第112話
「ごめんなさい、少し遅れたわ」
何時も通りお洒落な委員長が登場する。
「全然大丈夫。別にきっちり時間決めてた訳じゃないから」
俺はすかさず委員長に話し掛ける。春川との空気を壊してくれー!委員長ー!
「あら?麻衣ちゃん?どうしたの?」
委員長が春川の様子を察して話し掛ける。
「別になんでもないよ彩那ちゃん」
委員長には何でもない様に返す春川。呼び方がちゃんになってるが、あの騒動があった後女子三人の仲は急激に近付いたらしい。
「そう?じゃあ良いけど……そうだ!麻衣ちゃんこの前の新刊見た?」
「──っ!見た!すっごい良かったよね!」
「そうよねそうよね!やっぱり先生は天才よね!」
あーこれは同人誌ってやつか?なんだっけ…淫らな蝋燭先生だっけ…?しかし、春川は先程とは違いそりゃあもう生き生き喋ってる。今日だけは感謝します淫らな蝋燭先生。
「皆ー!出来たから運ぶの手伝ってー!」
キッチンから声が聞こえる。よし!から揚げの登場だ!
「美味しそうだね」
王子が盛り付けられたから揚げをみての第一声だ。そうだろう、そうだろう!
「だろ!まるで宝石の様な輝きで!一つ一つ輝いてるよな!綺麗な夜空を見ているようだぜ!」
うん、素晴らしい!匂いも良い!ハヤクタベタイ。
「もー!褒めすぎだって!嬉しいけどさ!」
俺の褒め言葉にちょっと照れながら立花が登場する。横には春川が勿論いるが、無表情でこちらにサムズアップしてる。これは良いんだ。
「それじゃあ、いただこうかな」
王子が箸を手に取りから揚げを掴みに行く。王子が箸で掴んだ瞬間にカリッと音がする。綺麗に揚がってる証拠だ。
大振りなから揚げを口に運ぶ。一口で食べきるには少し大きく半分程噛る。肉汁が溢れだして手で口元を押さえる王子。
何度が咀嚼していても、カリカリと小気味良い音がする程カラッと揚がってる。目を見開く王子。来るか!?踊るか!?!?
「うん!凄く美味しいね!」
ふ、普通だーーー!すっげえ普通!
「そうだろ?うめーよな!俺も食べよっと」
「私もいただくわ」
タクも委員長もすぐにから揚げに手を伸ばす。春川は既に食べてる。
「どうしたのコウ?食べないの?」
王子の普通過ぎるリアクションに唖然としてフリーズしてしまっていた。それを見た立花が心配そうに聞いてくる。
「い、いや食べるけど…王子のリアクションがあまりにも普通だったからビビってフリーズしてただけ」
「あー…そう言えばさっきも、買い出しの時もそんな事言ってたね」
立花は思い出したように話す。
「コウ、回りだしたり踊りだしたりするのは変な人だけだからね?僕達の前以外でやらないでね?」
王子が何か可哀想なものを見るような目線を向けてくる。
「お、おう?わかった」
周りもうんうん頷いてるから多分俺が間違ってるのか?一応暫定しとこう。
とりあえず、王子にから揚げ神のから揚げを食べさせて驚かせる事には成功したから、今回の作戦は成功って事で良いかな?
王子も美味しいねって良いながらばくばく食べてるし、タクや他の皆も…
「ちょ!俺の分のから揚げ!!」
いつの間にか、から揚げが凄く減ってた。
「大丈夫だって!まだ揚げればあるからね?」
立花が小さい子供を諭すように語りかけてくる。
「そうだよな!よし!俺もとりあえず食べよう」
この後滅茶苦茶から揚げ食べた。
時間も進み、外も暗くなってきた頃俺は考えてた。パリピパーティーって何だろう?
今は皆で映画を見ながらあーでもないこーでもないって喋りあってる。さっきは皆でゲームしてたしこれはパリピパーティーなの?
俺の考えてたパリピパーティーってプールが中から光っててプールサイドに料理とか飲み物が一杯あって、ズンズン音楽垂れ流しで踊り狂うってのを想像してたんだか…
「なに考え込んでるの?」
横に座ってる立花が小声で話し掛けてくる。一応映画見てるからね。
「なんかさ、俺の思ってたパリピパーティーと違って案外普通だなって」
俺も小声で返す。そうすると顔を近くに寄せるからね?
「そう?友達と遊ぶってこんな感じじゃない?コウの思うパリピパーティーってどんなの?」
「あープールサイドでピカピカ光る照明に照らされて料理とか飲み物が一杯置いてあって音楽がズンズン流れてて皆踊ってて……みたいな?」
少し恥ずかしいが素直に話す。だってイメージってこんな感じじゃない?でも改めて考えるとこれって悪魔を呼び出すサバトみたいだな。
「なにそれ……んふふ」
俺のパリピパーティーのイメージを聞いて密かに笑う立花。うーん可愛すぎないか?横顔が一枚の絵画のように完成されてるんだけど?
じっと立花を見てると少し何かを考え込んでる立花。なんだろ?
「じゃあさ、やってみる?コウの考えるパリピパーティー」
「へ?でもうちプールないし…」
「別にプール無くても音楽流して踊る位は出来るんじゃない?」
そうか?そうかも。
「それも青春なんじゃないの?コウは青春したいんでしょ?」
立花は俺が最初に言ってた青春したいってのを覚えててくれたらしい。
「……ちょっとやってみたくはある」
「よし!じゃあ映画終わったら皆に言って準備しよっ」
「なんだそれ?パリピパーティーへの偏見強すぎるだろ」
映画も見終わって皆に俺の脳内パリピパーティーのイメージを話す。そしてタクの第一声がこれです。
だって映画とか海外ドラマとかだとそんなんだろ!
「まあ良いんじゃない?やりたいんなら?」
王子は理解を示してくれる。さすが!委員長はどっちでもって感じで春川は…興味無さそう。
「まあとりあえず準備しよ?って言っても音楽流す位?」
「えー…やっぱピカピカ光る照明がないと盛り上がらないだろ」
偏見が強すぎるだろとか言っときながら一番雰囲気を大事にしてるだろタク。まあ照明なら任せろ。
「あるぜ?照明」
「はぁ!?なんでだよ」
そう、あれは某激安の殿堂に行った時だった。俺はそれを見て一目で気に入ると早速購入したんだ。部屋に置けるミラーボール型の照明を。
ゆっくりくるくる回って色んな色で光る照明を買えば、俺もパリピの仲間入りだと思ってたんだ、その時は。
いざ部屋に帰って電気を消して部屋の中央に置いてスイッチを入れると、そこはもうパリピ空間だった!これは凄い!としばらく回し続けたが、ふと思った。
なにやってんだ俺は?と、気が付いてはいけなかったんだ。くそ!俺の黒歴史が!!
「じゃあ持ってくるわ」
心の闇が今、解放されるかもしれない。
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