第102話
「そっか。鈍感な俺でもなんとなくは、わかってたよ」
やっぱり立花を陥れようとしてたのか。何でかなぁ…素直に想いを伝えるだけじゃ駄目なのか?相手の好きな人を貶める事を嬉しがる奴が居るのかよ?
「さ、最初は!二人で楽しそうに喋ってるのをみ、見て!諦めようって!先輩に幸せになって欲しいって!」
何処で見られてたのか、わからないが立花と二人っきりの時を見られてたんだろう。
「でも!急に色々あって…もしかしたら先輩も立花さんの事を…少しでも私もチャンスが欲しくて…!だってズルいですよ…立花さんが先に出会ったから諦めるなんて、私だって!もっと早く先輩に会いたかったのに!先に会ってれば絶対、絶対に!好きになって貰えたのに!!」
泣きながらも、多分正直な気持ちを喋ってるんだろう。ただなぁ…。
「静原さん、別にね先とか後とか関係無いと俺は思ってる。何時会ってても俺は立花を知ったら立花を好きになってたよ。もしかしたら会うのがおじいちゃんおばあちゃんになってたとしても。俺は立花を好きになってるよ」
だって、こんな気持ちこの先無いって思うから。今だけの感情かもしれないけど、それが何だって言うんだよ。それが青春だろ?
「そんなの……ズルいですよ……」
小さく言葉を吐く静原さんをじっと見詰める。ふと、今立花に好きな人が居て諦めなきゃいけなくなったらと考える。
俺は…諦められるのか?多分ずっと諦めきれない気がする。もし相手が王子だったとしても、ずっと立花の事を思ってるだろう。
相手の幸せを想えば手出しは出来ないし、幸せになるなら俺が相手じゃなくてもってのは分かるけど、そんなの…俺の手で幸せにしたいだろ。
そう思うと少しは静原さんの気持ちも分かるけどいくらなんでも…。
「でも、流石に森中を操って担任にけしかけて、立花を陥れるのはやり過ぎだよ静原さん。これは全員に報告しない訳にはいかないし、俺も黙ってるつもりはない」
そう、やり過ぎたんだよ。ここまで騒動が大きくなってるなら、いずれ真相が分かるだろう。もし他の誰かに暴かれてしまう位なら、静原さん自ら名乗り出た方が絶対に良いはずだ。
覚悟を決めて静原さんを見る。静原さんは納得してくれるだろうか?それとも自分ではないと最後までしらを切るのか?意を決して静原さんを見ると
「え?あ、操って?」
キョトンとしてた。あれ?俺の思ってた反応と違うけど?これも演技か?しかし…。
「静原さん、もうわかってるんだ。素直になってくれないか?俺もあんまり言い争いはしたくないんだ」
俺も虚をつかれたが冷静に話し合う姿勢が大事だろう。少しでも静原さんの罪が軽くなるように。
「あ、あの?先輩?ど、どうして私が森中先輩を操るんですか?…勿論森中先輩とは色々話しましたけど…」
やはりまだ認めてはくれないか…それなら俺の考えを話そう。
「そっか、やっぱりまだ…わかったよ静原さん色々整理して話そう」
俺は今まで見たことと、俺の考えを静原さんに伝える──
「って事だね。森中は成績は良いけど馬鹿だから。俺はあんなに綺麗に絵は書けないと思うんだ」
一通り俺の考えを話したが、まだポカンとしてる静原さん。手強いな。
「あ、あの?先輩の中での私ってそんな性悪に映ってるんですか?」
性悪?…そこまでは言わないが取れる手段は躊躇無く取るんだろう。
「そこまでは思ってないが…」
「あの、とりあえず私の話も聞いて貰えますか?」
あれー?何だか俺が諭されてないか?雲行きが怪しいぞ?
「っと、言う感じです。一応整合性は取れてると思いますけど…ただ結構前の話もあるんで全てがきっちり合ってるかは…自信無いですけど」
ふむ、静原さんの話を説明するとこうだ。
静原さんと森中は生徒会で書記と会計だそうで、会計の静原さんがある部活の部費が合わない事に端を発したらしい。
最初はただ単に数え間違いかな?とも思われたがそう言うことが何度も同じ部活であったらしい。その事を偶然居合わせた森中に相談したところ、一緒調査する事になったそうだ。
正義感の塊みたいな森中ならそうなるだろうな。そしてその部活の顧問がうちの担任、つまりくそ教師だったと。森中と静原さんは直接くそ教師に話に行ったらしい。
そうするとくそ教師はあっさり白状して、お金が足りない時に、たまに拝借してたのを認めたらしい。
しかし今は全額返してるし、どうか学校には黙ってくれと懇願してきて、自分に出来ることならなんでもすると言い始めたそうだ。
そこで森中がうちのクラスの問題。つまり立花をどうにかしてくれと、イジメがあるんだから罰が必要だろうと。
担任は立花を罰する事を最初は渋っていたが、自分の職を失う危機であることがわかっているからこそ、話に乗ってきたそうだ。
そこからは森中と担任が話し合って立花の悪行?を挙げていったらしい。そして近々に立花が屑とアホ面を脅した事を契機に作戦が発動したそうだ。
「本当は私止めなきゃいけなかったんです…でも先輩の事が諦めきれなくて…本当にごめんなさい…」
本当に申し訳なさそうに謝ってる静原さんを目の前に俺は今一度問う。
「しかし、森中と会ったこともないなんて、何で嘘ついたの?」
別にやましい事が無いなら素直に知り合いだって言うよな?
「えっと…それは…だ、だって!好きな人に他の男と会ってるのか?って…仲良いのか?って聞かれたら…だ、誰だって隠そうとしますよ!」
顔を赤らめながらそう告白する静原さん。確かにそうかも。女の子なら尚更嫌か?
「そ、そっか…でも、問い詰められて凄い泣いてたし、凄くヤバイことやったのかなって…」
語尾が小さくなる俺。これってもしかして?
「そ、それは申し訳無い事をしたって立花さんには本当に思ってましたし、先輩が軽蔑するなんて言うから…好きな人にそんな事言われたら誰だって…」
先程のやり取りを思い出したのか、また少し涙目になる静原さん。あれ?粗方疑問は解消されてない?
「それで…先輩。信じて貰えましたか?」
不安気に聞いてくる静原さんへ俺は──
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