第92話
「それじゃあ、後はよろしくお願いしますね?」
王子と副会長との交渉?(脅迫)を終えてクラスメイト達の元まで戻る。
「いやー!委員長かっこ良かった!デキル女って感じ!」
さっきの委員長と副会長の交渉を聞いて、立花が興奮してる。確かにかっこ良かったが。
「しかし、貸しなんて作って大丈夫なのか?委員長」
無茶振りされたりしないのか?
「ええ、大丈夫よ。副会長はプライドは高いけど、仕事は出来るから、早々頼み事なんてしてこないわよ。それに本当に無茶な事頼んでくるなら、私には無理ですってちゃんと言うわ」
副会長の性格までちゃんと考えての交渉だったようだ。もう、委員長が生徒会長になれば良いんじゃねーの?
「そっか、なら良いけど」
少し急ぎ足でクラスまで帰る。ここからはスピードも大事だ。
「3組オッケーだって!ポップ書くから手伝って!」
開口一番立花がクラスに声を掛ける。その一言で統率の取れた軍隊のように動き始める。
「手の空いてる人は外で宣伝してきて!から揚げカレーにしたら、から揚げ安くなりますって!」
委員長も普段より声を張って喋ってる。委員長の声を聞いて何人かが、飛び出していった。うん、連携抜群。
それから暫くして、カレーを持ったお客さんが来店し始める。
「あのーカレー売ってる所で聞いたんですけど…」
最初は女子生徒が、から揚げを買いに来た。多分だか、王子が宣伝してくれたに違いない。何処かぽーっとしてる。
「はい!どうぞ!」
販売担当の生徒が待ってましたと言わんばかりにカレーにから揚げを乗せる。ありゃうめーわ。
それから、ぞろぞろとカレーを持った人々がこちらに向かって来るのが見えた。
「やばい!予想以上に人来てる!大丈夫か!?」
中の調理班に焦りながら声を掛ける。そちらを見ると、立花を筆頭にバシバシから揚げを揚げていた。それはもう、神がかって見えるほどに。
無言で腕だけ挙げてこちらに反応する立花達調理班。ワン○ースかよ。
そこからは、戦場だった。販売班は、ただカレーにから揚げを乗せるだけの機械になり。調理班は、から揚げを最高速で揚げる達人になり、外で列を整理してる接客班も人の多さにてんてこ舞いのようだ。
そして俺達雑用班は、そんな戦場を駆け回ってる。販売の手伝い、調理の手伝い、接客や整列の手伝いと、仕事は山ほどある。
「もう少しだから、みんな頑張ろう!」
こんなセリフが柄にもなく出てしまう程動き回っていた。もうそろそろ、お昼の時間も終わる。そこからは、お客さんの流れも緩やかになるだろう。なってくれ。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁぁぁ」
ゾンビの様な鳴き声が聞こえてくる。発してるのは俺と同じ雑用班のタクだ。
「やっと捌けたな…」
「あぁ、何とか…なったな」
そこは戦場の跡の様に死屍累々とまでは言わないが、そこそこ見られたもんじゃない格好の人々が何人もいた。
流石に疲れたのか委員長も立花もそこまで元気が無いようで、ぐったりしながら飲み物なんかを飲んでのんびり休憩してる。
「最初思い付いた時はこれだ!って思ったんだけど…いや、間違っては無かったが流石にここまでとは…」
クラスメイト達を見ると俺の話しに乗った事を若干後悔してるような目線が、ちらほらと刺さる。お前らだって大賛成だったじゃん!
「はーい、後少しだから、皆頑張りましょう」
「「「おーー…」」」
精魂尽き果てつつある皆の精一杯の返事だった。こんなに覇気の無いおーって初めて聞いた。
近くで、ずっと面白そうに涼さんと綾さんが見てたんだが、粗方お客さんが引いた頃に近付いてくる。
「お疲れお疲れ!いやー大変そうだったな!」
「お疲れ様コウちゃん、頑張ってたね?」
二人から労いの言葉が掛かる。涼さんは明らかに労いのだけじゃ無さそうだけど。
「二人とも来て貰ったのに放置して、すみません」
「ん?別に勝手に来ただけだし、気にすんなよ!俺達はそろそろ帰るわ!」
「この後も頑張ってねコウちゃん」
二人とも粗方俺のあわてふためく様を見て満足したのか、帰るらしい。
「そーですか。今日は…ありがとう?ございました来てくれて」
一応お礼を言ったが考えたら、来てくれなんて言ってなかったわ。
「おう!来年は教えろよ!」
「それじゃあねコウちゃん」
二人が帰る背中を見つつ、誰が教えるかと、心の中で独りごちる。だってまた絶対面倒じゃん。
涼さん達が帰ってからは、お客さんもそこそこで、各自休憩もちょこちょこ取れる位の忙しさだった。とりあえず、屑とアホ面のクラスには勝っただろう。
「はーい終了でーす」
実行委員の人たちが終了を知らせに来た。皆一様に疲れてるみたいだが、顔は満足気だ。
「おつかれー!疲れたねコウ、動き回ってたの見てたよ」
「おう、お疲れ。立花達の活躍も凄かったぜ」
お互いの健闘を称え合いつつお互いを労う。そこには確かに青春が!
クラス皆で疲れただの、楽しかっただの、思い思いに感想を言い合っていたら、入り口に見覚えのある顔が。
「あ、あの……」
「なんだ?」
見覚えのある顔は屑とアホ面だった。ちなみに真面目吉田も一緒に来てる。
「この前は、本当にすまなかった。田中と立花には一応謝ったが本人達も謝りたいって事だから連れてきた」
真面目吉田が説明してくれてるが、二人は立花を怯える子犬の目で見てる。相当怖かったんだろう。
「この前は…すまん!今日クラスで色々作ってみて、大変なんだってのがすげー分かった。一生懸命作ったものを…あんな風にされたら怒って当然…だよな」
屑が怯えながらも謝罪を口にしてる。まあ、言ってることは今のところまともだな?
「俺達もふざけてあんな事するべきじゃなかったって…結局立花が言わなくてもアキナにはバレてバリ怒られた。……三発程殴られた」
お!彼女グッジョブ!
「それで……謝って許して貰えるかはわかんないけど、今日色々感じて、謝りたいって思ったんだ。本当にすまんかった」
屑とアホ面が頭を下げる。この前の渋々って感じでは無くしっかり頭を下げてる。
「うーん…まあ、あたしは別に良いけど…」
立花は許す方向の様だ。
「まあ…そこまで言うなら…」
「今日は頑張ってたみたいだしな」
クラスメイト達の中にも、何だかんだ許すような雰囲気が漂う。
「まあ、反省してるようだし、私は許すわよ」
委員長の発言で一気に許す方へ流れが動いた。
「本当か!?ありがとう!これからは、絶対あんな事はしないって誓う!」
屑は、感極まったのかクラスメイトに握手を求め始める。皆戸惑いながらも、まぁ許したんだし…って空気が漂ってる中で拒否は出来ないみたいで、一応握手に応じてる。
「っ!た、田中…すまなかった!」
俺の前に屑が立つ。握手を求めようとして、俺の顔を見て、はっとしたのか、しっかり目を合わせて謝ってくる。
「お前が一番怒ってたよな、ごめんな。俺馬鹿だから、引くに引けなくてよ…本当悪かった…」
まあ…ここまで言うなら…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます