第31話

 さて、俺も帰るか。

 教室へ戻る。


 ガラガラガラッ


「あれ?タク、待っててくれたのか」


 教室には1人ポツンとタクが居た。


「おー…おかえりコウ。……で、どうだった?」


 タグが恐る恐る聞いてくる。


「うーん何と言うか…説明は出来ないけど、もう大丈夫だ」


 そう告げるとタクはホッとした表情で


「はぁぁぁぁー……そうか、良かったわ!」


 こんな説明で大丈夫だったんだろうか。


「自分で言っといてなんだが、こんな説明で納得したのか?」


 頭に?を浮かべながら返事をするタク。


「へ?嘘じゃないんだろ?」


「そりゃ嘘じゃないけど、何も説明しないで納得したのかと思ってな」


「そりゃあ気になることは沢山有るけどよ!一先ずコウが大丈夫って言うなら大丈夫だろ。良かった良かった。最悪これから約二年間コウと二人だけで過ごす学校生活になるかと思ったぜ!」


 そんな覚悟してたのかよお前。


「それに、立花に睨まれたら校内で彼女も出来ないだろうしな…危なかった!」


 なに言ってるんだ?こいつは。


「いや、お前は立花に何かされなくても彼女なんて出来ないだろ」


「はぁ?ぶぁっか言え!……なんとか出来るだろ。多分…」



「おっおう、そうだな。出来る出来る」


 すまん…タク。


「まあ良いや、待ってるの暇だったしなぁ途中まで一緒に帰ろうぜー」



「おう、ありがとな、タク」


 素直な気持ちだ、これは。


「なになに、良いってことよ!おっしゃー何か帰り買い食いしよーぜー」


 そう言いながら教室を出ていくタク。

 本当にありがとう。





 そんな帰り道。


「止めてください!離して!」


「あ?何か叫んでね?」


 確かにあまり良い雰囲気では無さそうな叫び声だ。


「あぁ、俺も聞こえた。走るぞタク」


「おし、急げ!」


 急いで駆け付けると男三人に女性が絡まれてる様だ。


「おいおい、いてーじゃん!今ので骨折れたかもなぁ。慰謝料の変わりに遊んで貰っちゃおうかな!女子高生と遊べるなら良いよな」


 あーこれはヤバそうだ。

 立花からあんな話を聞いた後だから余計に腹が立つ。


「タク、人呼んで来てくれ。俺は止めてくる」


「コウ、気を付けろよ。すぐ呼んでくるからな」


 タクはそう告げる来た道を走って戻っていった。

 俺も急いで女性の元に走り出す。


 段々近づいて行くと、どうもうちの高校の制服のようだ。


「で、どうしてくれんの?おねーさん。一緒に来るなら手荒なことはしねーけど?」


 気持ち悪く笑いながら男三人で女性に詰め寄っている。

 女性は俯いて表情は見えないが、小刻みに震えている。


「はいはい、そこまで」


 女性と男達の間に割って入る。


「あ゛?何だクソガキ。邪魔、どけ」


 おー!精一杯怖い顔して凄んでくる。

 練習中の涼さんの顔の方が百倍怖い。


「あの、危ないので…私は大丈夫なので…」


 震えながら俺の身を案じてくれてるみたいだ。


「ほら、ガキ。おねーさんがこう言ってんだからどっか行けよ!」


 はぁ、俺モブ顔だから弱そうに見えるんかな…ちょっとショック。


「いやいや、危ないのは貴女の方でしょう。何とか精一杯やりますから、逃げて下さい」


 この女性が逃げられれば俺達の勝ちだろ。

 何も戦う必要は無いしな。


「おい、クソガキ。逃げられると思ってんのか?良い所見せたかったんだろうがよ!首突っ込んだ事、後悔しとけ!」


 うわー!ドラマの悪役のセリフみたいだな!

 リアルでこんなこと言うんだぁ。


 相手が殴り掛かって来そうだったので先に手首を力を入れて握る。


「はいはい、止めましょうね」


 捕まれたのに驚いたのか目を見開く男。

 そして、徐々に手首が痛い事に気が付いたのだろう、顔が歪んでいく。


「いっ、いってえ!離せガキコラ!いて!や、やめろ!」


 うはーだっさー!

 他の二人は様子を伺ってるだけで手は出して来ないようだ。


「こっちです!警察の人!女性が襲われそうです!!」


 タクの声だ。警察を呼んできてくれたらしい。それにしても速いな。


「やべえ!今度捕まったら俺やべえんだよ!あーやべえ!」


 後ろの取り巻きの一人がやべえ!やべえ!と叫んでる。

 やべえって何回言うんだよ!やべえ!


「いたっ!痛いっつてんだろ!もういいから離せよ!」


 どうやら諦める様だ。

 女性に聞いてみるか。


「どうします?こう言ってますけど、警察に突き出しますか?」


 本人に選ばせよう。


「い、いえ。私はもう良いです…」


 女性は、もう良いようだ。

 じゃあ良いか。


「ほら、もう行けよ」


 手を離してやると手首を擦りながら一目散に逃げていく。


「くそ!覚えてろよ!クソガキ!」


「すげえ、捨て台詞までかましていったよ…今時でも居るんだな…」


 感心しすぎて声に出てたらしく、女性はポカンとした表情からクスクス笑い始めた。


「あ、あの、助けて貰ったのに…すみません……」


 何がツボに入ったか知らないがお腹を押さえて笑ってる。

 てかよく見るとすげー美人のお姉さんだな。


 うちの学校の三年にこんな人居たっけ…?

 そんな事を考えてるとタクがこっちまで走ってくるのが見えた。


「すまんな、タク。逃げられたわ。警察の人には謝っとこう」


「あぁ警察なんて、こんな短時間でこねーよ。ブラフだブラフ」


 そうか、通報したとしても、来るには速すぎるか。


「あ、あの!ありがとうございました!ちょっと急いでまして…必ずお礼はしますので!失礼します」


 そう言いながら足早に去っていこうとしている。


「別にお礼なんていらないですよ。気にしないで下さーい」


 お礼が欲しくてやった訳じゃないしな。

 それに世にも珍しい三下ムーブの人間にも会えたしな!覚えてろよー!だってさ!やべえ!


「いえ~~!必ず~~!」


 俺の声が聞こえたのか大声で返事をしてくれる美人のお姉さん。

 1学年上には見えないなぁ。


「あの子も大変だなぁ。美人だから色々苦労してるんだろうな」


「お?お前あの人知ってんの?」


 タクは知ってるのか。


「は?お前知らないの?1年にめちゃくちゃ美人の子が居るってすげー有名じゃねぇか」


 え?1年?


「あの人3年じゃないの?凄い大人っぽくないか……?」


 何なら高校生にも見えないと思ってた。

 すげー敬語で話してたし俺…失礼だったかも…


「確かに制服着てなかったら、わっかんねえよな。大学生って言われてもわかんねーもん」


「だよな……?はぁびっくりしたわ、びっくりしたら腹減ったな。何か食いにいこーぜ!タク」


「おうおう!行くかー!」


 その後二人でコンビニで買い食いして帰った。やべえ!!


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