第93話
「うるせえ!ばーか!!許さねえよ!俺は空気には流されない!から揚げにこれから一生負い目を感じて生きろ!」
明らかに許される雰囲気だったのに、いきなり拒否されてポカンとしてる屑。何で周りか許したら許さなきゃいけないんだよ。これは、俺の怒りであって、クラスメイトが許しても、関係無い。
「それと!後ろのアホ面!お前も喋れよ!置物かよ!」
大体あいつは何しに来たんだよ?謝るのも屑任せで後ろでペコペコしてるだけだぞ?
「え、あ、その…」
しどろもどろのアホ面が、目を泳がせて屑や真面目吉田に助けを求める様な視線を送ってるが、二人とも俺の発言に面食らってるのか、ポカンも固まってる。
「…そうだよな?別に今日クレープ屋頑張ったからって関係無いよな?」
「なんか流れで許しそうになったけど、そんな簡単に許しても良いんか?」
よし、皆も目を覚まし始めたな。大体謝ったからってすぐ許したら絶対またやる。今度は何か言い訳添えてな!
「はぁ…まあしゃーなしだな」
真面目吉田は諦めたのか二人の肩に手を置いて慰めてる。
「もう、田中くん?子供じゃないんだから…」
見かねた委員長が仲裁に入ろうとしているが
「子供ですら、やらないような事をしたのは何処のどいつだと思ってるんだ?それをちょっと文化祭やっただけで、許すのか?俺は違うと思う。謝罪とは、言葉ではなくその後の態度と行動で示すものだろ?」
結局、いくら謝ったって行動が伴わないと、意味がないと俺は思う。許すのはそれからでも十分だろう。
「……確かにな、謝れば許されるなら、なにやっても良いよな」
「そう?私は許しても良いと思うけど」
「俺はまだムカついてるけど?この間の事を」
それぞれ意見があるようだが、とりあえずこれ以上話す事はない。
「とりあえず、今日は帰るわ。すまんな文化祭終わってすぐにこんな…雰囲気にさせて」
真面目吉田が二人を引っ張って帰っていく。屑とアホ面は、唖然としたまま連れていかれてる。本当に反省してるなら、これから態度で示せよ。
「はあ…すまんな皆、変な空気にして。でも、俺は簡単には許せなかったんだ、から揚げに申し訳無くてよ…」
から揚げは声を挙げられないだろ?だから代わりに俺が声を挙げてやらなきゃいかんのだ!
「自分の為じゃ無くてから揚げの為かよ…本当お前らしいな」
タクが後ろから絡んでくる。いまいち褒められてるのか、貶されてるのかがわからん。
「因みに褒めてねえぞ?」
貶されてるらしい。
「まあいーじゃん?クラスの皆も意見別れてたんだし。人それぞれ簡単には許せない事だってあるでしょ?」
立花がフォローに回ってくれている。面倒臭い奴で申し訳ねぇ。
「……まあ、とりあえず皆改めてお疲れ様!これで終了です」
委員長の言葉に皆が、思い出す。そう言えばさっきまで文化祭やってたんだと。
「よし!お疲れ!皆頑張ったよな!」
こういう時の盛り上げ役はやっぱりタクだ。
「おう!途中地獄かと思ったけど!」
「ほんとだよぉーあーなんか思い出したら油臭い気がしてきた…」
「でも楽しかったかも意外と」
「それな!お客さんに何か売ってありがとうとか言われるの嬉しいかも」
各々感想を言い合いながら、雰囲気が柔らかくなるのを感じる。よかった、変な空気のままにならなくて。
ふと、タクの方を見るとこちらを向いてニヤリと笑っていた。俺も笑みを返して心の中で感謝を伝える。自分でも自分の事を頑固者だと思うが、性分は中々変えられない…
「改めてお疲れ!何だか変な感じになったけど、から揚げ屋さんは大成功だったね?」
「あぁ…なんかごめんな、面倒臭いって思っただろ、立花だって許す感じだったし」
立花からしたら、分かってるなら変に口挟むなって話だろうが、性分は中々変えられない…。
「んー?良いんじゃない?あたしもこう見えて結構流されやすいし…自分の意見持ってて、それをちゃんと周りに流されず言えるコウの方があたしは好きだよ?」
不意の好きだよに胸がドキリと跳ねる。立花は結構簡単に好きって言葉を使うから、毎回あたふたしてしまう。
でも、自分の気持ちを素直に表せるって事がどれだけ素晴らしいのか、俺は分かる。だって立花に好きだよって言われるだけで、俺がこんなにも幸せなんだから。
「…そっか、じゃあこれからも立花に好きでいて貰える様に……頑張る」
俺の言葉にどれ程の価値があるかわからんが、友達にでも好きでいて貰える様に頑張るって言われたら嬉しいよな?……大丈夫だよな。
「──っ!あっ…うん!頑張ってね!ん?"頑張ってね"は、おかしいかな?」
そう言うと足早に他のクラスメイトの方へ走っていった。失敗したかと思ったが、立花が寄っていったクラスメイトの方から
「なに?嬉しそうじゃん美咲」
って声が聞こえたから、少なくとも嫌がってはないだろう…恐らくは。
「お疲れーお前は相変わらずだな?コウ」
「あぁすまんなタク、フォローして貰って」
いつもと変わらず軽く声を掛けてくるタクにさっきの礼を言う。こいつにはこの頃助けて貰ってばかりだな。
「良いってことよ!昔から変わらずに、お前のそう言うところ格好いいって思ってたからな」
「そうか?自分で言うのも何だが面倒臭いぞ?」
「そりゃそうだろうな!」
二人でガハハと笑いあって後は文化祭の事をペチャクチャ話す。タクも俺と同じく雑用だったから相当動いたから疲れただろう。
俺は肉体的にはそこまで疲れてないけど、精神的に…主に涼さんと綾さんのおかげでどっと疲れた。
「それじゃあ打ち上げ行きますかー!」
一通り片付けも終わりクラス皆で打ち上げへと繰り出す。そう言えばこう言う行事の時は特に張り切る森中が静かだな?俺は不思議になってキョロキョロと森中を探す。
勿論同じクラスだから、すぐに見付かるんだが、随分と険しい表情である人物を見ている。
「おーいコウ!一緒に行こー!」
立花が俺に声を掛けて寄ってくる。森中が立花を見る目線がそのまま俺の方へ流れてきて目線が交差する。
一瞬驚いた様な顔をしてすぐに目線を反らす森中。心の中で、はてなが浮かぶが
「もう!先に行っちゃうんだもん!」
立花の突撃により!思考が中断される。
この時に、あの目線の意味をしっかり考えて行動してたら、あんなに面倒な事にはならなかったんだろうか?今更考えても意味は無いんだろうが…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます