第33話

 さて、春川も帰って来た。


「お待たせみー、美咲ちゃん」


 思いっきりみーちゃんって呼ぼうとしてたな。


「はいお帰りーありがと」


 パンを受け取った立花は何やらスマホをいじってる。

 その姿を見ていた俺に立花が話しかけてきた。


「あーこれね、一応メモ付けてんの。いくら返したか分かるようにね~」


 そう言いながらスマホを見せてくる立花。

 画面綺麗だな。ギャルはスマホの画面バリバリなのかと思ってた。

 完全に偏見だか。


「あーそう言う事か、流石に毎回買いに行く訳じゃ無いから分かんなくなるもんな」


 スマホにはいつ、いくら返したかが書き込まれてた。

 ちゃんとしてんだな。


「よし!たーべよ。麻衣もたべよー」


「うん!食べよ!」


 立花と春川の本当の関係はこんな感じ何だろう。春川は、笑顔でパンを頬張ってる。


「うんうん、良かった。僕も二人の事は心配してたからね」


 横を見ると自然に王子が席に座って弁当を食べてる。自然過ぎて全然気が付かなかった。


「そう言えばコウは期末の勉強はどうなの?もうすぐじゃん」


 グッ!嫌なことを聞いてくる…


「あんまり…自信はないな。補習だけは受けたくない…」


 立花も王子も成績はかなり良かった筈だ。

 美男美女で成績優秀…くっそぉ!!


「え!?補習なんて絶対ダメだよ!夏休み海行くんだから!」


 何だその俺が知らない夏休みの予定は。


「俺がその予定を知らないのは、何でだ?」


 そう言うと立花は驚いたような顔をした後


「………サ、サプラーイズ!ビックリした?」


 こいつ伝えるの忘れてただけだろ。


「でも、海は楽しみかもな。青春っぽいし」


 青春といえば海は欠かせないよなぁ。


「でっしょー!だから補習なんて絶対ダメ!何だったらあたし達が勉強教えるし!ねえ!王子!」


 立花が王子の方を見ながら話を振ってるが王子もビックリしてるが?


「あぁ、別に僕は良いよ。………そうだな。僕も海に連れていってくれるならね」


 ここでサラッとこんなことが言えるからモテるのか。勉強になります王子!


「海は元々王子も誘うつもりだったから全然問題なーし!どうする?コウ」


 うーん学年トップクラスの成績優秀者に教えて貰えるなら、ありがたいよな。


「じゃあ、お願いしても良いか?」


「よーし!じゃあ何処でやろっかー!スタバとかで良いかぁ」


 スタバで勉強……ちょっと今の俺にはハードルが……


「美咲ちゃん、私も行って良いよね?ね?」


 春川が立花に懇願するように話しかけてる。


「あたしじゃなくて、コウが良いなら良いんじゃない?」


「私達友達だよね!田中君!良いよね!」


 こいつ秘密暴露してから距離近くねーか。


「別に良いだろそれは。後さ、もし良かったら家で勉強しねぇ?」


 家に友達呼んで勉強会……憧れです。


「へ?良いの?じゃあコウの家で良いよね。コウのお母さん居るかなぁ。から揚げのレシピ教えてほしー!」


 立花はノリノリだ。


「僕も男友達の家に行くの初めてだ。楽しみだなぁ」


 本当に楽しみそうな王子。

 あんまりにもかっこ良すぎて男友達居ないのかもしれない。


「じゃあ家でってことで連絡入れとくわ。場所はアプリで送っとく。」


「コウくん、連絡先交換しようよ。インスタやってる?」


 やってねーよ!そんなおしゃれアプリ。


「いや、やってない。LINEで良いか?」


「あぁ全然良いよ」




 そして、昼飯を食べ終わると


「じゃあ僕は教室に戻るね。コウくん勉強会楽しみにしてるから」


 にっこり笑いながらそんな事を言う王子。

 俺が女の子なら絶対惚れてます。


「じゃあ、あたし王子教室まで送ってくるね!ありがと王子!心配してきてくれて」


 そう言いながら王子と一緒に教室を出て行こうとする立花。


「ま、まって美咲ちゃん!私も行くから!」


 春川は置いていかれたく無いのか急いで追いかける。


「ははは、両手に花だね。嬉しいな」


 俺もそんなセリフ嫌味無く言ってみたいぜ。

 三人で教室を出ていくとタクが近付いてきた。


「おいおい、何でロイアルペアと仲良くなってんだよ」


 なんだ?ロイアルペアって。


「ロイアルペア?新しいブランドか?」


「あーコウは知らねーか。逢坂は王子だろ?で、立花は女王って呼ばれてるからロイアル。んで二人は付き合ってるって噂もあるからそんな名前が付いたみたいだな」


 ほーロイアルペアねぇ。

 俺と山田の名前地味コンビを考えた奴には見習って欲しいセンスだな。


「立花と友達になったから、様子見に来たらしい」


 タクにそう伝えると


「あー付き合ってるかは知らんが仲が良いのは本当なんだろうな。それでコウ、何か王子に言われたのか?」


 タクが興味津々に聞いてくる。


「いんや、顔面モブ顔だなって言われたのと一緒に勉強会しようって事になった位だな」


「はぁ?王子と勉強会って…女子が聞いたらボコボコにされてもおかしくないぞお前…」


 そんな物騒な女子高生はおらんだろ。


「でも王子に女子が惚れる気持ちは分かるかもな、あんな顔で優しくされたらそりゃあ…なあ?」


 タクの方を見ると悲壮感漂う顔で


「くそ……理不尽だろ……!せめてあんな顔なら性格位悪く有ってくれよ……!」


 感情が籠ってるな。


「俺はモブ顔だって言われたんだぞ。悪口だろ?」


 モブ顔を良い意味で捉えられる程俺はポジティブじゃない。


「……?間違ってないだろ」


 心底不思議そうな顔で言ってくるタクに最早怒りも沸いてこない……。


「ソウデスネ……ソノトオリデス」


 良く考えないでも、反論なんて出てこなかった。




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