第113話

「おー!まじであんのかよ」


 俺の黒歴史ミラーボールがリビングのテーブルに鎮座してる。なんとも因果なことだ。


「それじゃあ音楽流すねー王子は電気消してー」


 さあ!これからパリピパーティーの始まりだ!



 ──ただズンズンパリピっぽい音楽が響いてるリビング、お互いがお互いを見る。


 くっ!この状況で最初に飛び出すのは至難の技だ!しかし俺がやりたいって言った手前このままって訳にもいかない…よし!行くぞ!俺は思いきって皆の中央に出ようとした時


「ふっーーう!今夜は寝かせないぜぇ!!」


 古いタイプの陽キャでタクが踊りだしたり。


「ぶはぁ!なにそれ!古っ!」


 立花が突然の古陽キャの登場に噴いている。ここしかない!


「よっしゃあー!ふぅーー!!」


 俺も負けじと腰をくねくねさせながら踊りだす。確か俺が見た陽キャはこんな感じで踊ってた筈!


 俺も踊りだした事で王子も踊りだして立花もそれに続いてくる。委員長と春川も渋々といった感じで踊りだす。春川は左右に揺れてるだけだけど。


「あはははは!なんか楽しいね!」


「そーだな!なんかわからんが楽しくなってきた」


 なるほど、陽キャはこうやってあのテンションを保つのか。謎がひとつ解けた気がする。


 皆も踊ってるうちにテンションが上がってきたのか、大爆笑しながら踊ってる。これ知らない人が見たらヤバいパーティーだと思われそう。


 しばらく踊って俺の考えた陽キャパリピパーティーは終了した。皆一様に満足した表情をしている。


「踊った後の虚無感が凄いな」


 タクがポツリと漏らす。皆思ってても言わなかったのに!


「確かに、音楽が終わって静まり返ると余計にね」



 ……なんか微妙な空気になってしまった。さっきテンションが爆上がりしたせいで、普通のテンションでも低いように感じる。


 その時──


「あ、ああーの、喉乾かね?」


 っ!来た!バチバチに棒読みだが、これは合図だ!タクが喉乾いたって言ったらそこからコンビニへ買い出しに行く流れを作って俺と立花を二人にする作戦!


 まずここで王子が買い出しに行く事を後押しするって流れ。


「そうだね、僕も喉乾いたし買い出しに行く?」


 そしてここで俺が!


「そ、そ、そ、そうだな!ど、どうせならクジで決めようぜ!」


 全っ然タクの事を言えない程どもったが、このクジに王子が細工して俺と立花を二人っきりで買い出しに送り出すって完璧な作戦だ!


「オッケー…でも飲み物なら冷蔵庫になかったっけ?」


 くっ!痛いところを突いてくる!流石立花。


「そうね?でも私ジャスミンティーが飲みたいわ」


 ここで意外にも委員長が今家に無い飲み物を飲みたいと言い出す。珍しいな?そう思って委員長をチラリと見るとこちらに向かってウインクしてる。


 委員長!ありがとう!多分委員長がアシストしてくれたんだろう。友情を感じる。


「そう?じゃあ行こっかー」


 立花もそれで納得して買い出しに行くモードになったようだ。


「それじゃあ僕がクジ作ってくるから待っててね。行くのは…二人で良いかな?」


 うん!王子自然!誰も疑わないぜ!


「ソウダナ!ソレガイイ!」


 棒読みどころか日本語が不得意な人みたいになってるけど、ありがとうタク!モテないとか言ってごめんな!



「じゃーこれ!」


 順番も立花が最後に引くようにして、細工はばっちりのはず!


「じゃあ番号書いてある筈だから…」


 ちなみに俺は引いてるように見せかけてクジを引いていない!これで6は入ってないから必然的に6を選ばれる。


「まずは6番の人お願いね」


 よし!完璧!


「オーオレダ!ダレダロウナーアイテハ!」


 くそ、俺を見て委員長もタクも笑ってやがる!良いさ良いさ色々やってくれたしな。


「えっとじゃあ……1の人と行って貰おうかな?」


 よし!1が立花なんだな?うおおおし!気合いを入れろ俺!


 立花の方を見るが自分の紙を見てそのままニコニコしてるだけだ。あれ?


「あ、あの……俺が1だけど…」


 おずおずとタクが名乗り出る。え?王子?どういう事?ここに来ての裏切り!?


 そう思いながら王子の方を見ると、明らかに動揺してる。だってハッ!て顔してるもん。王子も実は緊張してたんだな。


「え、えっと…そのー…」


 歯切れの悪い王子!いや、まあ失敗したならしゃーなしだな。また後は機会はあるだろ。


「い、いててて、いてててて」


 そう思ってたら急にタクがお腹を押さえ始めた。


「は、腹が痛くなってきたんだが!だ、誰か代わりに行ってくれないか?買い出しに…」


 そう言うと、立花をチラチラ見てる。不自然すぎるよタク!でもありがとう!


「え?あたし?んー…別にいいけど?」


 あれ?もしかして普通に二人で買い出しに行こうって言えば良かったのか?クジなんて引かずに。


「た、助かる!俺はトイレに…」


 そしてトイレに消えていくタク。本当は痛くなんて無いだろうにすまぬ。


「大丈夫かな?川島?とりあえず行く?コウ」


「お、おう行こうか」


 こうして俺の青春が掛かった買い出しへと向かう。


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