから良かったら教えてあげてよ」


 そんな事を立花が言ってたよな。


「あら?友達って女の子も来るのね。じゃあお母さんレシピ書いておくわ」


「ありがとう母さん」


 後は母さんに任せて俺は部屋を少し片付けるか。



 ふぅ、一通り片付いたかな。


「コウーお友達来たわよー」


 母さんの声が聞こえる。

 立花が来たのかな?


「今行くよー」


 とりあえず玄関まで迎えに行く。


 ガチャッ


「おすーコウ!来たよ」


「おう、まあ上がって」


 立花を家に招き入れる。


「あらあら!こんな可愛い子が遊びに着てくれるなんて。嬉しいわ」


 何か母さんのテンションが上がってる。


「お邪魔します。田中君と同じクラスの立花美咲です!今日は急にお邪魔してすいません!」


 挨拶ちゃんとしてんな!見た目ギャルだけど。


「いーえご丁寧にどうも、暑かったでしょう?飲み物出すから上がってね」


「ありがとうございます!コウの部屋は何処?」


「あー二階にあるから案内するよ」


 立花を先に二階に向かわせて母さんに飲み物をお願いする。


「母さん、飲み物用意出来たらごめんだけど呼んでもらって良い?取りに行くから」


「うん、用意出来たら呼ぶから」


「ありがと」


 立花の後を追って二階に上がる。


「外まじ暑かったー溶けるかと思ったよアセアセ」


「もう夏も始まるしな。あぁこっち」


 立花を部屋へ案内する。


「ここ?コウの部屋」


「そう、まあ入って」


 ドアを開けると立花も続いて入ってくる。


「男の人の部屋に入るの王子以外だと初めてだぁ」


「そうなのか、まぁ男友達居なかったからそりゃそうか」


 立花は部屋に入ると辺りを見回してる。


「あんまじろじろ見んなよ恥ずかしいだろ」


 女子を部屋に入れるなんて初めてでちょっと恥ずかしい…


「ふーんここがコウの部屋かぁ。あんま散らかって無いんだね。さてさて、えっちな物は何処かな?」


 こいつ部屋に入るなり変なもの探し始めやがって……だか残念だったな。お前の探し求める物は別の部屋に避難させてあるから見つからない!


「変なもん探してないで座っとけ」


「コウー飲み物取りに来てー」


 母さんの声がする。飲み物が準備出来たみたいだ。


「俺は飲み物取ってくるからあんま荒らすなよ?」


「はいはーい行ってらっしゃーい」


 こいつ行ってらっしゃいって言いながらまだ探してる……


 部屋を出て台所まで行くと母さんが飲み物を用意してくれてた。


「ありがと母さん。持っていくね」


「ねぇコウちゃん?あの子は……もしかして彼女?」


 母さんが興味津々で聞いてくる。

 まあいきなり連れてきたらそう思うかもな。


「いや、本当に友達だよ。それに後からもう二人来るしね」


 そう言うと少し残念な様子の母さんが


「そっかぁあんな可愛い子がコウちゃんの彼女になってくれたら良いのにねぇ」


 やめてくれ!母さん。相手は女王様だぞ。

 モブ顔に出る幕は無いんだ…


「ごめんねコウちゃん引き留めて、待たせちゃ悪いから早く行ってあげてね」


「あぁ、後から人来たら呼んでよ」


 ちょっと立花待たせたかな。

 急いで部屋に戻る。


「立花ーちょっと待たせた、すまんなー」


 待たせた事を謝りながら部屋へ入ると……


「ふっふっふっ!」


 本を手に持ってポーズを決めてる立花が…!

 くそ!あれを忘れてた!




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る