第65話
「涼様ーーー!!頑張ってぇぇぇぇぇ!!」
滅茶苦茶デカい声援が聞こえたと思ったら、立花でした。目をハートにしながらすっげー応援してる。横のタクと委員長がドン引きしてますけど…。
いやいや!そんな事よりシュラウスの観察だ!!相変わらずシュラウスのタックルのキレは凄い。涼さんも反射神経だけで何とかギリギリ避けてる感じだ。
でも、涼さんのスタミナだって無限じゃない。勿論その辺の選手に比べたら相当多いだろうが、この集中した状態で避け続けるのは流石に不可能だろう。いつか捕まってしまう。
「くっ!!」
またタックルが来る。涼さんも何とか片足だけ避けられたが、片足を掴まれる。
「涼さん!膝!!」
思わず声が出た。タックルに膝を合わせる練習は涼さんと死ぬ程やった。ワンツーを囮に下に潜り込むって感じで。
片足の状態でシュラウスに涼さんの膝が入る。駄目だ、片足だから浅い。
しかし、これでシュラウスも容易にタックルには来れないと思う。
「良いぞ鎌田!!組み着かれる前に打ち返せ!!」
そんな激が飛ぶ、しかしシュラウスはさっきの膝を気にせずに、またタックルを綺麗に決めてくる。
俺の頭には、はてなが浮かぶ。いくらシュラウスでも涼さん相手にあんなに容易にタックル決められるものなのか?
「くっっそっ!!」
ほら、まただ。タイミングを計られたように……計られてるのか?もしかして、俺達も分からなかったクセか何かを研究して合わせてるのか?
「あの…会長…!」
たまらず会長に声をかける。
「あぁ、こりゃ相当研究されてんな。タイミングもばっちりだ、しかし…打つ手が…」
やはり会長も気がついてる。でも、シュラウスだって一朝一夕でやってきた訳じゃない。今日の試合が始まってやけに足を見てるとは思ったが、そのタイミングを計るためか…。
待てよ?クセは分からないけど、足を見てたなら誘導出来るんじゃ?でも俺の考えなんて意味あるのか…?
カーン!!
「ストップ!!」
そんな事を考えてるうちに1ラウンド目が終了した。肩を揺らしながらコーナーに涼さんが帰ってくる。
「はぁぁぁぁぁぁっ!!つえーわシュラウス!蹴りに合わせて綺麗にタックルしてくるし、多分何かしらクセでも見付けられたっぽいな」
疲れて劣勢な筈なのにすごく楽しそうな涼さん。やっぱり格闘技が好きなんだろうな。
「おう、まあ休め。今のままだと、じり貧だ。蹴りを少なくしてパンチで攻めてく位しかねーけどよ、それやるともっと劣勢になる気がすんだよなぁ」
会長も悩んでる…言ってみるか?でも本当にこれは涼さんの為になるのか?俺のせいで負けるんじゃ…。
「何だコウ?言いたいことがあるなら言っとけ。後悔すんぞ」
そうだ、あの時何で言わなかったんだ!って後悔何かしたくないだろ、俺!!
「あの、俺シュラウスの試合のビデオ見てて何時も体全体を見てるなって印象だったんですけど、今日に限って涼さんの足元ばっかり見てるなって思ったんですよ」
「あー確かに何か下見てんなとは思ったかも」
涼さんもやっぱり視線を感じてたのか?それなら確定かも?
「それで何かしらクセを盗まれてるのは、確定してるんでクセは足元なのかなって思ってんですよ、それと多分ミドルに合わせてる事が多いと思います」
「どうだ?鎌田」
「確かにミドルに合わせられてるかもしれないです。態勢が崩れやすいのも、それのせいかも」
「おし!それじゃあミドル打つ感じで膝いれてこい、出来んだろ?」
「勿論出来ますとも!コウ!これで勝てたら今日はお前のおかげで勝てたって事だからな!だから自信持てよ!そろそろ!!」
「涼さんまだ勝ったって決まったわけじゃ…それに本当にミドルにクセなんてあるか分かんないですし…」
「セコンドアウト!セコンドアウト!」
セコンドアウトのアナウンスだ。これで涼さんへのアドバイスは出来なくなる。本当に大丈夫なんかな!?
そう思いながら涼さんの後ろ姿を見詰めてると涼さんが振り返って……
「任せとけ、勝つから見てろ」
拳を俺の方へ向けてそんなセリフを残す。
あー…やっぱカッコいいな涼さん。
「ラウンドツー!ファイッ!!」
カーン!!
涼さんとシュラウスがリングの中央に向かっていく。俺はハラハラしながらそれを見詰めることしか出来ない。
涼さんもシュラウスもさっきと変わらず気負い無く相手に向かい合ってる。
だけど、勝負は一瞬だった。涼さんがミドルを出そうと足を踏ん張った瞬間にシュラウスがタックルを仕掛けてくる。
涼さんはミドルの軌道を無理矢理シュラウスの方へ向けて膝を合わせる。
パァッッッッン!!
何かが破裂するような音がした。涼さんの膝がシュラウスにクリーンヒットしてる。それでもシュラウスは涼さんの足を離さない。
これじゃ決まらないかと、涼さんが追撃を入れようとした瞬間に……
「ストッーーープ!!」
涼さんの勝利だ。
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